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日本の医薬品を世界に広げる〜メディシノバ(4875大証HC)清泉社長に聞く〜
東京IPO編集長 西堀敬


メディシノバインク 代表取締役社長 清泉貴志氏

2005年のIPOが先週から始まり、すでに8社が上場した。2月10日上場初日に値つかずだったデジタルスケープは上場二日目の今日も、147万円(公募価格29万円に対し、5倍の水準)で値がつかないまま取引を終えた。その他7銘柄の初値騰落率平均も公募価格に対し2倍と、1ヶ月以上にわたりIPOがなく、たまっていたマグマが一気に吹き出たような感じだ。

今年第一号のIPO銘柄となったのは米国の創薬ベンチャー企業のメディシノバ・インクである。先週の火曜日に上場し、初値騰落率は1.5%、その後の株価は少し冴えない展開となっている。昨年上場した新華ファイナンスもそうであったが、外国株式ということで取り扱えない証券会社や注文を出す前に書類を求められるケースがあり、アンラッキーなところもあった。年始からバイオ関連銘柄への見直し買いが入っており、今後の展開には期待したい。

メディシノバの事業を説明する前に、先ず清泉社長についてご紹介しておこう。

1981年に慶應義塾大学医学部を卒業し、ハーバード大学外科リサーチフェローを経て89年まで同大学医学部形成外科の専任講師として勤務。日米の医師免許を持つ。

その後に経営の面で医療に貢献できないかと思い立ち、米国のMBAコースの道を歩むことにした。米国に行くと当時はバイオテクノロジー(バイオベンチャー)がブームであったことから、MIT(マサチューセッツ工科大学)のスローン経営大学院にてMBAを取得後、ボストンにおいてバイオベンチャー2社の経営に携わった(2社ともにNASDAQ株式市場においてIPOしている)。2000年に日本の田辺製薬の米国研究所(タナベ・リサーチ・ラボラトリーズUSAインク)の社長に招かれた。 現会長の岩城裕一(南カリフォルニア大学教授)とともにメディシノバ社を創立し、田辺製薬は1000万ドルを出資した。清泉氏は最初の2年間は両社の社長を兼務していたが、田辺製薬がタナベ・リサーチ・ラボラトリーズUSAインクにおいて自社研究に特化することを決めたので、退任しメディシノバに専任することとなった。

当社の事業であるが、「まだ十分に有効な治療法がない疾患の治療薬を開発し、販売を行うことについて、先駆的役割を担うことを目標にしております。」と目論見書に記載がある。では具体的に何をやっているのか?ということであるが、すこし丁寧に説明をしていきたい。

製薬会社は、医薬品の研究開発を自ら最初から最後まで行うのではなく、部分的に研究開発段階をアウトソースする方法において医薬品の承認を受けるケースが多い。前臨床と呼ばれる動物への実験投与段階前後から製品化するプロセス、そして販売までもライセンスアウトしてロイヤリティ収入だけを獲得する場合もありうる。

当社は、このような医薬品開発案件を二つのビジネスモデルに分けて取り組んでいる。

ひとつは、「戦略的重点領域プログラム」と呼んでいる。こちらのプログラムでは、泌尿器科および産婦人科の市場に注力した製品に取り組んでいる。これらの製品候補群は、米国では比較的ニッチとされている分野であるが、米国市場におけるニッチ製品の売上げは数百億円の規模に達するケースも少なくない。ビジネスモデルとしては、医薬品の市場性を評価し、製薬会社から薬品候補(化合物)を獲得し、臨床開発および薬事申請へ製品を移行させ、米国において医薬品としての承認を得て、独自に市場でマーケティングし販売することにある。ニッチ市場の製品開発投資額は、一般的にフェーズ1で年間1−2億円、フェーズ2で年間7−8億円は必要で、ひとつの薬品が出来上がるまでに20−30億円程度が必要な投資額となるそうだ。時間軸でみれば、フェーズ2のものでもキャシュフローを生み出すまで3−4年程度は必要と考えられる。

もうひとつのビジネスモデルは、「提携プログラム」と呼ばれている。こちらは、フェーズ1、フェーズ2までを当社が実施し、提携先の製薬会社などが相当の興味をもった段階でライセンス供与を行い、製品化される前に数十億円の収益を獲得するモデルである。このプログラムで取り扱う製品群は非常に市場規模の大きな分野の薬品で、競合とする既存品製品売上が1,000億円規模以上のものを対象としている。こちらは「戦略的重点領域プログラム」に比べると、提携による契約一時金を含め、比較的短い期間(と言っても数年)で収益化することができるため、二つのプログラムをミックスして事業リスクの低減を行っている。製品群としては、現在、気管支喘息や神経疾患などの分野の製品に取り組んでいる。

また、米国においてこの事業を推進するメリットは、臨床試験の制度において日本は非常に遅れている事に加えて、海外で承認された薬品の使用データを使って日本国内で申請したほうが比較的短期間のうちに承認を受けやすいということがあげられる。従って、日本の製薬会社は研究開発した製品候補をまずは海外で製品化した後に国内に持ち込むという仕組みを利用するところも出てきている。

清泉社長の事業に掛ける意気込みは、「日本の医薬品を世界に広げることを実現する」ことにあるそうだ。会社の経営は、バスケットボールのプレーヤーのように全員が常に動き回り、チャンスがあれば誰でも、いつでもシュートするというような組織のあり方で、社長がIPOで米国を不在にしていても、他のプレーヤーが動くことによってパイプラインの遅れが全くでないようなチームになっている。現に社員数は20名程度で少数精鋭の経営を実行中である。

株主へのメッセージとしてはしばらくの間はバネばかりのように大きく上下に株価も振れるだろうがいくつの製品がでてくると落ち着いてくるので、それまでじっくりと見ていてほしい。

今年に入って、昨年上場した日本のバイオベンチャー企業の株価が見直されてきているが、まだまだ発展途上にある企業が多く、どの企業も目を離せない状況にあるといえる。バイオ関連の事業はわかりにくさもあり、IR活動にも積極的でない会社も見受けられるが、メディシノバの清泉社長は、市場から集めた資金で事業運営するのだから、IRは非常に重要と位置付けている。日本人医師でありながら米国流の経営を学んだ清泉社長に、本場米国のバイオベンチャー企業のあり方を日本の投資家にもご披露いただくことを期待している。

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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