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Tokyo IPO
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「ナショナルブランドを扱わない小売業に活路あり」
東京IPO編集長 西堀敬
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1月下旬に雪の舞い散る福島にあるホームセンターの役員を訪問した。地方経済は、公共事業の削減で不景気の風が吹き荒れているという。同社の経営指標は住宅着工件数であり、地方の住宅といえば一戸建てである。新築の家庭は、カーポート、物置、庭作り、とホームセンターに陳列のあるネガサ商品を購入することになるからである。

足元の業績を尋ねると、既存店ベースで昨年同月比の3%アップ。とは言え、単品ベースの単価の下落は引き止められない。店頭に陳列してある商品の4割は中国からの輸入品。善戦すれど、デフレの影響で粗利の低下は避けて通れないのが今日の小売業だそうだ。

役員は、米国のウォルマートの話を持ち出し、日本の小売業の店頭プライスを3割下げると言い張る同社の戦略について、その実現性は高いと言い切った。
日本の小売業界は、メーカーが作った商品を、メーカーがマーケティング(宣伝広告)を行い、ただ単に消費者に届けるだけの役割であるケースが多い。一方で、ウォルマートは、川上から川下までを一気通関できる仕組みを構築し、Every Day Low Priceを米国で実現している。

外資系の小売業者として、3年前に単独で日本へ乗り込んできた仏カルフールは苦戦の強いられている。日本市場で勝ってきた外国の小売業者は、トイザらスだけ、とホームセンターの役員は言い切った。その差はなんだろうか?ということに議論は展開した。結論は、目的を持った買い物の場を提供するスーパーマーケットやコンビニはナショナルブランドを扱う流通業だ。一方、トイザらスはナショナルブランドがもたないSomething Newを発見できる場所であろう、とのこと。

ここ1年間の小売業のIPOを取り上げてみると、ナショナルブランドのみを取り扱っている会社は1社も存在しない。百人百様の多様な価値観を満たす商品戦略こそが日本の小売業には重要な要素であるようだ。顧客に常にサプライズを与えるような商品戦略を実現できる小売業者だけが生き残れるではないだろうか。ユニクロも最初はナショナルブランドではなかったが、フリースで一躍全国区になった。しかしながら、企業の成長と言う意味においては、その時点で終わってしまったかのようにみえる。

今年は、まだ1社も小売業者が新規上場していないが、今後、上場してくる小売業を見るポイントとしては、ナショナルブランドを扱わない、そこに成長の余地があるような気がする。マクロ的にはデフレは脅威ではあるが、個別の企業を見るときには、決してネガティブファクターだけではなさそうだ。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com