東京IPOトップインタビュー:株式会社トランザス(東証マザーズ:6696)

PDF版のダウンロードはこちらから

株式会社トランザス(東証マザーズ:6696 業種:電気機器)

事業内容

  • 通信機能を備えたIoT端末や機器装置の製造販売、および、それを利用したシステム・サービスを提供。
  • ウェアラブルデバイスの国際戦略で事業成長を目指す。

6696pre

↑代表取締役社長CEO藤吉英彦

社長の素顔

1973年5月2日生まれ。岐阜県出身。

1993年、静岡大学工学部1年生だった20歳で起業を決断。独立可能という通信関連のアルバイトの経験を生かして起業し、業績も順調に推移したことから1995年に会社設立。静岡の通信業界の経営者らの間で「稼ぐ学生」として話題に。

子供の頃から自宅の電話の工事をこなすなど、通信技術の知識を生活の中で身につけてきたという、根っからの技術屋。学生時代の得意科目は物理だった。

自宅で植物を育てたり、ピアノやギター、ベースにドラムといった様々な楽器を演奏したりと趣味多彩な面も。好きな音楽のジャンルはヘビーメタルで、会社の忘年会では社員とバンド演奏を楽しむのが恒例。


ココに注目!!

  • ウェアラブルデバイスの国際戦略
  • パラサイト戦略
  • 自社製品に付加価値をつけて拡販する再販パートナー、VAR(Value Added Reseller:バリューアデットリセラー)との協業が順調

経営者歴が23年になる藤吉社長は、時代とともに進化する社会を取り巻くテクノロジーをずっと見てきた。そして、その進化の一歩先を見据えて着実に事業を成長させてきた。藤吉社長の経営者としての考え方や視点を垣間見るような話も伺えた。

——— 事業と強みを教えてください。

弊社は、通信機能を備えたIoT端末や機器装置の製造販売、それらを利用したシステム・サービスを提供しています。映像配信分野においては、ホテルや病院にVOD(ビデオオンデマンド)用のSTB(セットトップボックス)やソフトウェア、企業や官公庁などの法人が利用するテレビ会議、IP放送、複数地点をつなぐライブ配信のための機器装置やソフトウェアなどを提供しています。

販売業務支援では公共施設、娯楽施設、小売業、冠婚葬祭場にマルチパネルディスプレイやデジタルサイネージなどを提供し、作業支援分野においては、主に腕に装着するウェアラブルデバイスを工場などに向けて提供しています。ウェアラブルデバイスは、成長の柱の一つとして国内外の工場、飲食店や病院に展開することも視野に入れています。

弊社の強みは、3つあります。一つは、ソフトウェア開発だけではなく、端末開発やサービスまで一貫して提供する垂直統合型のビジネスであること、二つ目は、設計段階から製品開発を手がけ、部品レベルでのコスト削減を徹底した無駄のない製造委託を実施しているため低コストを実現、小ロット生産にも対応していること、三つ目は、開発を手がけたソフトウェアの知的財産を社内に蓄積しているため、ウェアラブルデバイスやデジタルサイネージなどの端末開発やシステム構築にソフトウェアや開発ノウハウを横展開できることも強みと考えております。

弊社では、SIer(システムインテグレーター)や商社、ソフトウェア開発業者をVAR(Value Added Reseller)と位置づけ、自社でデザインした端末やシステムを開発し、VARに対してそれらを提供しております。VARは、弊社製品やシステムに独自の価値を付加した上で再販するため、弊社の営業部隊を少数精鋭で維持しながらも拡販される仕組みを構築することができているのです。こうした事業からの収入は、ソフトウェアや端末の開発・販売、月額サービスで構成されます。

——— 今後の展望を聞かせてください。 

これからの重点施策としては、工場や倉庫などの法人向けウェアラブルデバイスの国際展開と、世界に販売網を持つ他社の製品ラインアップやシステムに自社製品を組み込んでいただくという、いわば「パラサイト戦略」です。

ウェアラブルデバイスは、工場でのオペレーションの一元管理や倉庫の入出荷管理などで腕に付けられるミニパソコンとして利用できるほか、VARのオペレーションシステムの一部にVARの企業ブランド製品として組み込みが可能な点が評価され、多方面から引き合いをいただき、現在、大手企業様とも商談を進めております。

弊社製品に付加価値をつけて拡販を行う再販パートナーであるVAR(Value Added Reseller)との協業は順調で、今年1月にはアジアへの展開がスタートしました。

——— 大学1年生で起業して以来、経営者として23年勤めてこられました。座右の銘などはございますか?

「すべての物事は自然の摂理に従って起こる」という信条を持っています。植物は、根を張らなければ、幹は太くなりません。幹が太くならなければ、実る果実も全部落ちてしまう。葉に光が当たらなければ枯れてしまう。商売にも同じことが言えると思います。

我々がいくら背伸びをして、果実をたわわに実らせようとも、肝心の幹や大地を張る根がしっかり成長していなければ、実は持ちこたえられずに落ちてしまいます。植木鉢が小さければ植物は大きく育たないのと同じように、規模の小さい市場でいくら奮闘しても事業に成長はないわけです。

「ウェアラブルデバイスの国際展開」は、広大な植木鉢の中で勝負ができるがゆえの選択です。ポテンシャルという芽に、日の光をどのように当てたら大きくなるのか、栄養をどんなふうに与えていけばいいのかを考えて育てていきます。

——— 顧客と共存することで収益を伸ばすモデルはどのように着想したのでしょうか?

私は学生時分に起業していますので、いわゆる組織の一般的な常識感を持ち合わせていません。例えば、プロジェクトの予算を考えるときに「上から計算する」とか「下から計算する」という表現が使われます。「下から」というのは、例えば、アルバイトの時給やその生産性、業務量などプロジェクトを遂行するにあたって、実際にいくらの金額が必要になるのかを割り出し、どうすれば最もスリムな業態になるのかを考えます。

これとは逆に「上から」というのは、大手企業だと外注するといくらかかるかを見積もるところから始まります。その先で行われている作業に対する費用感や中間流通のマージンにかかるコスト見えなくなります。様々なプロセスで利益が何重にも上乗せされる構造を許すと、競争力が削がれてしまいます。

例えば、ある競合他社からクライアントを引き継ぐこともありました。いかにしてパイを奪い合うかではなく、純粋に物事のあるべき姿を見極めてきた結果、今の収益モデルにつながっているのだと考えています。

——— 個人投資家様へのメッセージをお願いします。

企業は生き物です。ビジネスは、そのポテンシャルを理屈で計算しようにも、理屈ではないところで動いたり進化したりすることがあります。今後、私たちが仕掛けていく様々な展開の中で、究極の選択をする場面が出てくるかもしれません。どうか、断片的な判断で会社の価値を計るのではなく、もっと深いところにある、理屈では計りきれない価値を見出して、見守っていただきたいと思っております。


(掲載日 2017年8月7日)