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Tokyo IPO
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再チャレンジの「イー・アクセス」
東京IPO編集長 西堀敬
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「イー・アクセス」の上場が承認された日に、昨年の11月にメルマガのコラ ムに同社の新規上場についてネガティブな見解を述べたのを思い出した。当時 の外部環境は、メガバンクの不良債権問題について、資産査定の方法論が議論 されている真只中であった。どのような財務状態の企業への貸し出しであれば 貸倒れ引当を行なわなくてもいいのか、またどれだけ引当なければいけないの か、そんな議論が新聞や経済雑誌を賑わせていた頃であった。当時の筆者の文章を読み直してみると、銀行が赤字企業への融資を審査する際のポイントであ る営業キャッシュフローが、イー・アクセスにおいては3期連続してマイナス であり、当時のメディアの論調では、メガバンクの融資対象企業としては相当 厳しさが存在するように見えた。そのような環境の中にあって、証券市場がイ ー・アクセスに資金調達の道を開こうとしたのであるが、メディアが作り上げ た銀行の不良債権処理論がイー・アクセスの1回目のチャレンジを不幸にも打 ち砕いてしまったのであった。

それから10ヶ月の時が過ぎて足元の経営状況を見てみると、ずいぶん改善したものだ、という実感を持つ。それに呼応して、機関投資家の反応も大きく変 わって、ユーザーのFTTHへの移行の時期や契約毎の単価の動向に集中している のではないであろうか。今回は、株式市場の活況という後押しもあり、前回と は大きく異なって外部環境は完全なフォローウィンドに変化しているのは事実である。

その財務内容の詳細を見ると、EBITDAが昨年の第二四半期からプラスに転じて 毎四半期毎に10億円づつ改善しているのが見える。一方で売上原価率も13 0%→80%→70%と順調に改善傾向にある。また、今期の第一四半期は経 常利益までもが1億4千万円のプラスに転じ、今期の業績予想は経常利益4億 円と発表されている。昨年の11月がなければ、非常に優等生の会社がタイミ ングを計ってIPOしてきたともいえる。

こうなってくるとネガティブな発言は陰を潜め、同業他社との比較で株価の妥 当性の議論が台頭してくる。会社側は、目論見書ベースで想定株価12〜15 万円と見ているが、その株価をベースに潜在株をすべて含んで時価総額を計算すると350〜430億円になってくる。このバリュエーションに妥当性を持たせるものを見出そうとすると売上基準であろうか。NTTの売上が連結で11兆円、時価総額が8兆円、KDDIの売上が2.8兆円、時価総額が2.5兆円日本テレコムの売上が1.8兆円、時価総額が1.1兆円であることを前提にすると、同社の今期の売上予想は383億円と公表されているから、PSRでみるとほぼ1倍の水準である。先週末に仮条件が発表され、15〜18万円へ切り上がったことからすると、同社の売上成長性についての市場の判断は非常にポジティブであるようだ。それを裏付ける材料として総務省のDSL普及状況公開ページ http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/whatsnew/dsl/ を見てもわかるとおりここ2年の加入者数は完全な右肩上がりの増加を示している。

個人投資家へのロードショウが出来ないイー・アクセスの代弁をするのではな いが、個人的には日本のブロードバンドの通信環境はまだまだ成長中であると認識している。なぜならば、筆者の実家のある田舎では、まだADSLは使用不可である。ニーズはきっとあるだろうが、そこまでインフラが追いついていないのである。イー・アクセスがそんなエリアまでサービスを提供する必要はない と思うが、どこかの通信事業者がそこまでサービス対象エリアに加えて実際に ユーザーが使い始めたときが飽和点だろう。個人投資家の皆さんはご自宅やご近所でのADSLの普及具合で今後の伸びを予想していただきたいが、近い将来に我が実家でもADSL環境でインターネットができるその日が来たら、読者の皆さ んにもお知らせしたい。

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com