東京IPOトップインタビュー:(株)Mマート(4380・東マザ)

株式会社Mマート(2018年2月23日上場/東証マザーズ:4380)

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Mマート

2018年のIPOトップバッターとなったMマート。食材の売買をオンラインで取引するプラットフォームの草分けとして2000年に立ち上がった。日本の企業で9割を占める中小企業が使いやすいサービスとして利用登録する企業数は堅調な伸びを見せる。同社を起業した代表取締役社長の村橋孝嶺(こうれい)さんはシリアルアントレプレナーの最年長組と言っていいだろう。「ネットショップのプラットフォームの成長性の指標は店舗数ではない」とし、「量より質」で成長を牽引する。

株式会社Mマート

↑代表取締役社長 村橋 孝嶺(こうれい)

<社長の素顔>

 村橋さんが経営してきた数々の事業の中でも飲食業は50年と群を抜く。バーテンダーをしたこともあれば、お好み焼き屋などその時代の流行りの飲食店を数多く手がけてきた。そんな村橋さんが社訓に掲げるのは、「謙虚」「素直」「感謝」の3つ。「仕事をするのは人間。謙虚であり、素直であり、感謝する気持ちを忘れなければ人から好かれる。そこからビジネスチャンスは生まれる」という。これは村橋さんが若い頃からずっと心がけていることで、ビジネスをする人間にとって一番大事なことと強調する。血色の良い肌と10センチほど伸びた顎髭が印象的な村橋さんは、朝食にはステーキ、ラジオ体操や腕立て伏せなどの運動は毎朝欠かさない。


Mマートの受付から社長室に向かう途中、フロア全体を見渡せるオフィスを通る。全社員が「いらっしゃいませ!」と一斉に挨拶、姿が見えなくなるまでお辞儀の姿勢を崩さない。いわゆるネット系企業とは一味も二味も違うことに驚かされる。清々しいおもてなしに心なしか緊張を覚えながら社長室へ入り、代表取締役の村橋孝嶺さんに起業の経緯や同社の特徴を聞いた。

良いものをより安く買える秘訣は「質が量を呼ぶ」ルールにあった

同社は、インターネット上で業務用の食材卸売市場「Mマート」と、食品以外の総合卸売市場「Bnet」を展開する。店舗数は、それぞれ800〜900店、200〜300店が売り手として登録する。買い手となる飲食業界、宿泊業界、テイクアウトや配達などの中食業界では10万社以上が登録する。

ネットショップというと、出店者数が勝負どころと思われがちだ。ところが、Mマートは出店者数を増やすことに成長の軸足を置いていない。「質が量を呼ぶ」と言う村橋さん。セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長、CEOを歴任した鈴木敏文氏がPB商品を作る時にナショナルブランドよりも“安く”ではなく“高品質”路線を打ち出したことにも触れ「質が高ければ必ず量は集まります」と力説する。「量を求めるばかりに質が落ちれば事業はいずれ立ち行かなくなるものです。だから当社は質を求める」と続けた。

実は約40名の社員の中で、買い手企業を開拓する人員はいない。良い品をより安く買えることが買い手の信頼につながっているため、営業をかけなくても全国から毎年7千〜8千社の買い手が登録をする。それに応じて売り手も増えて良さそうだが、退店する企業もある。「売れない理由は値段が高いか、品質が悪いかに限られる」という村橋さんは、サイト内の新陳代謝を促している。そういう店舗が増えれば、買い手の信頼は得られない。質を保ち、買い手企業を増やすことで、売り手企業を活性化する。

同社が取り入れる仕組みはこうだ。自浄作用でマーケットの新陳代謝を促している。

「買い手企業が増えるのは、売り手が良いものを安く売っているからです」と村橋さん。だからといって、売り手に言葉通りにお願いしてもその通りにならないのが世の常。まずは、一般消費者もネットで買い物をすれば送られてくる評価アンケートを取り入れた。購入後に、店舗の対応や商品についての評価を促す。答えれば購入割引の特典が得られるため、かなりの買い手からアンケートが集まる。その結果は同社と店舗にフィードバックされ、評価点数はリアルタイムで、マーケットで公開する。企業間取引の場合、一回の取引額が大きいため点数が下がると、他社より見劣りしマーケット内での取引に影響が出る。評価が低ければ、次年度からの継続出店は難しくなる。そのため、自浄作用が働く。

もう一つの大きな特徴は、初年度の出店料は月間2万5000円とお手頃。翌年から1万円値上げする。値上がりに耐えられないのは、商品力や販売力が弱いという判断にもつながる。出店しやすい金額と、出店し続けるための体力のバランスを求めることで、買い手から支持されるお店だけを厳選する。村橋さんは「人間の取引売買というのは心理ですから、量さえあればいいというわけではない」と強調する。

ITバブル崩壊時代に飲食業からインターネット事業で起業

飲食業まっしぐらだった村橋さんがインターネット事業を興すことになったのは、18年前に遡る。飲食業で仕入れに困る状況に置かれた。食材を配達する運転手は営業ではないため、購入した品は運ぶが、仕入れ先が扱う商品は把握していない。情報が氾濫しているにも関わらず、欲しい商品をどこで仕入れられるのかがわからない時代でもあった。

「しのぎを削る飲食業界で、生き残って行くのは生易しいことでありません」と村橋さん。欲しい情報にアクセスできるような風通しのいい取引ができないだろうか、誰もが見たい時に見ることができ、納得して購入できるようなサービスを作らないといけないと起業を思い立った。時は2000年。インターネットの時代ゆえにインターネット上で作ることに決めた。パソコンを触ったこともなければインターネットを使ったこともないが、かなりの量の読書をしていたことから、技術的なトレンドには明るかった。早速、渋谷のIT企業にウェブ構築を依頼した。ところが、その会社はバブル崩壊のあおりを受けて倒産。やむなく見よう見まねで自力でウェブサイトを構築した。

「市場経済というのは人類の大変な発明品。しかしながら大きな欠陥がある。それは情報の非対称。例えば、ここで1kg千円で販売をしている品が200m先では1kg 800円で販売されている。2割も高いことを知らずに買う。これが情報の非対称です」と村橋さん。「インターネットは情報の対称化こそが本質」と心得て、買い手にとって必要な情報を包み隠さず掲載した。出店者の住所、電話番号、担当者名、メールアドレス、商品の価格、賞味期限、ありとあらゆる情報を掲載した。今でこそ「Mマート」も「Bnet」もインターネット上で売買取引が成立するが、当初はマーケットに“買い物カゴ”はなく、注文は電話かFAXでの対応だった。逆にそれが利用者に受け入れられ、商品を探しやすくなったことが画期的だと喜ばれた。インターネットに情報を入力することに不安を感じる買い手マインドもあり、安心感につながった。相手がいてこその商売。Mマートは、売り手と買い手の信頼関係を築きながら事業成長を目指す。

“買い手”と“売り手”と“商品”を大事にする基本方針でさらなる成長へ

取材の最後に個人投資家にお伝えしたいことを伺った。

「一番大事なことは企業を成長させること。目先のことに捉われず成長戦略を実行し、中期的な成長を実現させてまいります。こうすることが個人投資家様にとっての企業価値に繋がると考えております。リスクを犯すことなくある程度の高成長を継続できるのは、私どものストック商売の強みです。“買い手”と“売り手”と“商品”という3つの大きなストックを大事にして、質を上げ、扱う商品の幅を広げていきます。こうした基本方針で成長戦略を考えてまいります」と締めくくった。

(掲載日 2018年8月24日)

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