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日本の美術品流通の仕組みを築く
    〜シンワアートオークション(大証H 2437 / 4月5日上場)倉田社長に聞く〜
東京IPO編集長 西堀敬


シンワアートオークション株式会社 代表取締役社長 倉田陽一郎氏

オークションと言えば、Yahoo!や楽天などのネットオークションをイメージされる方が多いのではないだろうか。日常生活の中で不要になったものを処分したり、セカンドハンドで良質の物を探すのには確かにネットオークションが便利であり、それなりの市民権を得たと言える。では、学校の美術の教科書に出てくるような絵画の売買はどのようにして行われているのであろうか。バブル全盛時の1990年頃に日本の生命保険会社がゴッホの「ひまわり」という作品を大金(数十億円だったか、百億円近かったのかすでに筆者には記憶が無い)で購入したという話があったが、庶民には縁のない世界でどのようにしてそのような大金を叩く結果になるのかただただ不思議であったことだけが記憶にある。今回は日本における美術品など高額品オークション業界のパイオニアとも呼べるシンワアートオークションの倉田社長に同社の事業についてお話をお伺いした。

当社は、1989年に5名の画商による出資によって株式会社親和会という社名で誕生した。設立背景としては、当時、日本には会場で開催するオークションというものが存在せず、美術品がオープンに流通する場がなかったことがあった。2001年6月に倉田社長が就任されて、株主である画商と経営の分離を行い、現在の経営形態となった。倉田社長によると、画商の役割は作家を育成して世にデビューさせる証券界でいうところのプライマリー市場、オークション会社の役割は二次流通を担うセカンダリー市場だそうだ。従って、作家の作品を高く売りたい画商と公平で透明性の高い市場を運営するオークション会社はある意味においては対極の存在と言えなくもない。

当社の事業内容であるが、文字通り物理的な会場を使った「オークション」の企画・運営会社である。但し、扱う品物がネットオークションとは桁違いで数万円のものから数億円までの近代日本画や陶芸品が中心となっている。取扱額の7割を占める近代美術品のオークションでは1点当たりの平均落札額は500万円を越えており、業界でも抜きん出た水準となっている。

当社のビジネスモデルで収益となるのは、落札者および出品者から支払われる手数料である。落札者は落札額100万円までの部分に対して15.75%、100万円を超える部分について10.5%を支払う。一方の出品者は落札額の10.5%を支払う仕組みとなっている。例えば、落札額が150万円の場合、落札者は21万円、出品者は15.75万円を当社に支払い、合計で367,500円が当社の税込みの売上となる。当社の手数料率は独自に設定されており、同業他社の水準はわからないそうだが、世界的に有名なオークション会社であるサザビーズやクリスティーズは1000万円までの料率が19.75%と当社よりも高く設定されている。つまり信用が高ければ手数料率は問題にならないとも言える。

しかしながら、素人考えでは手数料率が低いほうに流れるのではないかと思われるが、日本国内で業界第2位の会社の平均落札額は20万円程度とオークション参加者の懐具合に大きな違いがある。当社の強みとなっているのはキャッシュリッチな富裕層のネットワーク化が出来ていることである。オークション市場の登場により、美術品の流動性が高まり換金が容易になったことから富裕層の資産運用ポートフォリオの中に美術品が組み込まれるようになってきたことが追い風となっている。

次に気になるのが出品される美術品の品質と価格である。出品物はすべて権威のある第三者による鑑定が前提となっており、鑑定の無いものは取り扱わないか、鑑定を取ってからの取扱となる。また、出品物の査定は、当社役員職員、アドバイザリーボード(5名の創業画商)、社外の専門家により構成される査定委員会で現物を吟味して落札予想価格帯を決めている。その結果、通常は出品された美術品の85%は落札され、おおかたの出品物は最低落札価格の1.3倍以上で落札されている。

最後に当社の株主価値創造であるが、売上総利益率、営業利益率ともに徐々に上がってきている。今期の上半期は営業利益率が30%を越す水準となっており、かなりレバレッジに効いたビジネス展開が出来るようになってきたとみえる。会社としては、売上15%、経常利益25%の年率成長に加えて資本効率についてはROE15%以上の維持を経営の目標としている。配当については、配当性向の目標を30〜50%として、今期は一株1万円をベースに業績連動分を上乗せしていきたい意向だ。

日本のオークション市場の規模は大手8社の集計で2004年が150億円程度である。前年比で1.5倍と成長しているとは言え、高額な美術品はいまだにニューヨークやロンドンのオークション会場に持ち込まれているのが現実である。世界でも最大手のサザビーズの年間落札金額は2800億円と、日本における大手8社合計の約20倍の規模である。日本のオークションはまだ始まって15年、サザビーズやクリスティーズは300年の歴史を持ち、この差はそのまま信用の差となっている。地道に実績を積み上げて行き、サザビーズやクリスティーズとの距離を親と子供の差から米国における大リーガーと3Aの差くらいまでに縮めていきたい、と倉田社長は語る。

日本にある美術品が海を渡って海外に流出するのではなくて、世界第2位の経済大国が美術・芸術においても世界にキャッチアップできる日が来るとしたら、シンワアートオークションも世界で指折りのオークション会社になっているのではないだろうか。

シンワアートオークションホームページ:http://www.shinwa-art.com/

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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