東京IPOトップインタビュー:(株)Geolocation Technology(4018・福Q)

株式会社Geolocation Technology(2021年9月13日上場 /福証Q-Board 4018)

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株式会社Geolocation Technologyは、IPアドレスの位置情報の技術開発で2000年に創業。創業からわずか10ヶ月で後にGoogleに吸収合併されたダブルクリックという当時インターネット広告の配信最大手を最初の顧客として獲得した。この後も脈々と事業の応用領域を増やし、全土に根を張り巡らせるように顧客を増やしている。今では、インターネット業界の主要プレイヤーの多くに採用され、様々なクラウドサービスにその技術が組み込まれている。中小企業においても、製造業から小売業まで利用が広がり、近年は、金融業界や自治体にも受け入れられている。「地域社会にとって価値のあるインターネットサービスを提供する」という企業理念のもと走り続ける同社代表取締役社長の山本敬介さんに話を伺った。


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↑代表取締役社長 山本 敬介 氏

インターネット社会に付加価値を添える縁の下の力持ち
同社の事業は、IPアドレスの位置情報技術としてサービス化された「IP Geolocation技術」がコアとなる。身近なところでは、インターネット広告がわかりやすい。インターネットにアクセスする場所、回線、天気等に応じてバナー広告を変えるといった各種ターゲティングで広く同社の技術が使われている。B2Bに関してもホームページ等にアクセスしてきた企業をIPアドレス情報に基づきリスト化でき、見込み顧客が把握できる。

映像や音楽等のデジタルコンテンツ業界においてはコンプライアンス面でも活用される。デジタルコンテンツ配信業者は国・地域ごとにコンテンツホルダーから配信許諾を得ている。「IP Geolocation技術」を使い、閲覧可能な国や地域からのアクセスかどうかを特定し、不正な閲覧を防ぐ。この他、金融業界ではオンラインバンキングやオンライン株取引の不正検知、サイバー犯罪捜査にも役立てられている。

また、IPv4アドレスは全世界で43億個しかない有限資源となっており、現在、新たなIPv4アドレスは発行されておらず、インターネットサービスプロバイダーや、通信業者等が設備増強をする際に必要となるIPアドレスを、使っていない事業者等から調達する必要がある。その需要と供給のマッチングも同社は手がける。

今後は、クラウドサービスの販売増を目指し、新たな機能も追加していく。また、付随するサービスとしてホームページ制作や同社の技術を活かしたインターネット広告運用のコンサルティング、各種ソフトウエアの受託開発等は顕著に需要が伸びている。クラウドサービスと付属サービスの両輪で事業成長を目指す。

解決できなかった3つの課題に共通する鍵が起業の足掛かりに
新しい時代が幕を開ければ、その時代のニーズが生まれる。それに対するソリューションは、時に、過去に培われた技術にヒントがある。まさに山本さんの起業がそれを物語る。

静岡で地元の高校を卒業した1992年、山本さんは陸上自衛隊に入隊した。基地通信隊に所属しネットワーク運用を担当する。その傍ら、趣味ではじめたインターネットに衝撃を受け、「同じネットワークでもこれからはインターネットだ」と、徐々に転職の思いを固めていく。入隊から4年後、地元のインターネットサービスプロバイダーに転職。そこで山本さんを起業へと導いた2つの出会いがあった。

1つが静岡県庁で、もう1つが静岡のFM放送局「K-mix」だ。当時、山本さんは静岡県庁のホームページ運用の仕事をしていた。ホームページへのアクセス数を県知事に報告していたある日、静岡県民によるアクセス数と、県外からのアクセスは、どこのページを閲覧しているのかをレポートするよう依頼を受けた。「K-mix」からはバナー広告の運用効果を上げるため、静岡県西部・中部・東部の3つの地域それぞれに異なるバナー広告を表示したいという相談が寄せられた。これらの要望に対する技術は、当時、存在しなかったため、実現できなかった。

「どうしてできないのか」と突き詰めていくと、インターネットアクセスの位置情報を特定できないからだ、ということに山本さんは気がついた。すぐに事業計画書にまとめ、所属するインターネットサービスプロバイダーに新事業を提案。当時の見積りで約6000万円の投資を見込むことから、事業化にはならなかった。諦めきれない山本さんは、考えあぐねた結果、起業を決意する。「大事なお客様からいただいたニーズに対するソリューションを提供できる一歩手前にいると思うと闘志が湧きました」と山本さんは振り返る。「実現しないと世の中のためにならない」と、資金調達にも奔走し、2000年2月に会社設立に漕ぎ着けた。

今でこそIPアドレスをベースにしたインターネット技術は社会に浸透し、当たり前の技術となっているが、インターネットが普及し始めた2000年には存在しなかった技術だ。資金調達の苦労はあったものの、インターネットアクセスの位置情報のデータベース構築はインターネットサービスプロバイダーに勤めていた経験から事業化のインパクトに手応えを感じていた。「あとはやるだけ」という段階での起業だったのだ。


地域社会にとって価値のあるインターネットサービスで地方創生を後押し
コロナ禍で地域経済が疲弊している。今後、各自治体が地元経済活性化のための支援策を打ち出してくることを見込み、同社では、地域を周遊することで集められるデジタルスタンプ「てくてくスタンプ」の利用を自治体に対して積極的に呼びかけていくという。

また、ここ2年でテレワークも浸透した。新しい働き方として地方への移住や定住も増えている。この流れをチャンスと捉える自治体では、移住や定住促進事業に予算をつけている。「移住しませんか?」というバナー広告を目にすることが都心部を中心に増えているのは、「IP Geolocation技術」により地域を絞った広告表示がされるからだ。

例えば東京から地方に移住すれば「東京に時々行ける」ことがインセンティブになり、そういう生活を楽しめる。静岡に住む山本さんは「静岡の三島は東京から1時間、食にも環境にも恵まれている。私の住む沼津市はテレワーク環境の全国ランキングで5位。」と静岡愛が溢れる。


個人投資家へのメッセージ
地域社会の活性化は極めて重要です。当社のサービスを使っていただくことで、その流れを後押しできればと願っております。静岡県から見ると九州・沖縄は距離的に遠い位置にあり、この度の福岡証券取引所Q-Boardへの上場を機に九州沖縄地域の活性化に役立てていただけるよう、九州沖縄での営業活動に今まで以上に積極的に取り組んでいきたいと思っています。創業から首都圏で培った実績をもとに、九州沖縄から全国の地域社会活性化に役立てていただけるような新しいサービス開発にも取り組んでまいります。中長期で長い目でご支援いただきますよう、よろしくお願いいたします。


 

編集後記
山本さんの座右の名は西郷隆盛が好んで使っていた言葉として知られる「敬天愛人」。敬介の敬が使われていることから子供の頃から興味を持っていたそうです。山本さんが自衛隊時代に所属していた武道チームが「敬天会」という名前で、上官からその由来が敬天愛人にあり、意味を教わった時に感銘を受けたと言います。経営でも自己の利益追求ではなく、社会のためになるように事業を営まないといけないと「敬天愛人」を広く捉え、座右の銘にしているとのこと。ユニークな経歴を持つ山本さんならではの、時代のニーズを社会の根っこに結びつける感性と揺るぎない努力で展開される事業から目が離せません。


(掲載日 2021年10月8日)

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