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Tokyo IPO
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「新規上場株の躍進とその陰に潜むリスク」
東京IPO編集長 西堀敬
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新規上場株のパフォーマンスが好調となっている。年初から先月末までに48社が新規上場したが、公募株価を下回っているのはわずか9銘柄のみである。
中には、公募株価の5倍近くまで上昇している銘柄もあるほど熱気を帯びてきている。株式の持ち合い構造にある大型株に比べて、戻り待ちの売りがなく、需給面で不安が無い為、初値でキャピタルゲインを得た個人投資家の回転売買が支えていると見られる。

一方、株価の支えとなる企業業績の動向をみると、日経新聞が集計した前期決算の数字から、上場企業の業績動向はおおむね順調に推移している。新興市場を除く上場企業において、前期はリストラ効果が鮮明に表れた決算となった。
それは、売上の伸び率が1%であるにもかかわらず経常利益の伸び率は70%となっていることから窺い知れる。今期も引き続き売上の伸び率は1%未満と低いものの、更なるリストラや事業の効率経営によって経常利益は17%伸びるようだ。一方、新興市場上場企業を見ると、前期は売上の伸び率は4%、経常利益の伸び率は19%、今期は売上が5%、経常利益が32%伸びるような状況である。

中小型株の好調な業績に裏打ちされるような形でJ-Stock株価指数は3月の中旬から先月末まで右肩上がりのパフォーマンスとなった。株価の動向と企業業績はマクロ的には一致すべきだが、この2ヶ月のIPO銘柄の株価動向は業績の変化率に比べ、異常なまでに加熱しているような気がする。特定の企業名を出すのは控えるが、株価が公募価格の5倍近くまで上昇している企業の予想利益ベースのPERはすでに170倍まで上昇している。また、同社の業績をみると、前期決算と今期決算予想を比べると経常利益で20%増益でしかない。ファンダメンタルをまったく無視した水準まで株価が上昇してしまっていると言っても過言ではない。また、昨年末にJQに上場した企業が、先週、業績の修正を発表した。内容は言うまでもなく、売上、利益ともに下方への修正であった。

筆者は、年初から、新規上場企業の公募価格の評価は非常に低いと言い続けて来たが、初値騰落率が100%を越すような状況にまで加熱した新規上場株のセンカンダリーマーケットについては少し警鐘を鳴らしたくなる。新規上場企業の将来性について否定するつもりはないが、新興市場への上場を果たした企業は、売上・利益ともに小さく、景気の波に飲まれるような業容である。大企業のように、業績の悪化をリストラで吸収して利益を維持するような芸当はできない。株価のラリーに参加するのはいいが、ファンダメンタルを無視した株価水準での参加は、かならずどこかで梯子を外されることを肝に銘じておくべきである。特に、買いから入ることしかできない新規上場銘柄への投資には細心の注意を払うべきであることを、投資家の皆さんは決して忘れないようにしていただきたい。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com