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「クリエイティブ業界で組織力を生かす  〜ブレインナビ左近会長に聞く〜」
   東京IPO編集長 西堀 敬

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1月28日に大証ヘラクレス市場に上場したブレインナビ(証券コード:2388)の左近会長にお話しをお伺いした。

株価のほうは初値騰落率131%、その後6連騰となり先週一服した。IPO神話と呼ばれる年初のIPO銘柄のパフォーマンスが高いのは過去の歴史が物語っているが、今後の株価動向を左右する経営の本質について左近会長に迫ってみた。

ブレインナビは出版社からテレビゲームの攻略本やアニメの解説書などの編集を請け負うビジネスを行っており、当社では原稿事業として売上の9割超を占めている。その他の売上として原稿事業で印税契約ができる重版印税事業とクライアントに対するコンサルティング事業や版権(ライツ)事業があるがまだ売上に占める割合は低い。

当社の強みについて、今回のIPOに絡めて左近会長に聞いてみた。原稿事業のビジネスドメインは法人組織で編集を請け負っているところが少なく、ほとんどが個人事業主レベルでの請負となっているらしい。当社が上場企業であることが、請け負う金額に大きくプラスに影響することはないが、品質および納期厳守という面において出版社に対して安心感を与えている。お陰で、昨年は出版社やゲームソフト会社からの紹介で新規のクライアントが33社も開拓できたそうだ。また、優秀な人材確保するという面においても、編集関係の社員の求人を行うと常に募集人員数の20〜50倍くらいの応募があり、この業界においても安定した仕事を求める人が多くなってきたようだ。

将来構想については、元証券マンの左近会長は具体的な数字を述べたがらなかったが、売上の目標としては50億円(〜100億円)がひとつの目途という。但し、現在の中核事業である原稿事業は労働集約事業なので限界があり、ライツビジネスなどの付帯ビジネスを伸ばしてレバレッジを利かせて行きたい意向。特にライツビジネスにおいては、(c)を取ることに意義があり、メディア向けとしては放送局や出版社と組んで事業推進を行う一方で、キャラクターグッズなどを製作して流通で販売することなども検討していきたい。

当社は、設立して3年を過ぎたばかりのまだまだ成長途上の企業であるが、ややもすると事業の継続性に疑問をもつような新興企業が多い中にあって抜群の安定感を持っている。
それは、左近会長が証券会社在籍時代にいろんな企業を分析して、財務体質の強い会社が結果として強い会社になれるという結論をもったからだ。左近会長は財務体質が強い会社の定義を、自己資本比率の高くて、ROEの高い企業としている。当社の自己資本比率はIPOでの資金調達により80%超となる見込み、ROEも前期は20%超となっており、事業の継続性の観点からすれば超健全な財務体質である。株主還元の方法についても、現段階では成長性を軸にしたキャピタルゲインでの還元が望ましいとしながらも、永続的に株主還元するには配当及び株式分割という考え方が重要であるとして、今すぐに方針を出すのではなく、例え経営陣が変っても継続できるようなポリシーを決めてから公表したいと考えている。

業界のイメージとは異なり非常に堅実な経営のスタイルを持っている左近会長であるが、社員の評価に関しては、証券会社時代の経験も手伝って、本当の意味での信賞必罰ルールを実行している。社員の平均的な給与は目論見書を読む限りにおいては非常に低く感じるが、インセンティブ業績連動賞与制度があり、クライアント確保数、生産性の向上(効率化)、ライツビジネスへの貢献などの観点で評価し、社員の賞与は0〜100万円のレンジで年1回支給されるそうだ。また、左近会長は、経営陣よりも高い報酬を得るような異常値が発生することにもまったく抵抗はなく、厚く濃く社員を評価していきたいそうだ。

ブレインナビの将来性を占うとすれば、この分野には法人としてビジネスを拡張してきた人はほとんどいないと言うことが決め手になるのではなかろうか。たぶん、左近会長は、どのような事業ドメインの経営であったとしてもまったく同じように経営を行うであろう。左近流経営スタイルである「事業のプロを腹心につけて、業務執行を任せるスタイル」は、今後の日本のベンチャー企業のメルクマール(指標)になるのではないだろうか。それは、左近会長が、自ら株主(投資家)の立場に立って、経営にあたることをモットーにしているからである。日本にも経営をビジネスにする人物が登場する時代が到来したのかもしれない。

株式会社ブレインナビ HPはこちら ⇒ http://www.brain-navi.co.jp/

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

 

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