Vol.64「投資家に喜ばれるIPO」

2017年もはや10日が過ぎ、トランプ大統領就任まで残り20日となる中でNYダウが2万ドル目前まで上昇し、相変わらず上昇の勢いは止みません。日本株も日経平均が2万円台乗せを目前にしており、投資家の皆さんの期待は膨らみ続けています。ただ、Twiterによるトランプ発言でメキシコ進出計画のトヨタに横やりが入るなどから日本企業の活動にも影響が出始めており、日経平均は大台乗せを前にやや停滞気味です。一方でマザーズやJASDAQ、東証2部といった中小型株指数は順調に水準を切り上げており、昨年のIPO銘柄も内容を吟味されながら投資家の関心を集めつつあります。

IPO後の株価の変動はまちまちながら、その多くはマザーズ上場銘柄をはじめとして成長期待から市場平均を上回る評価がなされています。IPO銘柄への投資は、①公開価格での投資、②上場初値での投資、③上場後の株価変動の中での投資の3パターンが想定されますが、当然のことながら同じ投資対象でも投資成果はそれぞれに異なってきます。企業の内容がわからず評価が定まらない中での投資は多少、下落リスクを覚悟する必要があります。マザーズ上場企業の多くは初値からプレミアムがつくケースが多いので、その後の高値からしばらくすると調整に入ることが多いようです。上場後1年程度を経て評価が定まり、調整完了後に再度の上昇トレンドを描く銘柄もあります。

IPOをしたばかりの企業はメディアでの露出度が低く、認知度も低いため投資家の関心も限られています。その結果、上場直後の人気が長続きしないケースが多いようです。セクターによっては投資家の人気が薄く上場しても取引の対象とはならず、放置されたままで推移するケースもあります。IPO後の各企業のIR活動がないと株価が長期に低迷したり、上場時のプレミアムが剥がれていくケースも出て参ります。中には東証1部に直接上場した企業においても実力はあっても株価が投資家の理解を得られず不人気のまま推移するケースも出てきます。新聞やテレビ(地上波)などのメディアへの露出は限られており、主にはYouTubeなどで流されるストックボイスや上場前後のアナリスト向け説明会などですが、個人投資家が直接経営者の顔を見て話が聞ける機会はまだまだ少ないのが現状です。企業としてはIPO後、株高につながる様々な努力を重ねて少しでも評価を高める必要があります。例えば投資家が買い易くなるために株式分割を行い、売買単価を下げるという工夫や最小単元株保有の投資家に訴求する株主優待制度を導入してできるだけ小口でも多くの投資家に安定的に株を保有してもらうというようなことです。

中長期スタンスの投資家にとってIPO銘柄の長期保有が困難なのは業績の維持成長が不確実なためです。IPO前に公募増資に応募して公開価格で投資した投資家の多くは上場時に売却してしまいます。短期ではなく中長期スタンスで保有するにはIPO後の株価変動は余りに激しいのです。好需給からIPO時に株価が高くなり過ぎて、その後の株価が長期低迷する場合もありますが、それは業績の予期せぬ悪化によってもたらされることもあれば、IR不足で企業の認知度が低いことから生じてしまうこともあります。企業はそうしたIPO後の投資家や株主とのコミュニケーション不足を補うため、積極的にIRに取り組む姿勢が求められます。

2017年相場が始まって間もないこの時期ですが、東京IPOでは昨年に続き2016年のIPO企業の中から結果として株価上昇などで投資家に喜んでもらえた企業や投資家に理解を得られ評価を高めた企業の業績などを総合的に勘案しながら選定する作業を行っており、そうした企業にアワードを贈る予定です。今月下旬には本コラムでそうした企業を紹介させて頂けるものと思いますので宜しくお願いします。

2017年1月10日 東京IPOコラムニスト 松尾範久