東京IPOレポート特別編:「ドローン視点で読み解く未来航路2020 Vol.3」

未来学者 小林一郎氏 x 高松コンストラクショングループ島田組 岩立二郎氏 対談

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株式会社島田組は1978年に設立された国内で埋蔵文化財発掘調査の先駆けとして知られる。長年の土木技術を生かし、発掘調査にとどまらず、遺物整理や史跡整備を通じて次世代に歴史をつなぎ、文化財を活かした街づくりに貢献する。埋蔵文化財とは、土地に埋蔵されている遺跡などをいい、全国に約46万カ所あるとされる。発掘調査は、毎年9千件にも及ぶ。埋蔵文化財は、破壊されると復元できないため、精密な発掘調査をしなければならない。同社はこの業界のエキスパートとして歴史の発見に一躍を担う。2年前からドローンを活用しているという島田組。代表取締役社長の岩立二郎氏と未来学者でドローン操縦士協会(DPA)理事長小林一郎氏の対談をお届けする。


史跡整備で街づくりに貢献したい−−。島田組の岩立社長が語るドローンの活用や狙いに対し、DPAの小林理事長が自治体や企業らとの共同開発を事例に挙げ、ドローン・データ解析の今に切り込んだ。今回の対談では、苦労話を交えながら「もしドローンが埋蔵文化財発掘調査に普及したら」(もしドロ)という未来予想図が描かれた。

空からの観光資源を創出、勝機を見込む

(小林)産業利活用はあらゆる業界で試験運用が進んでいます。中でも島田組の埋蔵文化財発掘調査の領域は、ドローンの活用で新たな可能性が飛躍的に広がると見ています。非常に興味深い。

(岩立)島田組は土木の技術を活かし、埋蔵文化財発掘調査を事業の柱にしています。社会に対しては、日本の歴史を軸に昔と今と未来をつなぐ役割を果たしていきたいと考えています。2年前からドローンを活用しておりますが、空撮による“観光資源”の開拓など、「ドローン×文化遺産」の面白さを、発掘調査をしている地元の行政の皆様と追究していきたいと考えています。

小林氏

(↑ドローン操縦士協会(DPA) 理事長 小林一郎氏)

(小林)「ドローン×文化遺産」とは具体的にどのようなことをなさっているのでしょうか。

(岩立)古墳などの遺跡は、観光で訪れても、横から眺めるばかりで、上空から全体を見渡せるのはパンフレットなどに載った写真のみです。そんな中、発掘調査の様子を上空から見ることができたら、その地域に住む人たちは、これから発掘される姿に想像をめぐらせワクワク感を覚えるのではないでしょうか。

岩立氏

(↑島田組 代表取締役社長 岩立二郎氏)

これまでに管轄の行政や文化財センターから許可をいただいた上で、いくつかの遺跡をドローンで空中動画撮影をしてきました。2016年には、当社が日本で初めて首里城を空撮しました。二千円札の図柄になった守礼門の真横で御細工所跡緊急発掘調査をした際に、現場だけではなく首里城上空から街並みを見渡した動画を撮影したんです。このほか、大阪にある推古天皇陵の南東200メートルに位置する、全長60メートルを超える国指定史跡の二子塚古墳では、空撮のほか、現地説明会で「かまぼこのような形をした石棺は日本ではここでしか見ることができません」といった調査員の説明に耳を傾ける見学者の様子などを撮影した映像もあります。これらは編集してYouTubeにアップしているので、どなたにもご覧いただけます。

(小林)2年前からこうした取り組みをされているとは先駆的ですね。

(岩立)文化庁も埋蔵文化財を積極的に一般公開するよう促すようになり、アナログからデジタルを活用する動きが少しずつではありますが業界に広がってきています。
今年は大阪の高槻市で開催された「古墳フェス COME COME* はにコット」や、泉大津市で開催された「ふれあいまつり2018」をドローンで空撮し、遺跡発掘体験の様子も盛り込んだ動画を作りました。きっかけは我々からの提案ではあったとしても、遺跡で街を盛り上げようという地元の皆様の協力がないと叶わない試みだったと思います。

解説の様子

解説の様子2

↑ドローンを活用した遭難者救助訓練の映像を小林理事長が解説

 

赤外線カメラが埋蔵文化財発掘調査に役立つ日は近い

(小林)ところで、ドローンに搭載しているのは可視カメラのみでしょうか。

(岩立)基本的には、発掘作業から発掘後を空撮しているので、使うのは可視カメラだけです。あくまでも発掘後の発掘現場の撮影や測量が目的です。後は動画です。ただ弊社は撮影することはできてもまだ編集する技術がないので業者にお願いをしている。ただ、自社でもドローンを扱えるようにしたいので、今年からスクールに社員2名を通わせています。

(小林)建築現場では赤外線サーモグラフィーカメラ(以下、「赤外線カメラ」)を搭載したドローンを人がいけない場所に飛ばして、橋脚やトンネル、ダムなどのひび割れや小さな亀裂を発見するのが一般的になりました。太陽光パネルの亀裂の発見にも赤外線カメラが使われるのですが、人の目では見つけることができないため、撮影した画像データを解析するソフトウェアを使って修理箇所を特定する。このように、撮影した画像を分析することで価値を生むサービスもドローン業界では存在感を上げてきました。

(岩立)赤外線カメラは使ったことはないですね。土の層にも温度差があれば判別できるとなれば、発掘前の試掘調査に大いに役立ちそうです。実は、発掘調査は目視で確認しながらの作業なんです。「鋤取り(すきとり)」と言いまして、かんなで削るように薄くすきとるように掘るんです。

(小林)例えば、降り積もった雪にも層がありますから、雪山で赤外線カメラを使えば、いつからいつまで降り積もった層なのかを特定することができるので、遭難者が出たとしても捜索場所を絞り込むことができるわけです。DPAの認定スクールも災害への対応にドローンが活用される日が来ることを見込んで、ドローンの操縦だけではなく、空撮した画像データや飛行記録を解析するソフトウェアなど、習得する技術の多様化が進んでいます。

(岩立)埋蔵文化財発掘調査の業界は、遺跡の記録のために撮影する写真もフィルムからデジタルカメラへの移行が進んでいないのが現状です。こうしたドローン活用において、社会的効用が広く認められるようになれば、埋蔵文化財発掘調査の世界も飛躍的に進化していくかもしれませんね。

3Dで魅せる昔と今のたたずまい

(小林)ドローンを使った取り組みとして今後はどんなことをなさるのでしょうか。

(岩立)私たちが今一番、ドローンを使ってやりたいのは、発掘調査をする場所の「今と昔」を3Dの画像で表現することです。発掘調査のほとんどが、ビルやマンションが建つ予定地で行われます。そうした土地の時代を遡ると、縄文時代には竪穴式住居があり、そこで人々が生活していたわけです。その様子がわかるような映像を立体的にお見せしたい。「今と昔」を、建物の違いだけではなく、生活様式の違いなどもご自身の生活に照らし合わせて感じてほしい。自分が住む場所を大昔の風景に重ねられるというのは、住む人にとってのロマンになるのではないかと思います。


(掲載日 2018年11月20日)

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