東京IPOレポート特別編:「ドローン視点で読み解く未来航路2020 Vol.1」

東京IPOレポート特別編:「ドローン視点で読み解く未来航路2020 Vol.1」

未来学者 小林一郎氏に聞く

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わが国のドローンビジネスの市場規模は2015年度の104億円から2020年には1,138億円に達すると推定されている(「世界のドローンビジネス調査報告書2017」インプレス総合研究所)。すでに農薬散布や空撮などごく一部の分野で市場が確立しているものの、防犯、建造物検査、測量などの分野ではこれからだ。

ドローンを取り巻く空の規制が進む一方で、数多くの企業や研究機関が事業化を見据えて研究開発にしのぎを削る。ドローンが一気に注目を集めたのは、2010年1月の米家電見本市「CES」でフランスのパロット社が「ARドローン」を発表したことがきっかけだ。2020年に向けてのドローンビジネスの展望を、一般社団法人 ドローン操縦士協会理事長であり未来学者の小林一郎氏が紐解く。


実用化に向けたドローン旋風

産業利活用に向け、ベンチャーから大手企業まで様々なプレイヤーが業界の垣根を超え、技術と創意工夫でしのぎを削るドローン産業。一時の盛り上がりは過ぎたかのように見えるが、農業や空撮を伴う建設などの分野では着実に応用が進む。また離島や山間部などではドローンを使った配送の実現が目指される。

実用化に向けた動きはさまざまだ。日本郵便は郵便局間で書類の受け渡しにドローンを使おうとしている。ローソンは慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)内で、宅配ロボットを使った無人配達サービスの実証実験を始める。またALSOKは、電源ケーブルをつけ、8時間の連続飛行を可能にする独自機種のドローンを開発した。地上から50〜70メートル上空から半径3キロ先までを監視するサービスを、東京オリンピックを控えた2019年に実用化する構えだ。2018年7月の西日本における豪雨災害では、東京海上日動火災保険や損害保険ジャパン日本興亜、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険など大手4社が広島県など被害の大きかった地域を中心にドローンを使った損害調査を実施した。

都道府県や市町村においても、ドローンを使った精密計測をするなど環境や資源の解析に役立てる動きは活発だ。千葉市は特区制度を利用して、ドローンを使った宅配サービスの実験を進める。

実用化に向けて技術の進歩を伝えるニュースを見ない日はないくらいだ。着実にドローンは社会の生活空間に入り込んできていることを感じさせる。

安全あっての産業利活用

多くの産業分野で実用化に向けて助走段階にあるドローンは、今後どのように世の中にインパクトを与えていくのか−−。未来学者であり、一般社団法人ドローン操縦士協会(Drone Pilot Association: 略称DPA=ディーパ)で理事長を務める小林一郎氏に話を聞いた。

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↑一般社団法人 ドローン操縦士協会理事長 小林 一郎 氏

 DPAは、国土交通省登録管理団体で、ドローン操縦のスクールを傘下にもち、ライセンス発行など資格認定事業を展開する。設立は2016年6月。同年10月には東京都江東区に世界最大級の屋内ドローン専用飛行場を開設した。都内の企業にとって利用しやすい立地であることから、しばしば話題にあがる。全国では33校を傘下に置く。

産業活用するには操縦士の育成は重要だ。インターネットで「ドローン」と検索すると、実にさまざまなドローンスクールの広告が目に入る。ドローンスクールを併設する自動車の教習所も最近では珍しくない。操縦スクールが乱立しているように見えるが「都市であれば空撮や3Dマッピング、地方では精密農業、農薬散布など、スクールによって習得できる技術に違いがある。目的意識をもって選んでほしい」と小林氏は話す。DPAの良さは、スクールによって習得技術や目的は異なっても、全校でコートの広さを含めて講習の基準が統一されている点があげられる。

また、国土交通省などから航空法やドローンに関する法規制が発表されたら、受講生に伝わるよう全校に通達が行く。定期的に各校の代表が集まり、危険な操縦事例などを共有しあい、あらゆる角度から安全を考える取り組みにも力を入れている。全校が講習で使っている機体は様々な機種の操縦に対応できるよう、ベーシックなモデルを採用しているという。小林氏は「安全に操縦する技術を身につけることが、産業利活用の大前提です」と強調する。

現在は国土交通省が認定した民間の組織がライセンスを発行しているが、「近い将来、国家ライセンスに切り替わる機運がある」と明かす。

IoTやAIがドローンの実用化を加速
超・生産性向上の時代へ

建築や土木業界では国土交通省が推進する「i-Construction」という生産性向上のための取り組みが定着している。ここで一翼を担うのがドローンだ。橋やトンネル、ダムなどの公共工事の現場で測量や点検を行う。人が担う仕事のみならず、危険だったり狭かったりなど、人では対処が難しい場所もドローンを活用できる。原子力発電所のセキュリティや安全点検などのような今は人が介在している作業がドローンに置き換わると、市場規模は2020年という近い将来でも15兆〜20兆円に上ると見る専門家もいる。

ITの進歩により、わずか数年のうちに業界のランドスケープが変わることも少なくない昨今。「モノがインターネットにつながる“IoT”(Internet of Things)時代から、あらゆるモノや人がどんな時でも繋がっているという“IoE”(Internet of Everything, Every Time and Everybody)時代への移行は2030年を待たずしてやってくるかもしれません」と小林氏は近未来を見据える。

小林氏が今、関心を持っているのは、AIやロボティクス、シンギュラリティ、ブロックチェーンなど、時代の潮流ともいえるキーワードがいかにドローンと連動していくかだ。「生産性を飛躍的に向上させる方向に向かっていることは間違いありません。融合することにより予期しなかった副産物もあるはず」と期待を寄せる。

また、近頃、存在感を増している“目視外飛行”にも注目する。この実現のためには、周囲の状況から機体自身が判断を下し適切に飛行する「自律自動運転」の技術開発が鍵だ。目視に変わるカメラやセンサー、判断の精度をあげるプログラムなど、安全な目視外飛行の実現のために超えなくてはならないハードルは多い。

「時代を拓くとともに新しい何かを一緒に築いていきませんか?」

ドローン操縦に関するライセンスを発行する機関であることから、ネットワークが広い。ベンチャーから大手、自治体や大学などから共同研究の話が毎日のように持ち込まれる。

「持ち込まれるだけではなく、積極的に提案を持ちかけたい」と話す小林氏。DPAの会員に「未来テック会員」という新たな枠を設けた。新規上場企業やベンチャー企業を対象に、30万円の年会費を初年度は無料とする。「空の安全を技術で守る」啓蒙活動にも繋げたいと言う。同会員になると会員や理事との交流会、潮見ドローン専用飛行場利用料やセミナーの割引といった特典が得られる。一方で「あらゆる産業でドローンの利活用は広がります」と、業界を絞らず、多くの企業の会員入りも歓迎する。ドローン利活用を具体的に検討していなくてもよいという。「時代を拓くとともに新しい何かを一緒に築いていきませんか」と呼びかける小林氏だ。


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(掲載日 2018年8月2日)

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