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「消費者のパワーを購買力につなげる
   〜ネットプライス(3328 マザ)佐藤社長に聞く〜」
東京IPO編集長 西堀 敬

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欲しいものを安く買いたい、という願望は誰にでもあるだろう。でも、お店でそんなことを言える勇気のある人はどれだけいるだろうか。大阪では買い物をするときはいつでもどこでも値切るのが習慣になっているらしいが、売り手と買い手が同じような気持ちでいるとは限らないのである。できるならば安く買いたい、できるだけ安く売ってあげたいという仕組みを構築したのが7月8日に東証マザーズに上場したネットプライスである。上場直前に佐藤社長にお時間をいただいてお話をお伺いした。

このビジネスを始めた佐藤社長は、実家が店舗を持って商売をしていたことに加えて、慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスに入学したときにインターネットに触れたことも手伝って学生時代から必ずイーコマース(EC)をやると強く信じ込んでいた。就職では、インターネットビジネスをやるためにソフトバンクに入社し、入社と同時にECのインフラを造るべくサイバーキャッシュに出向してインターネット上での決済の仕組みの構築を行っている。

その後、インターネットの特性を生かしたビジネス「インターネット的」ビジネスの創業を計画する。佐藤社長が「インターネット的」ビジネスと定義するのは、情報の検索・伝達メディアであるインターネットが進化するほど強くなれるビジネスである。具体的には、インターネットユーザーつまり個人が主役となる流通の仕組みの構築であり、参加ユーザーが多くなればなるほどその仕組みを提供している当社が影響力を行使できるビジネスモデルのことである。最初はオークションビジネスを考えたそうだが、Yahoo、楽天、Biddersがすで
に先行していたため、米国ですでに始まっていた共同購入のビジネスを始めた。

当社は、2000年3月よりインターネットユーザーによる共同購入方式であるギャザリングにより通信販売サイトを運営している。ギャザリングとは、商品の購入申し込み数量に応じて、販売価格を段階的に設定し、申し込み数量が設定数量に達した場合には販売価格が低下する販売モデルである。事業開始時は2週間程度でサイトを構築し、サムソンの電子レンジと子供用マウンテンバイクの2点を扱い、値段が2万円程度のも9800円でそれぞれ50台ずつ販売し、このビジネスの成功を確信したそうだ。

現在では、毎週、厳選した400点程度の商品を、原則として1週間の販売期間中にギャザリングを行う仕組を提供している。ビジネスモデルとしては、受注を先行させて数量が確定した後にメーカーや卸問屋に発注するために通常は在庫が発生しない。また、決済もクレジットカードや宅配会社の代金引換決済などの使うため売掛金の回転期間は1ヶ月程度でありキャッシュフローもポジティブとなっている。

当社の特徴は、販売のチャネルとして携帯電話を媒体としたモバイルコマース事業が売上の6割を占めている点である。モバイルがギャザリングに向いている理由として、表現が制限された環境の中で、絞り込んだ商品提案をするところにある。また、顧客層を見ると25−35歳の女性が多く、欲しいものを少しでも格安に買いたい日本人女性の感性に訴求するリコメンデーションを実践しているともいえる。当社が常に心がけていることは、常に買い手の立場の視点・目線で選別し、また商品を説明するところが強みであるように思える。

小売業としての当社を分析すると、商品粗利は前期の33%から今中間期は35%へと上昇している。佐藤社長は、仕入力がついてきたので今後まだ2〜3%の改善余地はあり、目標として35%〜40%程度で推移させたいが、それ以上は顧客に還元し価格に反映していきたいとのことだ。前期の売上高経常利益率は7.1%、今中間期は8.1%となっており年々上昇している。すでにスケールメリットを享受できる規模まで成長してきていると言える。

消費者のパワーを購買力につなげる仕組みは、従来型の川上であるメーカーが市場を開拓する仕組みとまったく異なった流通のあり方に変えようとしている。ネットプライスの成長性はまさに消費者がその鍵を握っていると言えよう。佐藤社長のお話をお伺いする前は、ニッチな顧客層で成り立つ仕組みかと思ったが、消費者を味方につけた当社のビジネスモデルは意外と小売業の世界を一 変させる可能性を秘めている。目指せ1000億円の掛け声の実現もそう遠い話ではなさそうな予感がしてきた。

ネットプライスHP → http://www.netprice.co.jp/

東京IPO編集長 西堀敬 nishibori@tokyoipo.com

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