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「モノ造り日本は復活するのか〜
ジョブレス(ロス)リカバリーに立ち向かう日本エイム」
東京IPO編集長 西堀敬

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日本企業の業績も2期続けての増益基調が鮮明になってきている。すでに巷の興味は2005年3月期の業績動向にまで及んでいる。この企業収益の改善は、どこの企業も生産性向上のもとにリストラが実行された結果であることは間違いない。メディアは、この状況をジョブレス(またはジョブロス)リカバリーと呼んでいる。円高で輸出企業は苦しいと言っているということは、日本で生産ラインを持ち製造を行っているから為替変動が気になるわけだ。ジョブレス(ロス)で社員が居なくなった製造現場を誰が担っているのか、皆さん心配になるだけでなく、いったいどのようになっているのだろうかという疑問が沸き起こってくる。

モノ造り日本がなくなってしまう可能性は否定できない。そこに目を付けた人物が、昨年12月12日にJASDAQに上場した日本エイムの若山社長だ。同社は、半導体・液晶製造等における生産ラインの一括アウトソース受託を事業としている。一見すると、人材派遣業に見える同社の事業について若山社長のお話しをお伺いした。

若山社長は1971年生まれの32歳。社会人としての仕事はテンポラリーセンター(現パソナ)で人材派遣業務からスタートを切っている。1995年に独立し派遣型アウトソーシング事業を始めるも、うまく行かず、赤字経営に陥る。その時に会社の存在意義を有志社員で1年間議論し尽くして出した事業ミッションのあり方が、今日のビジネスの基礎となっている。同社のこだわりは、@社員の専門技能の習熟度(スキル)を高めることができる仕事、A顧客がまるごと任せてくれる仕事(業務の一括受託)という2軸にマッチする仕事以外はやらないことにある。この考えを基礎にして、事業分野をリサーチし、液晶・半導体事業が合致する業界であると結論を出し、7期(2002年3月期)から現在のビジネスモデルをスタートさせた。

同社のビジネスがターゲットとするエレクトロニクス業界の労働事情について説明しておこう。まず、エレクトロニクス業界の外部労働力依存度であるが、3年前の9%から現在は18%まで上昇してきている。若山社長は数年後に30〜50%にまでその比率はアップすると見込んでいる。一方、同社が選んだ半導体業界の外部労働力依存度であるが、現在約10%程度とのことである。業界全体よりもその比率は低いものの3年後には20%までの上昇が見込こまれている。市場規模はマクロ的な数字として、半導体アウトソーシング業界全体で現在860億円(当社調べ)であるが、2006年には1400億円と見ている。企業のリストラが続けば、この数字は加速度的に大きくなる可能性も否定できない。

同社がエレクトロニクス業界の中でも半導体業界の生産現場を選択した背景について聞いてみた。まず、企業は大前提として、雇用リスクをフィックスさせたくないとういう大前提が存在するのは自明の理だ。それにもまして、半導体の製造現場は、未経験者が一人前の作業者に育てるには約1年間の時間が必要とされる。しかしながら、その労働環境と必要とされる学習についていけずに離職する人が非常に多く、下手をすると人材が1年で1回転してしまうような職場である。質の高い労働力を確保したいが一人前になるまでの人件費を固定費にしたくないという非常に企業にとっては都合のいいソリューションを提供するのが日本エイムである。急なオーダーが入ったときに製造ラインを一本稼動させたいというニーズにはぴったりの一括請負をやってくれるのである。

次にそのような職場で働く人材をどのように確保しているかについて聞いてみた。全国12の営業拠点で未経験者を毎月200名採用しているそうだ。1年間で1人前に育てるように研修を行うが、離職率は月3%(半導体アウトソーシング業界平均は8%)になるので常時採用を行っている。採用する社員の大前提はお客様の製造現場と職住接近していることである。また、雇用形態は正社員であるが、毎年行う技能認定で昇格しないと給料が上がらない仕組みになっている。毎年の認定で評価が上がる人は、オペレーター⇒エスペレーター⇒エンジニアもしくはオペレーター⇒リーダー⇒事業所長の二通りの道が準備されている(詳細はHP参照)。まさに努力するものは報われるという現代流の仕事のルールが適用されている。

日本エイムのビジネスモデルについては、少なからずそのニーズの大きさについては理解が進んだと思うが、利益はどのように生み出されるのかについて見ていこう。通常の派遣業は1名単位で契約していくが、同社は生産ラインの一括受託なので、半導体工場の現場では1事業所毎に約40名前後となり契約額も数億円単位となり一人一人を派遣するビジネスに比べるとスケールメリットが高い。粗利率の低下が起こらないとすると、販売管理費を固定化することにより、売上が増えれば自動的に営業利益率は上がる計算となる。現状の営業利益率は7%程度であるが、将来は10%程度までのアップを見込んでいる。

最後に、若山社長に中期的な経営目標をお伺いした。3年後には売上300億円、営業利益率10%が目標。利益の絶対額は毎年2倍のペースで伸ばしたい。株主還元として、配当性向最低20%、プラス利益成長分のキャピタルゲインを期待いただきたいとのことである。

日本から製造業が消えるのではないかとの懸念もあるが、モノ造りニッポンを支える影の立役者が世の中に認知されようとしている。読者の皆様も日本エイムの動向に注目してみてはどうだろうか。

日本エイム HP: http://www.nihon-aim.co.jp/


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