東京IPOトップインタビュー:石垣食品(株)(2901・JQS)

石垣食品株式会社(1985年11月27日上場/東証ジャスダック:2901)

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 1951年、石垣食品は戦後の高度成長期を目前に香辛料を輸入する事業で創業した。NHKが第一回紅白歌合戦を行い、数々のラジオ局が開局した年でもある。今では、あって当たり前のものが産声をあげた時代に同社も生まれた。1965年、世界に先駆け「水出し麦茶」を開発。大麦を焙煎してやかんで煮出す時代に、冷やす手間を省ける便利さがウケ、徐々にお茶の間に普及した。約20年続いた松島トモ子による「ミネラル麦茶」のテレビCMは、50歳代には懐かしいコマーシャルの一つと言えるのではないだろうか。

経済や産業の発展に伴い、消費者の生活スタイルも変わり、そのスピードは科学技術の発展とともに速まっている。こうした背景に呼応して、同社は、これまで一筋だった食品メーカーから脱皮を図るべく、EC、外食、飲食店運営受託など、事業の多角化に踏み切った。その狙いを2代目代表取締役社長の石垣裕義さんに伺った。

石垣食品2

↑代表取締役社長 石垣 裕義

 香辛料輸入で創業した同社は、長年、お茶とビーフジャーキーの二本柱で事業展開してきた。香辛料、お茶、ビーフジャーキーという不思議な組み合わせではあるが、そこには技術的なつながりがあった。技術があるから商品展開ができるように、時代が変わるから展開できるビジネスがある。そこに石垣さんは着目した。

 

―――なぜ分野の違うお茶とビーフジャーキーが主力事業として並んでいるのでしょうか。

実は、香辛料とお茶の加工技術は似ており、当社がお茶に参入したのはごく自然な流れと言っても過言ではありません。石垣式食品殺菌法と言いますが、創業の翌年には無菌香辛料の開発に成功し、香辛料の製造販売を始めました。それが当社の技術の根底です。この技術が、乾燥、焙煎、粉砕して紙パック包装をする茶加工技術に繋がっています。今ではゴボウ茶をはじめ健康茶を幅広く扱っていますが、焙煎して砕いた麦を紙パックに詰める「水出し麦茶」は、国内では初めての試みでした。

少しずつ販売は伸びていく中で、製造ラインの稼働が夏に偏ってしまうことが悩みのタネになりました。この頃、秋冬に需要が伸びる食品といえば、袋入りのインスタントラーメンでした。生産ラインの稼働が偏る課題を解消するため、香辛料の技術を活かしてインスタントラーメンの粉末スープを開発し、製造販売を始めました。やがてカップラーメンが台頭し、弊社でも粉末スープだけではなく、お湯につければ3分で戻る乾燥具材の開発に着手。カップうどんでお馴染みの油揚げも手がけました。NHKの「まんぶく」のモデルになった日清食品は、10数年前、一番の取引先でした。

事業の転機が訪れたのは、カップ焼きそば用に製造販売していた乾燥肉に起因します。乾燥肉はOEM供給だったことから、受注量が読めない。それでも、採算を考えると加工する中国から国内へはコンテナー単位で輸入する必要がありました。中国工場の生産ラインを遊ばせず、乾燥肉の無駄をなくす術として、生産を開始したのが自社ブランドのビーフジャーキーだったというわけです。インスタント麺の具材を製造する技術を応用し、日本人の嗜好にあったしょうゆ味のビーフジャーキーを開発しました。食品の乾燥や加工、包装の技術、それらを応用して活用する技術と開発力が当社の事業の根幹です。
“風が吹けば桶屋が儲かる”ではありませんが、香辛料から健康茶とビーフジャーキーへの展開にはこういう発想の転換的な因果関係があったのです。

―――100種類ものワインを取り揃えた飲食店やEコマース事業、飲食店運営の受託事業など、事業の多角化が目立ちます。その狙いを教えてください。

マーケティングと商品開発のプラットフォームを構築する取り組みです。2017年10月に健康・美容食品を扱うEコマースの株式会社新日本機能食品を子会社として迎えました。そして「フジミネラル麦茶」「ごぼう茶」などの健康茶や、ビーフジャーキーのマーケティング、商品の開発拠点として、2018年には株式会社ノムノと共同で、「nomuno2924(ノムノニクフジ)」というワインバーを開店しました。さらに、飲食店運営の受託事業を展開する株式会社エムアンドオペレーションを子会社化することで、 飲食店経営とEコマースの事業基盤の強化を図っています。
今まで通りに健康茶とビーフジャーキーを小売業者やバイヤー向けに製造販売するだけでは開発や展開に限界があります。例えば「nomuno2924」では麦茶焼酎や麦茶ご飯をお出ししていて、独自のメニューを味わっていただくからこそ得られるフィードバックがあります。外食事業を行うことで一般向けのみならずB向け業務用商品の開発のヒントにもつながりますし、Eコマースを販売チャネルとすることができます。開発の底上げに加え、昨年から沖縄県の沖縄ハム様の商品を取扱うなど、自社のリソースに頼らない商品展開も始めました。これらの展開により開発、商品ラインナップ、販売チャネルの強化を狙っているのです。

―――「nomuno2924(ノムノニクフジ)」は何故3000円で飲み放題を提供できるのですか?

小売店では買えないワインの品揃えは100種類。更に2019年3月からは日本酒も50種類以上置くようにしました。食べ物は持ち込んでいただけるので、食事は持ち寄りでワインを楽しむ女子会が開催されるなどグループの利用が多いです。本来なら様々なワインを楽しむとそれなりの値段になるところを抑えられることも人気の秘訣です。
外食サービスというよりは、集まりの場を提供しているものと考えています。お客様の回転は狙っておらず、一晩で一席に一人。簡単な食事はご用意しますが、基本はセルフサービスです。手間がかからず、お店に立つのは1人。飲食店の人材難の心配もありません。むしろ、ワインを勉強する人たちが通ってくれたり、仕事に志願してくれます。

―――個人投資家にお伝えしたいことは?

「石垣食品」のロゴがついた商品を、一度はみなさまの食卓でご覧になられたことがあるのではないでしょうか。麦茶やゴボウ茶、日本人好みのビーフジャーキーは、スーパーや量販店に並んでいますので目にする機会も多いと思います。株主様の中にも、当社が製造販売する食品を試してくださって株主になってくださった方がおられます。

ご期待にお応えできるよう、既存商品の品質維持・向上を図りつつ、新たな「当たり前」を生み出す商品開発に取り組む一方で、お話しした様な他社様商品の展開、Eコマースの活用、外食事業の様な新規事業展開といった事業の多角化により、裾野を広げてまいります。今後の事業戦略にご期待ください。
事業の多角化は、マーケティングと消費者との接点を強化するためだと強調する2代目社長の石垣さん。冷静沈着な物腰で、新規事業の開拓に挑む。語らずとも秘める自信が垣間見えた取材となった。

 

(掲載日 2019年4月5日)

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