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本物の企業IRを考えるシリーズ
    〜個人投資家にとっての企業IR〜 その2(全12回)
   株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎
   (証券アナリスト・IRコンサルタント)
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読者の皆さんは、企業IRの原点をご存知だろうか。私は、IRを研究してかれこれ13年になるが、私とIRの出会いは、まさに衝撃的なものであった。もうかれこれ16年も前の話になるが、IRという言葉に出会うちょうど数年前、私は日本勧業角丸証券(現みずほインベスターズ証券)という準大手証券の事業法人部に所属していた。当時の事業法人部は、花形でピーク時には会社の経常利益の8割を叩き出すほどの兵がそろう部署であった。私は、この部署に3年間所属していたのだが、まさにその時期は、日本のバブル真っ盛りの時。その頃のトップ法人マンは、1日で3000万円程の手数料を当たり前のように稼いでいたのだから、冷静に考えれば今でも全く一体どうなっていたのかと思う。

少し、余談になるが、当時の事業法人部での活動は、私にその後の企業IRの重要性を気付かせるのに大切な時期であったとつくづく思う。私は、入社2年目で事業法人部に配属されたから、当時の主役は、今の私と同じくらいの年齢の先輩方が中心であった。今でも忘れない出来事がある。私は、入社1年目は、大阪営業部で個人営業を中心に行い、その後すぐに事業法人部に転属となった。当時の本社は、東京丸の内北口の前に聳え立つ丸の内センタービルディングで、その6Fに足を踏み入れたとき、その広さと異様な活気に圧倒されたのを鮮明に覚えている。当時、同期入社で、事業法人部門に配属されたのは私を入れて4名であった。その4人を当時の事業法人部副部長であった常務が別室に呼び、私たちに声をかけた第一声がこれである。

「君たちは選ばれた人間だ」。まだ、入社2年目である。ついこの間まで大学生であったのだ。日本の中枢の金融街で、いきなり会社の経営幹部からこの言葉を浴びせられたたら、どんな人間だって勘違いも含めて舞い上がってしまうだろう。ちなみに当時の会社の従業員数は、6000人を超えていた。私と同じ大卒同期入社は、200人強だったから、選ばれたのは実に50人に1人の確率となる。その時の私たちの気持ちの高ぶりがわかって頂けると思う。さらにショッキングな事が続く。当時、事業法人部は、4部まであって、私は第三事業法人部に配属となったのだが、その時の先輩方がまた凄かった。少し、説明が遅れたが証券会社の事業法人部という部署は、いわゆる上場企業を顧客として、渉外活動を実施する部隊であり、その守備範囲は実に広い。最終目的は、無論、幹事指名や運用手数料収入による利潤追求が目的であるが、その獲得に至るまでの手段は、ファイナンスの提案はもとより、資金運用アドバイスから、株主総会対策、営業協力、役員・オーナー個人の相続対策、冠婚葬祭、ご子息の就職の世話まで、まさに何でもやってのける部隊なのである。

配属当時、証券会社の事業法人部が何たるかも知らない私は、先輩に対しこう質問した。「事業法人部って何をするのですか」。先輩は、その質問にまともに答えず、黙って今から行くところに着いて来いという。丸の内センタービル前からタクシーに飛び乗り、首都高速を抜けて着いた先は、池袋のサンシャインビル60。当時、新興財閥として名を馳せていたセゾングループが結集していた高層ビルディングである。その一角にあるセゾングループのグループ中枢金融会社、そこが当部の上客であったのだ。ちなみに私がいた日本勧業角丸証券は、第一勧業銀行系列で、セゾングループとはことのほか仲が良かった。当時の先輩が扱っていた運用資金額は、その金融会社1社だけで数十億円にも上る規模であったのである。

サンシャインビル60にある役員応接室へと通された私と先輩。やがて金融会社の役員が、やや顔を紅潮させて入ってきた。開口一番、その役員は言った。「いや〜、良かったよ」。すると先輩が、「でしょ。あの子は間違いないんです」。どうやら接待の女性の話をしているらしい。「運用成績、お宅が一番だったよ。これからも宜しく頼むよ」。「じゃ、引き続き宜しくお願いします」。新人である私の紹介もほどほどに面談は10分ほどで終わった。帰社するタクシーの中で、その先輩は、私にこう言った。「金田。これが事法(事業法人部のこと)だ」。当時の私は、何が何だか分からず、ただ今までやってきた個人営業とは全く違う異質な、また日本経済の光と影を同時に見たような気がして、ただただその勢いに圧倒され呆然としていたのである。

株式会社KCR総研 代表取締役 金田洋次郎
(証券アナリスト・IRコンサルタント)

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