東京IPOトップインタビュー:(株)ブシロード(7803・東マザ)

株式会社ブシロード(2019年7月29日上場/東証マザーズ:7803)

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 株式会社ブシロードは2007年にトレーディングカードゲームで創業。アニメやゲームなど、開発するコンテンツを知的財産(IP)として事業を展開する。モバイルオンラインゲーム、音楽にグッズ、メディア、声優マネージメントなど多岐にわたるエンターテイメント事業のほか、プロレスやキックボクシングなどスポーツ事業も手がける。企画や制作だけではなく広告宣伝ノウハウも有しているためプロデュースからプロモーションに至るまでグループ会社内で一元管理できる。これが、ヒットのタイミングを逃さない同社の強みの1つになっている。

 日本のアニメやゲームのファン層が世界に広がる今日、リアルタイム性やライブ感を楽しめる仕掛けを投入するなど先駆的な取り組みをする同社に注目が集まる。2012年に同社に参画し、2017年10月には創業者から代表取締役社長のバトンを引き継いだ橋本義賢さんに事業の魅力を伺った。


 コンテンツが豊富なだけではビジネスは成り立たない。それゆえ、樹木が枝を伸ばし果実を実らせるように、同社にとってコンテンツはIPであり、事業へと育っていく“種”であるという位置付けだ。いわゆる一発当てて終わりを迎える従来のゲームを開発する事業体とは一線を画す。時代の潮流を見据えながら先手を打って出る橋本さんの「IPの価値最大化を図る秘訣」に迫った。

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↑代表取締役社長 橋本義賢

世界で勝負できるビジネスを追求

 日本のアニメは輸出できるビジネスになる–。橋本さんがこう考えてIPビジネスに着目したのは25年前に遡る。橋本さんはグローバルなビジネスに関心がありIBMでキャリアをスタートした。後に、同社に参画するまでの間に2つの会社を起業。そのきっかけが、同社を創業した木谷高明さん(同社取締役、ブシロードミュージック代表取締役社長)との異業種交流会での出会いだった。1980年代のことだ。当時勤めていた山一證券を辞めてアニメ業界で一旗揚げようと、株式会社ブロッコリーを設立した木谷さんが開催した同人誌即売会を見学した。

 同人誌即売会は、漫画家やアニメファン、クリエイターが集い、キャラクターに扮したコスプレイヤーたちが会場を彩る。今や大規模なイベントとして一般にも知られ、欧米やアジアでも日本アニメのキャラクターのコスプレを楽しむイベントが増えているほど、このマーケットは国境を超えて世界に広がる。

 当時、こういったブームの走りを目の当たりにした橋本さんは「日本のアニメやゲームのビジネスの根っこはここにある」と確信に近いものを感じた。「世界に輸出できるビジネスを手がけたい」という思いが強く、かねてからビジネスチャンスを探していたところに「日本アニメ」がぴったりとはまった。

「根っこをおさえることが先決。とにかく始められることから始めよう」と、1995年にアパレル業界出身のパートナーとコスプレイヤー向けの衣装を製作する株式会社コスチュームパラダイス(現 コスパ)を創業し、アニメ業界に入った。その後、アニメグッズなどの販売や、イベント、ネットラジオへと事業を広げた。

 コスパ時代での大きな学びは「商品を流通に乗せて店頭に並べるだけではやがて立ちいかなくなる。必要なのはライブ性だ」と、橋本さんは振り返る。

デジタル社会が叶えた垣根を超えて共有できる臨場感

 橋本さんと木谷さんはそれぞれに起業してから、しばしば共同でイベントを開催した。1994年頃から、東京の芝浦にあった「ゴールド」や神楽坂の「ツインスター」、全国では「マハラジャ」などの施設でコスプレのダンスパーティを実施した。会場のスペースにもよるが、毎回500〜2000人の規模だったという。

「リアルタイムにその場を楽しめるライブ感あふれるエンターテイメントの市場は成長するという読みがあった」と橋本さん。デジタル市場の幕が開けた1990年代からインターネットの普及は進み、ソーシャルメディアやEメールなどでのコミュニケーションも浸透した。

「デジタル社会が進めば進むほど、アナログな世界が恋しくなるもの。インターネットには“いつでもどこでも”という利便性がある一方で、ライブエンターテイメントはその瞬間にその場所にいてこそ体感できる希少性がある」

 橋本さんのこうした考えは1990年代から一貫している。橋本さんがコスパを離れ、木谷さんが創業したブシロードに参画したのは2012年。その5年後にIPプロデュースに専念したいという木谷さんから代表取締役社長のバトンを受け取った。ブシロードが仕掛ける「Bang Dream!」(バンドリ!)という女の子たちのバンド活動を描いた作品は、キャラクターの声を演じる声優自身が実際にライブでバンド演奏をし、アニメ、モバイルオンラインゲーム、コミカライズ、グッズとメディアミックス展開をしている有名プロジェクトだ。2019年2月に開催した日本武道館3Daysライブは、台湾、香港、韓国、全国で47ヶ所の映画館を中継し、武道館に来られなくても最寄りの映画館でライブを鑑賞できるようにしたところ、当ライブの総動員数は5万人を超えたという。「生で見ることはできなくてもリアルタイムで見ることができる。その瞬間の盛り上がりは、その場にいないと味わえない。後からブルーレイに収められたライブの映像を見ることはできても、ライブに来るファンが求める“リアルタイムだからこその臨場感”は得られない」と、年々、動員数が増える背景を橋本さんはこう説明する。

ゲームの開発ではなくIPを開発する

 ブシロードはIPを軸に、トレーディングカードゲームやモバイルオンラインゲーム、音楽CD、ライブ、グッズ、書籍など様々なサービス展開を行っている。同社の強みの1つに、企画制作、開発、プロモーションに至るまで一元管理ができる体制であることは先にも触れた。例えば、同社に所属する声優はそれぞれがSNSのアカウントを持っているため、本人たちの関わるプロジェクトが盛り上がるタイミングで、タイムリーにSNSで発信し、さらに盛り上がりを増幅させていく起爆剤にもなっている。また市場の動きを見ながら、盛り上がる予兆が見えた時に宣伝費を投下し、交通広告やテレビCM、ネット広告、SNSなど様々なプロモーションを織り交ぜて展開する。これにより、年間200を超えるとも言われる新作アニメの中から際立つ作品が生まれる。

「アニメに登場するキャラクターのライブがあり、イベントもある、グッズもある、ゲームもはじまる––。ライブからゲームに関心を示す人もいればイベントがきっかけの人もいる。それぞれのきっかけで関心を持ったファンが1年を通してひとつのIPを楽しめるかが非常に重要です」(橋本さん)。

これがゲームの開発会社と、IPを開発して多彩な事業へと育てる同社との大きな違いと言えよう。橋本さんは「市場は世界に広がったがまだ薄い。需要は顕在化したので、その厚みを帯びてくるのはこれからです」と締めくくった。

(掲載日 2019年7月26日)

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