夜の街を彩るイルミネーション、街角の大画面に写るダイナミックな動画、道路の交差点で目に入る鮮やかな信号機の色などを演出しているのがLED（発光ダイオード）とよばれるものである。このLEDを使った新しい光ビジネスを立ち上げ、6月8日にJASDAQに新規上場したシーシーエス（以下CCS）の米田社長にお話をお伺いした。同社の初値は130万円と公開価格32万円の4倍となり、セカンダリーマーケットでも堅調な動きとなっている。

CCSは1992年に米田社長の個人事業として立ち上げた会社で、正式には翌年の1993年10月にシーシーエス株式会社が設立されている。米田社長は、学生時代にはアインシュタインに憧れ物理学者を目指していたという。大学院を目指して勉強をしている時に、たまたま山登りの同好会に参加して働く人に触れたことをきっかけに、自立した生き方をしてみたいと考え始めるようになった。それからは、技術の世界でエジソンになることに思いは変わったそうだ。就職先を見つけるのに、いくつかのエレクトロニクスメーカーの社長宛に自分の特許を添付して手紙を出したそうだ。その結果、連絡が来たのは京セラの稲盛社長だけで、面接をしてもらって入社させてもらった。ところが3ヶ月間の鹿児島の国分工場勤めでその幕は降り、また京都に戻ってしまったそうだ。いまは、稲盛社長に対して、この事業を成功させてなんとかご恩返しをしたいという気持ちでいっぱいだそうだ。

その後、ダックエンジニアリングに入社し、画像処理の応用装置作り取り組んだ。ところが、ダックエンジニアリングが倒産してしまい、ワイエムステムズ、京伸技研を経て個人事業としてのシーシーエスを創業した。独立直後は画像処理装置を作って販売していたが、資金不足のうえに信用もなくなかなか買ってもらえなかった。そこで、まず会社を株式会社組織にするとともに、ビジネスモデルを変更して電子部品や食品などの製品ラインで製品の外観を検査する撮影機向けにLEDを使った照明器具を応用することに着目した。対象検査物の良品・不良品を見分ける際に、検査物がクリアに見えるようになれば、より認識率の精度が上がり歩留まりが向上するのである。また、LEDの特徴として、他の照明器具に多用されているハロゲンと比較して、値段は1.5倍と少し高めだが、明るさが2倍、寿命は30倍、消費電力で50分の１というメリットがある。

ビジネスを始めた当時は顧客のニーズを聞いて作るカスタム品が8割近かったが、今日では標準品が8割まで伸びてきた。しかしながら、当社の製品は少量多品種で現在300〜400種類くらいあって、注文は多いロットで50個、少ないと2〜5個くらいになる場合もある。製造の工程は、LED素子を外部から購入して実装の部分は外部委託し、最終組み立ては社内の30名の社員で行っている。
筆者は、製品の寿命が長いので、売上の伸びに懸念を感じたが、検査対象物が数ヶ月から１〜２年で入れ替わるので、照明器具もそれにあわせて替えなければならないという代替需要が発生する。従って、顧客の広がりも重要だが、一度顧客になると次から次へとオーダーが来る仕組みになっている。また、日本国内での競合会社については、ほとんどが売上規模の小さな企業で、すでに当社が市場シェアの６０％をとっているそうだ。

米田社長にお話をお伺いして、当社の成長性というよりも、LEDの使い道の多さには驚きである。LED素子の開発に関しては他社に任せるとして、当社はアプリケーションの世界で、まずは外観検査用照明器具で日本の一番になったわけである。　今後の展開に関しては、LEDの応用製品として工業用照明、農業、バイオ、医療の分野で市場開拓を行い数百億〜兆円単位のビジネスの可能性を示唆している。太陽光に代わるものとしてLED素子を使った付加価値製品の開発し、光の業界で世界企業を目指すそうだ。

常に顧客のニーズに基づくカスタムメイド製品を作りつづけることを信条としているCCSが次はどの産業においてLED照明の応用製品を作りだすのか大変楽しみである。

シーシーエス株式会社HP　⇒　http://www.ccs-inc.co.jp

東京IPO編集長　西堀敬　nishibori@tokyoipo.com