東京IPOトップインタビュー:(株)オキサイド(6521・東マザ)

株式会社オキサイド(2021年4月5日上場 /東証マザーズ 6521)

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株式会社オキサイドは、世界でも類をみない優れた単結晶育成技術を有する企業で、半導体の検査装置や癌の早期診断装置に使われる光学単結晶のトップランナーとして知られる。宝飾産業が盛んで単結晶の一大産地である山梨県に拠点を構え、結晶とレーザーで「光の時代」を牽引する。同社代表取締役社長の古川保典さんは、学生時代に結晶をつくる装置を自作して以来、結晶による光技術の実用化に一意専心に取り組んできた。高度かつニッチな領域であるため不可能と考えられてきた技術の事業化を実現し、大手企業が事業化から撤退した技術も継承しM&Aで企業価値向上を推進する。ものづくりを知る経営者だからこそ、人材と技術への投資の重要度を理解し、技術者ごと研究開発事業を自社に取り込む。研究者から経営者への転身など、数々の挑戦をものともしない古川保典さんに話を伺った。


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↑代表取締役社長 古川 保典 氏

 

絶滅危惧種は蘇る。不可能を可能に変える研究者が描く「光の時代」
オキサイドの光学事業は、製品の用途から「光計測・新領域事業」、「半導体事業」、「ヘルスケア事業」の3つの柱がある。中でも「半導体事業」は、半導体検査装置向けの結晶と紫外線レーザーを販売し、結晶は世界シェア95%を占め、レーザーは累積的に増加する定期的なメンテナンスの需要を見込む。急増する半導体需要が本事業の拡大を加速している。「ヘルスケア事業」においては、がん診断装置の全身PET、乳房専用PET等に採用されている。さらにPET検査はアルツハイマー型認知症と関連がある脳内アミロイドβの蓄積が精密に検査できることから、治療薬の承認に伴いアルツハイマー型認知症診断にも適用が広がる可能性が期待されている。「半導体事業」、「ヘルスケア事業」が「光計測・新領域事業」の開発成果により事業の柱に育ったように、次なる柱を目指して、約15の研究開発テーマに力を注ぐ。

単結晶は、光学的に特異な性質を持つものがあり、かつては多くの企業で研究されていた。現在でも単結晶の開発に従事していた研究者を古川さんは「絶滅危惧種」となぞらえる。大手家電メーカーも先行してその基礎研究に取り組んでいたが、実用化に多くの時間を要することから、独立採算制や短期的な経済合理性を優先すれば、腰を据えて将来確立する技術を育てることは難しい。かつて古川さんが結晶の研究者として在籍していた大手メーカーでも、それは変わらず「風当たりはきつかった」という。後に、古川さんは国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)に転じ、高品質な光学単結晶の製造が可能な画期的な技術を生み出した。その技術を実用化するため、ライセンスして立ち上げたのがオキサイドだ。

起業してからもチャレンジは続いた。5千万円の資本金も半年ほどで底をつき、社運をかけたブルーレイの青色光源開発では、波長変換結晶を使った青色レーザーが、後発の青色LDに先を越され、結晶の売り先を失い会社倒産の危機に見舞われた。その矢先に、新たな結晶開発委託の話が舞い込んだ。50年前にIBMが発明した結晶で、NTTが長年かけても小指の先ほどの大きさしか製造できないような高度な結晶を、手のひらサイズで製造するという難題だった。さすがに古川さんも無理だと思う瞬間はあったものの、人生の半分以上を結晶の技術と向き合って生きてきたスペシャリストとして課題と解決手段を考え抜いた。4〜5年かけて製品化を成功させた。「パラメーターを変えると他に影響が及ぶという終わりのないパズルを解くような世界でした」と古川さんは振り返る。

事業単位のM&Aで小回り効いた技術力強化
「21世紀は光の時代」と古川さん。同社は最先端技術の開発とM&Aを得意とし、創業から2021年までに10件以上、新たな技術を導入している。ソニーや日立化成などの大手のほか、米国スタンフォード大学発ベンチャーからも技術を買収してきた。2021年4月の上場を機に、調達した資金を活かして技術のM&Aを加速させるという。上場したことで、古川さんの人的ネットワークに加え、証券会社や銀行のネットワークも活用できる。

米国では結晶やレーザーを扱う光関連企業のM&Aが活発に行われており、それに伴って市場規模が拡大し存在感が高まっていることから、「日本にもその波は必ず来る。オキサイドがその中核を担いたい」と古川さんは力を込める。

実用化に向けた「研究」と「経営」。古川さんは経営の道を選んだ。当時は研究者として諦めのような葛藤もあったが、事業化することで社会に貢献できるインパクトを目の当たりにしてからは、結晶の光技術の発展と企業価値向上に邁進する古川さんだ。


個人投資家へのメッセージ
「オキサイドは技術力も事業展開もユニークな会社です。地方発ベンチャーといえど、国内から優秀な技術者が集まり、常に次の時代を見据えた研究開発に取り組んでいます。そして、企業価値を上げることが私たちの使命と考えています。ボラティリティが比較的高く、デイトレーダーの方にも、長い目でお付き合いくださる投資家の皆様にも、末長く見守っていただける銘柄だと思います。


編集後記
投資家と対話ができるよう、上場前には株主目線で様々な会社の株を買って勉強した古川さん。時に日常から解き放たれる時間を求めて渓流釣りにいそしむことも。起業前から資本政策に苦労をしたこともあって、会社を潰さないために数百冊もの経営本を読み倒したそうです。一番好きな本は、デール・カーネギーの「人を動かす」です。会社が小さいうちは、社長が全部やらなければならず、そうなると自分がやれる範囲のことしか成し遂げられないという限界があります。どうすれば人が協力する気持ちになってくれるのかを、本がぼろぼろになるまで読み尽くして学んだと言います。古川さんがマネージャーになる社員に「人を動かす」を贈るのは、挑戦へのエールでもありそうです。

 

(掲載日 2021年8月3日)

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