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コーヒー、シュークリーム、その次は?〜21LADY(3346名証セントレックス)広野社長に聞く〜
東京IPO編集長 西堀敬


21LADY株式会社 代表取締役社長 広野道子氏

読者の皆さんも日頃から良く通われているコーヒーショップに「カフェドクリエ」「タリーズコーヒー」などのチェーン店があろう。また、帰宅途中にふと目に付いて奥様や子供達へのお土産にちょっと買って帰るのに便利なシュークリームショップの「ヒロタ」「シューファクトリー」などをご存知な方も多いだろうと推察する。過去形か現在進行形かの別はあるが、これらのお店の経営に深く携わっているのが昨年10月28日に名証セントレックス市場に上場した21LADYの広野社長である。

当社は上場時の目論見書を読む限りにおいては、「洋菓子店HIROTAの運営を行うヒロタ事業を中核とし、・・・1アイテムのシュークリームショップ「CHOUFACTORY」の運営を行うシューファクトリー事業」と併せて売上のほぼ全てをシュークリーム・シューアイスの製造・販売で計上している。 上場日以降の株価の推移を見ていると、地合の悪い時にIPOしたことに加えて、主幹事を取り巻く厳しい環境もあり、株式市場はただのシュークリーム会社の上場と見たようだ。

筆者の見方も、上場時においては市場の見方とさほど変わりはなかったのだが、先日、広野社長にお会いして大きく見方が変わった。まず、広野社長の経歴であるが、外食のチェーンストア運営においては秀でたノウハウを保有するベンチャーリンクを振り出しとして、ポッカコーポレーションとプラザクリエイトのジョイントベンチャーである「カフェドクリエ」の設立から立上げ全般を役員として手掛けて3年間で100店舗まで増やした実績に加えて、三井物産のベンチャーキャピタルMVCの副社長として創業間もない「タリーズコーヒー」の出店から店舗パッケージ構築を手掛けた実績も持っている。つまり、広野社長はこの分野においては相当の経験の持ち主であり、無から有を創りだすことの難しさを実体験している人物であることを理解しておく必要がある。

当社の事業に関する説明としてHPにはブランド価値のある企業の再生によるライフスタイル産業の創造」とあるが、最近の個人投資家向け説明会の資料では「ライフスタイル産業における投資育成事業」とある。※「ライフスタイル産業とは外食・中食・小売り・サービス等、消費者の衣食住職遊学に豊かさを提供する生活産業チェーンストア」 つまり事業としてはまずは投資がありきなのである。投資をした事業をいかに成長させ、そして企業価値を高めて行くのかが21LADYのチャレンジなのである。

ではどのような投資を行っていくのか?ということであるが、ヒロタの例を見ると非常にわかり易い。ゼロからの立上げではなく、老舗でブランドも保有しており長年オーナー企業として経営されてきた企業が対象となる。通常長い歴史のある企業は成熟産業に多く、業界内上位3社程度しか生き延びられないのが常である。ヒロタのようにオーナー企業となれば会社の中は公私混同や経営の非効率性が高く、経営の透明性を高めるだけで利益の出る体質に転換を図ることができるそうだ。具体的にはこれまで社内で公にされていなかった経営情報を現場に落とし込み利益神経を植え付けるだけで飛躍的な改善が図れると言う。経営効率を高めた後にスケールメリットを得られるような拡大戦略をとって市場シェアを確保していくのである。

投資の基本は長期保有による企業価値の増大であり、外資のプライベートエクイティのように短期のキャピタルゲインを狙わずに、米国の投資家バフェットの運営する投資会社バークシャー・ハザウェイのような長期保有を通して、企業価値を高めていく手法をとる。今後はライフスタイル産業に位置する事業を5年間で10ブランドまで展開し、時価総額で5年後に500億円の企業価値実現を目指すそうだ。また、グループの売上を1,000億にしていくことを目標としている。

日本でも事業会社が投資会社に衣替えしてインベストメントバンクと称している会社がいくつか出てきている。株式支配を通して経営に影響力を持つことにより経営体質の改善を行おうとしても、その限界は必ず存在するものである。虎穴に入らずんば、虎子を得ず、というのが広野社長の投資育成の基本であり、ブランド価値を毀損した日本企業の再生を手掛ける本物の価値創造経営者になれる人物であるかもしれない。

最後に、上場会社で投資事業を主たるビジネスにしている企業の売上・経常利益を当社の数値を比較した上で時価総額を見てみるとおもしろい結果が導き出されるのではないだろうか。

21LADYホームページ:http://www.21lady.com/

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