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Tokyo IPO
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「企業は個人のものではなく株主のものである。 〜イーウェーヴ滝澤社長に聞く〜」
   東京IPO編集長 西堀 敬

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2月19日大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場したイーウェーヴ(3732)の滝澤社長にお話しをお伺いした。

滝澤社長は、日本電気エンジニアリング(現、NECフィールディング)でコンピュータシステムの保守業務をふり出しにして、松本計算センターに移り、システム開発の仕事に携わっていたが、その後、同社の事業開発本部にて全国展開のために新事業所作りを行った。事業所作りの仕事では、人の採用、仕事の確保(営業)、そしてシステム開発までを行い、現地ベースで事業所の責任者を見つけると次の事業所の立ち上げに行くといった具合だった。同社が店頭登録した後に退社し、その後、ラーメン屋を始めるにあたり、北海道から九州まで行脚し、松本にラーメン屋を開店するまで準備を進めているときに松本計算センターを辞めた仲間たちの新会社を立ち上げで社長就任を頼まれて、事業が軌道に乗るまでの2〜3年間くらいやるつもりで今の会社の経営を引き受けたのがイーウェーヴを始めたきっかけだそうだ。

当社は、IT分野のトータル・ソリューションプロバイダを目指している。具体的にはITを使って、顧客の課題を解決(ソリューション)できる企業として、顧客の視線でシステムを「いかに構築するか」ではなく、「いかに成果を出すか」を考え実現できる企業が勝ち残ると考えている。しかしながら一方の企業は、ITは企業の生産性向上や省力化に役立つのか?という疑問を常に持ちつづけている。その壁を打ち破るべく努力を続けてきたのが当社であるが、顧客へのソリューション提供をより高度にするために実行していることがあり、それは同社のコアコンピタンスでもある最新のIT技術を社内資源として保有することである。因みに、社員のIT関連資格取得状況は、情報処理技術者134名、UML、JAVA技術資格者154名、SAP認定技術資格者16名、オラクル認定資格者80名、マイクロソフト認定技術者34名、ロータス認定資格者17名というまれに見る技術陣で固められている。大企業と勝負をして勝っていくには、常に最新の技術を前面に押し出してビジネスを展開する必要があり、社員に資格取得のインセンティブを与えてでも技術にこだわる経営を推進している。

売上の内訳を見ると、同社が注力しているERP、WEB、ネットワーク、CRM、MBSの各種ソリューション事業は前期ベースでまだ43%強となっており、旧来型のホストコンピュータやサーバクライアント型のシステム開発と保守・運用および人材の派遣的なものが57%を占めている。会社によると、粗利率が高いソリューション事業を今期の売上で60%、その翌期は75%程度まで引き上げていきたいそうだ。そのための成長戦略として、次の3項目を挙げている。
@M&A:関西においては営業案件の確保、関東においては新しい技術と人材の確保を目的にしている。
A新しい技術の取得:大手企業に勝てるとしたら、我々のような中小企業でも取り組める新しい技術分野で先行するしかない。
B顧客は中堅中小企業を対象:年商50〜1,000億円程度で、情報化投資に年間3,000〜5,000万円程度支出する企業群がターゲット。社内の情報企画部門を持たない企業がほとんどで、いくつもの会社にいろんな事を頼むのではなく、当社ような企業にすべての託したいという希望もっている企業が多くある。

中期的な経営の目標について聞いてみた。まず定性的な側面は、会社は誰にでも開かれているべきで、男女、国籍、年齢に関係なく仕事ができる会社を目指す。次に定量化された目標としては、5年後に売上100億円、業界の利益率としては高水準である経常利益率10%超を目指していきたい。同社の経常利益率は前期ベースで5.4%であるが、今後はプログラミングのアウトソース化、EJBによるソフトウェア部品の組み合わせによりシステム開発を行うことにより開発期間の短縮と開発コストの低減を図る一方で社員は営業的なSEに特化していくことにより労働集約的な部分から脱却し、営業利益率を向上させていく戦略である。

最後に、今回の上場についてその目的と理由について尋ねてみた。まず、企業は個人の所有物ではないという考え方を松本計算センター時代に教わったそうだ。社会に開かれた会社にしなければいけない、同族経営では企業は発展しないことを前提に経営をやってきたので今回の上場はごく自然な成り行きの結果だったようだ。もちろん、上場の副次的効果として、社会的な認知度の向上により営業のやりやすさ、人材の確保、特に第2ステージの成長のために経営企画のできる人を採用したいそうだ。いままでは、どちらかと言えば、大きな枠組みは作るが、自由な経営を行ってきた。しかしながら今後はベンチャー企業から上場企業になり実行可能な計画を策定して実施していく必要があり、そのための人材確保にIPOは有効に機能すると考えている。また、株主の皆様には、中期的な視点でイーウェーヴを見て欲しい。とは言え、配当に関しては第三者の株主が入ってからずっと続けてきているので、皆様の大切なお金を預かっているという気持ちを持ちつづけて今後もかならず継続していきたいそうだ。

滝澤社長のお話しをお伺いして非常に気さくな人柄に触れたような気がした。
週末は、松本に帰り、田畑を耕すという、これから田植えの季節で忙しくなるらしい。また、仕事で移動時間が相当あるようだが、その間にかなりの読書をする、但しビジネス書は一切読まず文学書・歴史物などが多いようだ。お金儲けのために会社の社長を引き受けたのではないと言い切る滝澤社長を見るにつけ日本の新しい経営者像を見たような気がした。強烈なリーダーシップではなく、人格と人柄で組織と社員を引っ張ってきた滝澤社長が第二の成長ステージという上場後のイーウェーヴはどのように変化していくのであろうか。会社の根底にながれる最新の技術への飽くなき追求が続く限りは同社の経営は成長を続けるのではないだろうか。

イーウェーヴHP ⇒ http://www.ewave.co.jp/

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

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