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Tokyo IPO
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投資の心構えと自己責任論
東京IPO編集長 西堀 敬

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イラクで人質になっていた日本人5人はすでに解放され事なきを得て本当によかった。筆者はこの事件が地政学的リスクを増大させるのではないかと本当に心配した。長引けば当然株式市場への影響は避けられない事態になっていたに違いない。確かに、先週に引き続き今日も下げ相場となった東京株式市場であるが、テクニカルな調整と物色対象のスイッチングによるものと考えたほうがいいだろう。 もちろん5月の連休前に各種のリスクを抑えたい投資家の売り物も出たとしても当然のことである。あまり、悲観的にならないほうがいい局面だ。

さて、イラクの人質事件が起こってからメディアで「自己責任」という言葉が流通するようになった。証券・金融の世界では投資する個人に対する警鐘として使われてきた言葉が世間一般の人々にも意識されるようになってきた。よく考えてみると、人間はすべて自己責任で日々の生活を送っているわけだ。ところが結果の内容によって、自己責任を免れることが可能な場合がある。今回のイラクにおける拉致人質事件は自己責任で入国もしくは滞在した個人のリスクを国が最後は引き受けたわけである。このような話は金融界において国内にいる我々の身の回りにも存在する。その最たるものがペイオフの延期ではなかろうか。個人がどこの金融機関を選んで預金をするかについては、国は国民に対して指示できないが、どこの金融機関であろうと全額預金を保護するルールを先延ばししたのである。
たぶん、年金についても同じではないだろうか?個人の責任の範疇を国が最後は請け負うという制度は他にもたくさんあるように思うが、読者の皆さんも思い当たる節があるのではないだろうか。

多くの読者が「自己責任」の文字を見て思い浮かべるのが、株式投資の世界であろう。国の政策ミスで日本経済が不況になり株価が下がっても国は個人に対しては責任をとってくれなかったのではないだろうか。企業とりわけ銀行への手の差し伸べ方は尋常ではないが、我々個人投資家に対しては何の救済もなかったように思う。このことは株式投資を行う個人については完全なる自己責任原則が存在すると言っても過言ではない。最近の個人投資家の株式投資は、インターネット証券経由の売買が80%を占める時代であるから、かなりの方が自らの判断で銘柄を選び注文を出す価格を決められていると思われる。しかしながら一部の方々は証券会社の営業マンに勧められるがままに売買しているのではないだろうか。(少なくともこのメルマガをお読みになっている方々は自己判断で売買されていると思うと信じているが・・・・・)

IPOの銘柄についても初値を買わされて高値掴みをした人が多くいるようだ。昨年の11月頃にIPOした銘柄は初値天井に近いものが多く、その後持ち続けられずに投げた方も多いだろう。今年に入ってからのIPO銘柄も初値騰落率は1銘柄を除いてすべてプラスである。初値騰落率の平均をとると100%近い、つまり公開価格のおおよそ2倍である。しかしながら、上場日以降の値動きを見てみるとあまりパフォーマンスが良くない銘柄が散見される。先日のIR会社説明会の基調講演でも述べたが、買う前にかならず売値を考えていただきたい。少し難しい言葉で表現すると、投資する企業のフェアバリューをよく考えて欲しい。初値の株価は妥当か?同業他社のPERに比べて高くないか?売上・利益は今後も成長を続けるのか?等々。

投資はすべて自己責任であるが、納得づくであればどのような結果になろうと自分の判断ミスであるから我慢ができるはずである。冷静で居られなくなるのは納得しないまま買ったり売ったりしたからではないだろうか。たとえ証券会社の営業マンに勧められて損をしたとしても最後は本人の納得の上で投資したとみなされるのが株式投資の世界である。イラクの人質事件のように他人が心配してくれることがない株式投資においては自己責任論の前に投資に対する心構えも必要ではないだろうか?



東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

 


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