┏ ――――――――――――――――――――――――――――― ┓
Tokyo IPO
http://www.tokyoipo.com/
┗ ――――――――――――――――――――――――――――― ┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「今回の相場の発端を思い出してみると」
東京IPO編集長 西堀敬
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

今日8日告知の自民党総裁選には読者の皆様も相当興味を持たれていることであろう。今回の自民党総裁選は、「踊る大総裁選」などと言われ、日ごとメディアの報道熱が高まっている。今回の選挙は、改革路線を突き進む小泉総裁と、前回の総裁選での公約を守らなかったという理由で反対に回っている陣営の激突である。とはいえ、政治家の口からは子供の喧嘩のような発言ばかりが飛び出しており、日本経済の完全回復には小泉氏の政策とまったく逆のことをすればいいとまで言い出す人も出る始末である。日本経済はまだまだ病み上がりで、その体力は脆弱であるというのに、政治家というのは呑気なものである。とはいえ、実際は最近の株価動向、マクロの景気指数の回復をみていると日本経済の危機というのは最悪の時期を脱しつつあるようにもみえる。

今回の総裁選を面白おかしく演出するメディアの影に隠れて見過ごしてはいけないことがある。この4月まで株価を押し下げてきた要因は何であったのか。
それは、銀行の不良債権の問題であり、そこから派生する銀行の自己資本の問題であった。その延長線上にある貸し渋り、貸し剥がしが、中小企業の資金繰りを苦しめている、と言われたはずであった。これらの問題は、今はすっかり報道からは姿を消してしまっている。

土曜日に開催した「東京IPO IR会社説明会」で基調講演を頂いた日本経済新聞社編集委員藤井氏の話の中で非常に興味がある話題があった。それは、もし小泉総理の続投がなくなったときに、内閣から抹消される可能性が非常に高いのは竹中金融相であり、金融行政は政策の転換を余儀なくされるだろう、ということである。竹中氏率いる金融庁の銀行への資産査定の厳格化が行われていなければ、りそな銀行への資本注入は行われていなかったであろう。竹中氏は玉虫色のルールの多い金融行政の中で初めてルールを明確に提示し、それに則り決定を行ったのである。それが外国人投資家らの買いを呼び、今日の株高を招いたのである。そうなると、万が一にも小泉氏が総裁選に敗れることがあれば、金融行政の路線転換を懸念する外国人投資家らが取る行動は「ひとまず売り」ということになりそうだ。

あらゆる経済指標が好転しつつある中で、さすがに銀行経営者も政治家が替わったからといって経営の舵取りを変えるようなことはしないであろう。一番の危惧は、地方出身の政治家がその場しのぎの従来型の官製需要のための国債を増発することである。国債が銀行の新たな不良債権となり、道筋が見え始めた銀行の復活に水を差さないことを期待したい。

小泉総裁応援のコラムと受け止められては困るが、今回の相場を主導した外国人投資家を動かした背景にあったものを政治家は忘れるべきではないことを書き留めておきたい。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com