┏ ――――――――――――――――――――――――――――― ┓
Tokyo IPO
http://www.tokyoipo.com/
┗ ――――――――――――――――――――――――――――― ┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「東北の技術屋集団 日本セラテックの川田社長に聞く」
   
東京IPO編集長 西堀 敬
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

昨年11月27日にJASDAQに上場した日本セラテックの川田社長にお話しお伺いした。

日本セラテックは、ファインセラミックスを素材とした機械部品、電子部品の開発、製造、販売を行っている。と書いただけでは、事業内容はほとんど理解できない。それもそのはずで、当社の事業を説明する目論見書には用語解説が18項目もある。まず「セラミックス」の説明をしておくと、セラミックスというのは粉を固めて焼いた焼き物のことで、オールドセラミックスとファイン
セラミックスがある。ファインセラミックスはニューセラミックスとも言われ、オールドセラミックスの方は天然の原料を使用した焼き物で、昔からなじみ深いレンガ、碍子、瓦等々。もう1つは、高純度に加工精製した原料を使用した焼き物で、エンジニアリングセラミックス、構造部材、それからエレクトロニクスセラミックス、機能部材に分かれる。当社はエンジニアリングセラミッ
クス、構造材のうち、半導体・液晶製造装置部品を中心に事業展開している。もう1つの柱はエレクトロニクスセラミックス、機能部材で、絶縁体、導電体等々があるが、このなかに圧電体というのがある。圧電体というのは力を加えると電圧が発生し、電圧を加えると変形するという特性をもった材料で、この圧電体部品を製造・販売している。

当社の事業精神は、「最先端技術を日本国内に温存し、日本のGDPに貢献することである」と川田社長が言うとおり、物作り日本を愚直なまでに実践している企業である。とは言え、セラミックスの製造には非常に高度な加工技術が必要とされ、特にエンジニアリングセラミクス事業はシリコンサイクルの荒波をまともに受ける事業でもある。その当社の売上の7割超を占めるエンジニアリングセラミックスは、最先端の技術が必要とされるが、その技術革新のスピ
ードにキャッチアップするところで活用されているのが「学」や「官」の智恵である。顧客ニーズに基づく新製品の開発は、基本的には社内ですべて行い、大学の教授の研究室から途中経過の段階でサジェスチョンをもらったり、製品の評価をお願いしている。読者の皆さんも知りたいと思うのが、先月の青色ダイオードの件にもあったような、大学の教授に対する報酬である。川田社長に
聞くと、教授および研究室に対しては、実費を負担するもしくは必要経費程度の支払いしかしていないということだ。大学の教授は、研究成果が世の中で使われたり、論文として評価されることに純粋に喜びを感じて応援してくれるらしい。

太平洋セメントという組織の中で、生産現場を渡り歩いてきた川田社長であるが、その手綱捌き−経営スタイルには、長年経営に携わってきたオーナー創業社長を思わせる独特なものがある。市場シェアを100%取ることが目標という。と言いながらも、社内では1年超の目標は提示しない主義である。昨年の目標はJASDAQ上場への備えだった。例えると、ハーフマラソンだといってスタートさせ、ゴール地点で実はここは折り返しだったと言ってフルマラソンに切り替える。ハーフであれば、それなりにスピードを出せるが、フルマラソンになると調整しながら走ることになる。営業面でも、当社はセラミックス分野においては後発企業であるため苦戦を強いられることもある。しかし、京セラとは棲み分けるのではなく、常にガチンコ勝負、負ければ退場になるだけ、と言い切る。当社の営業面における当面のチャレンジは世界でNo.1の半導体装置メーカの米国アプライドマテリアル社を開拓することであるが、真っ向勝負の日本セラテックにも十分勝機があるように思える。

次に大株主と新しく株主になられた投資家へのメッセージを聞いてみた。上場後も83%の株式を保有する親会社である太平洋セメントについてであるが、川田社長は経営の独自性を高めたほうがベターと考えている。それは当社の事業を取り巻く環境の変化は激しく、それに柔軟に対応するスピード意思決定が必要であるが、どうも親会社の経営文化とは異なるような気がするとのことである。また、川田社長は、株主に対する還元については、技術開発を強化し競争力をつけ、業績を向上による株主価値の向上を目指すのが最高の報い方と考えている。もちろん、配当性向についても20%程度の水準は考えているそうだ。

技術が要の企業であるため、どうしても限られた文字数では表現しきれない部分が多いが、川田社長の話をお伺いして、大企業の子会社というイメージはまったく感じられないばかりか、野武士的な感じが身体全体から湧き出ているように思えてならなかった。競合は京セラと言い切るが、市場のシェア争いにおいて近い将来目を見張る結果が出てくることを期待したい。

先日、青色発光ダイオードの発明の対価にとして、当時の開発者ある中村教授に200億円の支払い指示が東京地裁から出された。日本の技術水準が危機に瀕している今日にあって、個人の利益主張もいいが、手弁当で企業の先端技術をサポートする日本セラテックを取り巻く教授陣には清々しさを感じざるをえない。

株式会社日本セラテックのHPはこちら⇒ http://www.ceratech.co.jp/
           

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com


(c) 1999-2003 Tokyo IPO. All rights Reserved.