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Tokyo IPO
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すべてはASP(Application Service Provider)から始まった
〜エム・ピー・テクノロジーズ 吉本社長に聞く〜
   東京IPO編集長 西堀 敬

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吉本社長は、ASPの日本での立ち上げにかかわる中で2000年にスコア・ドットコムを設立し、アプリケーションをネットワークを使って流通させるASP事業を始めた。当社のコア・テクノロジーはサーバベースドコンピューティングという、センターサーバでWindowsアプリケーションが動いたものの画面だけをクライエント端末で送り込んで、端末であたかも動いて見えるようにする仕掛けであった。極めて手軽にユーザがシエアしながら各種パッケージソフトを共有することができる。当時、ソフトバンクECと組んで新たなソフト流通として事業展開を行ったが、ソフトライセンスホルダーがASP向けに仕様変更するのにコストがかかり、ASPで使うのもパッケージで使うのも同じ価格もしくはASPのほうが、コストが高くついてしまった。ASPの仕組みができてもライセンスホルダーにその普及を阻まれたと言っても過言ではなかった。

当社は、当時のビジネスの延長線上で、事業のひとつとして、シトリックス社のミドルウェアMetaFrameを利用してSBCの構築、つまりシステム開発、導入支援、商品の提供、運用サポートをエンタープライズソリューション事業として行っている。こちらの事業は企業内ASPモデルの構築を支援する事業とも言える。特に大規模なユーザの場合、社員のパソコンを数百台から数千台管理することは容易でない。情報漏えいに対する絶対的な防止も可能な点でも、エンタープライズ企業からの引き合いは多い。

そして、今後注力していくべきブロードバンドソリューション事業もまさしくASP発想でのインフラ提供そのものである。ワンソース・マルチユースがブロードバンドの普及によって実現が可能になってきたわけだ。当事業は、主にブロードバンド回線を利用し、ユーザーが映画や音楽などのコンテンツをパソコンやSTB(Set Top Box)を介したTVで視聴できるシステムをVOD事業者へ提供している。VOD事業者にとって重要なことは、ユーザーの情報管理やマーケティングデータの収集をリアルタイムにしかもきめ細やかに行うことである。その部分を実現するのが、MBOS(MPT Back Office Series)と呼ぶ、当社が開発した総合管理ミドルウェアで、コンテンツ管理、サーバ管理、ユーザ管理、課金管理、ログ管理の機能を備えている。平たい言葉で説明すれば、MBOSとは、VOD事業者にとって商品棚管理を可能にするシステムで、誰が何時何を見ているかを管理することができる仕組みである。当社は、MBOSシステムに加えて、VOD(Video on Demand)システムそのものの基盤技術も保有する。VODシステムは、コンテンツをデジタル化してサーバに保存し、テレビからオン・デマンドで視聴を可能にするシステムだ。このシステムは、ホテル、マンションそしてKIOSKなどに導入されており、レオパレス、セレスティンホテル、ソニーミュージックが使っている音楽視聴キオスクなどで実用化されている。

ここまで、吉本社長の話と目論見書から同社の事業について書いてきたが、同社の事業規模は今期の予想ベースで売上14.5億円とまだまだ小規模である。同席された中角副社長によれば、この分野の技術は今日比較優位性があっても2〜3年後はどうなるかわからないと言う。ただ、VODの技術を保有する企業の名前は1990年代から同じで、その業界にインナーとして存在することの優位性が、まさしくドックイヤーで3ヶ月が1年に相当するスピードで進化している業界の中でも十分あるとのこと。競争は日本企業だけでなく、日本国内の案件でもグローバル事業者との競争になっているケースがほとんどだ。このことを裏返せば、同社が日本国内の案件で契約できれば、海外でも十分通用するだけの技術を保有することを意味していることになる。すでに多くの海外案件が持ち込まれているとのこと。別のメディアで、3年後の売上100億、経常利益25億円との報道があったが、当たらずとも遠からずの結果がでる可能性も否定できないのが当社のビジネスドメインである。

吉本社長に5年後の事業像を聞くと、中国、米国、ヨーロッパ市場へ進出し、ワールドワイドにビジネス展開する企業になりたい。うるさ型の日本の顧客で技術を磨いてそれを世界で展開し、将来は売上のうち8割を海外で実現したい。海外展開においては、競合がそのままパートナーになることもあり、商社などの代理店を置かずに技術パートナーを経由してダイレクトマーケティングで開拓していきたいそうだ。また、狩猟型から農耕型のビジネス展開も今後主力にしていくとのこと。

最後に、株主・投資家の皆様へのコメント。しばらくは右肩あがりの成長を持続したい。そのために、配当に関しては出せるときになれば実施したいが、会社を強くする為に、コアの技術に投資を行い、安定した経営を目指していきたい。また、先行投資とのバランスをとりながら、売上高経常利益率は20%を確保したい。

筆者のコメントとしては、正直なところ将来性・成長性については市場が発展途上であるだけにまったく未知数の分野であるが、ブロードバンドインフラの成長に連動するビジネスであると考えればその可能性については極めて高いとも思う。このような場合には、ブロードバンド関連ビジネスが成長する可能性に賭けてみたくなるのが投資家の本能ではないだろうか。

エム・ピー・テクノロジーズHP⇒ http://www.mptech.co.jp/

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

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