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Tokyo IPO
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「ネットバブル以降、株主に報いた企業とは」
東京IPO編集長 西堀敬
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今週の日経産業新聞(7月8日版)に「株主に報いた企業」四半世紀ランキングの特集があった。対象は、1977年末から2003年7月1日まで継続して東証1部、2部に上場していた企業である。「報いた」の定義は、25年間保有していたと仮定して株価の比較に加えて、配当金も加味された株式投資収益率が高いことにある。まず、その上位の銘柄名と投資収益率をご紹介しておこう。

1位:ヒロセ電機(6806) 53.2倍
2位:信越化学(4063)  38.1倍
3位:武田薬品(4502)  37.5倍
4位:東京精密(7729)  37.3倍
5位:東京精密(6981)  32.5倍

以下、6位:ヤマト運輸、7位:小野薬品、8位:有沢製作所、9位:HOYA、10位:ファナックの順になっている。ご紹介した10社も含めて合計30社が10倍以上のリターンになっている。しかしながら、これだけ長期間にわたり売却せずに持ちつづけるのは如何に機関投資家といえども至難の業である。たぶん、25年なる長期間にわたる株式の保有により、その果実を享受しているのは、創業者、オーナーとその家族、役員、社員だけであろうと思われる。

東京IPOでは、1999年から2003年までの4年間にIPOした企業の投資収益率(6月30日株価÷公募価格、配当は考慮していない)を計算した。その結果が以下のとおりである。

1999年:1位、グッドウィル(4723)2.7倍、
      2位、サミー(6426)2.2倍、
      3位、フユーチャーシステム(4722)1.7倍
2000年:1位、ポイント(2685)7.9倍
      2位、九州ジャスコ(2653)4.3倍
      3位、ゲオ(2681)4.1倍
2001年:1位、インターアクション(7725)6.7倍
      2位、ワークスアプリケーション(4329)5.2倍
      3位、テイクアンドギブニーズ(4331)4.5倍
2002年:1位、アンジェス(4563)3.7倍
      2位、竹内製作所(6432)3.6倍
      3位、三光ソフラン(1729)3.4倍

昨年のIPO銘柄は、上場後の時間経過が少ないので、その評価は分かれるところであるが、株式市場を取り巻く環境を考えれば、この3年間の下げ相場の中においても、長期投資を軸にして銘柄選別すれば収益は追求できるということの証左でもある。ただ、25年間の歴史の中で上位に顔を出している銘柄はすべて日本発のグローバルテクノロジーカンパニーである。一方この4年間に上場した企業の中で、上位に顔を出している企業のほとんどが、日本国内を市場にした事業を展開し、グローバルテクノロジーとは無縁の企業が多いようである。これらの企業が、今後の日本株式市場の牽引車となるのか、それとも再び世界に通用する技術を持った企業が台頭してくるのかはわからないが、日本の産業構造が少しずつ変化している兆しでもあるような気がする。

最後に、株式投資の「明るい」部分のみを見れば、長期の運用を任されている年金基金が株式への配分を減らすとか、無くするといった議論はまったくナンセンスであるように思える。しかしながら、すべての株式が上記のようなリターンを得られるわけではない。そこを選別し投資するのが運用の醍醐味でもあろう。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com