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編集長のジャストフィーリング 〜やはりこの問題に一言触れておきたい(最終回)〜
東京IPO編集長 西堀敬

2月8日の寄り前に始まったライブドアのニッポン放送買収劇は先月あっけなく幕を閉じた。先日ある上場会社の社長と会食をした折に、「今回の騒動の勝者はどちらなのでしょうか? やはり最終的にお金を得た堀江さんなのでしょうか?」と聞かれて、答えに窮してしまった。いつもならば自分の感覚で即座に軍配を上げる性格の私も今回ばかりは・・・・となってしまった。それはあまりにも問題提起が大きすぎて、判断する視点が多すぎるためである。

筆者が脳裏に残っているキーワードを並べてみると、

・市場での株式購入のあり方

・敵対的買収非買収会社の守り方

・株式保有比率による商法上の議決権

・放送法の縛りによる外人持ち株比率

・電波という利権

・放送とインターネットの融合

・企業価値

・親子上場

・MPO

・投資銀行

等々が議論のテーブルに置かれた。

この中でも私の興味を引き付けたのは、放送法による外人持ち株比率の上限規制の問題である。実際に株式を保有していても放送法の関係で名義書換していない外国人投資家がいたはずである。そのために名義が表に出ていない外国人保有の株式が大量にライブドアの手に渡ったと考えられはしないだろうか。きっと同様のことが上場しているテレビ局すべてに起こっていると考えるのが妥当である。西武鉄道が上場廃止になったいきさつを考えれば実質株主調査を行ってもいいのではないだろうか。上場廃止基準が当てはまるテレビ局がでて来ないとも限らないだろう。

このように実質株主をあえて特定しなくても問題とならないような企業が上場し続ける仕組みなっていることがそもそもおかしいのではないだろうか。それはいまだにテレビ局というものは国の庇護のもとで簡単には新規参入が出来ないように電波を割り振る権利を政府が握っているからにほかならないと筆者は考える。そこに利権があるなら本来はもっと株価が高いはずであるが、特殊な株主構成を許す制度があるがために企業の経営者は価値創造に励まず市場参加者も株価を安く放置してきたわけだ。その盲点をついてきたのが村上ファンドであり、最後の一刺しをライブドアが行ったわけである。

となると今回の戦いは、ライブドアVSフジテレビではなくて、株式市場と放送行政を司る霞ヶ関の戦いであったともいえよう。言葉を変えると資本市場の規制をベースにした事業を営むものへの挑戦であった。固有名詞を外して考えれば、規制本位事業者は資本市場に負けたといってもいいだろう。なんだかんだと言ってもフジテレビの出費は2,593億円そのうちライブドアに1,473億円が支払われる。規制事業継続のためのコストと考えればそれだけの価値があったのかもしれないが、テレビ局やラジオ局は広告収入で成り立っているビジネスであることを考えれば、そのベースとなっている媒体価値そのものの議論がほとんどなかったように思える。最近のインターネットを使った広告はアフリエイトなどの費用対効果を計測できるものが多くなってきている。いつまでも計測不能(でもないかもしれないが)の広告で食っていける時代が長続きするとも限らないと考えられる。とするならば、テレビ局やラジオ局はビジネスモデルを変えなければ事業の優位性を維持し続けるのは難しいはずだ。

今回の一件は、ベンチャー企業の経営者が、規制のないところで成り立つビジネスで成長し、規制が想像しえなかった仕組みを使って利権ビジネスに戦いを挑んだと筆者は見ている。まさに世の中は変わろうとしており、蟻の一穴になるような気がしてならない。

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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