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流動化ビジネスはまだまだ続く
    〜フィンテック グローバル(8789東M 6月8日上場)玉井社長に聞く
東京IPO編集長 西堀敬


フィンテック グローバル株式会社 代表取締役社長 玉井信光氏

「流動化」この言葉の持つ意味には、さまざまな思いを持つ人がいるのではないだろうか。2000年に入って大手の企業は資産デフレで痛んだバランスシートを正常化させるために自らが保有する不動産をファンドに売却してきた。減損会計の先取りで含み損の確定、ROAを高めるための資産圧縮、売掛金の現金化などで各社各様に取り組んできたのではないだろうか。資産を保有する立場の企業からすれば、資産の「流動化」という言葉が適切かもしれないが、立場を変えれば、流動化とは証券化であり、その先には投資家の存在がある。

今日ご紹介するのは、6月8日に東証マザーズに上場したフィンテックグローバル社である。

当社の玉井社長は大学を卒業した後にオリエント・リース(現オリックス)に入社し、営業の現場としては一番厳しい大阪でリースビジネスに携わった。リース営業の中で扱った航空機リースでストラクチャード・ファイナンスや保険節税などの分野に興味を覚え、入社数年後には独立を志向して仲間と週末を使って新しい事業モデルの構築案を練っていたそうだ。1994年に独立し現在のフィンテックグローバルを東京の銀座で立ち上げた。

まず当社の顧客価値創造(お客様に提供するサービスとその対価を得る手法)について聞いてみた。目論見書を読むと投資銀行業務と信用補完業務に分けられている。投資銀行業務においては、アレンジメント業務とプリンシパルファイナンス業務とがある。投資銀行業務とは何か?と考えていくと非常に厄介になる。銀行でもないのに投資銀行なんて・・・と考える方もいるかもしれないが、目論見書にも説明があるので興味のある方は読んでいただきたい。

少し噛み砕いて説明すると、当社の主な収入源となっている投資銀行業務の中のアレンジメント業務とは、資産流動化等のストラクチャード・ファイナンス案件を実行するための「仕組み」策定や投資家他のプロジェクト参加者の招聘ならびに意見調整、法的・会計的・税務的な視点からの検証等案件を具体化し組成していく業務と目論見書に書かれてある。要約すると、資産を流動化するに際して必要な関係者を集い、案件を纏め上げるノウハウを提供することである。この流動化の対象としては、「金銭債権」や「不動産」がある。それぞれの仕組みの組成手数料は、金銭債権については流動化総額の○○%、不動産については1件当り数千万円〜となっており、すべてが案件実行時に支払われる成功報酬となっている。

アレンジメント業務の中でも当社の得意な分野は、不動産の「開発型証券化」である。今日の不動産事業の流行は、土地を押え、建物を建てるプランを立てた段階で、金融リスクと価格変動リスクを完成時まで待たないでで出口(売却)を押えるというモデルである。当社の提供する仕組みは、建物が完成するまでできるだけ出口(売却)を付けないで高いリターンを得られるようにスキームを組成していくことにある。この背景には、不動産の1次取得者がREITなどへの転売によって儲けており、この値ザヤまでもオリジナルの開発業者が得られるような仕組みを提供するところに当社の価値創造があると言えよう。

筆者の事務所のある赤坂見附界隈でもビルの所有者がファンドらしく所有者の名前が変わるたびに看板が取り替えられているのを目にすることがある。このような不動産の転売ビジネスを見ているとそろそろ不動産ファンド事業も山場を迎えたのではないかと思われる。

ところが、玉井社長は、土地を買って建てて売る、立ったものを転売する、この二つの事業はすでに成熟してきているが、当社のような仕組みの提供を受けている不動産事業者にとってはまだまだバブルではないと言い切る。

今後の不動産業のあり方は、土地や建物を保有するようなリスクを取っていくことではなく、アセットマネジメント事業者になっていくことであり、そのお手伝いをするのが当社の役目だと玉井社長は言う。IPOにて調達した資金をベースに銀行からコミットメントラインを引き、ファイナンス業務にも力を入れていく計画だ。当面の間は、無配とし内部留保に務め、事業価値の向上により株主還元に注力する方針だそうだ。

不動産業者に限らず、持たざる経営が進んでいく今日において、事業法人においてもバランスシートの圧縮や資産の流動化は避けて通れない時代となってきた。10年以上にわたり当社が蓄積してきた高度なストラクチャード・ファイナンス技術に加えて、IPOにより資金力をつけた当社が大きく成長できる舞台が整ってきたのではないだろうか。

フィンテック グローバルのホームページ
http://www.fgi.co.jp/

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