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ホテルの空間は賞味期限1日の商品
〜一休(2450東証M / 8月3日上場)森社長に聞く
東京IPO編集長 西堀敬


株式会社一休 代表取締役社長 森 正文 氏

リゾートホテルの料金表をインターネットで見ていると、季節や曜日によって同じ部屋でも大きく利用料金が異なる。確かにホテルの料金はその日その日によって違ってもおかしくないはずである。なぜなら、部屋という空間は在庫しておいて、後日販売することができない、つまり賞味期限1日商品であり、割引してでも売り切らなければ廃棄処分したことに等しいわけだ。

そんなホテルにソリューションを提供してくれるのがインターネットというツールである。ポータルサイトのYahoo!や楽天でもトラベルは人気のコンテンツで、読者の方も泊まりで出かけるときはご利用されているのではないだろうか。今日は、高級ホテルや旅館に対象を絞った宿泊予約サイト「一休.com」を運営している株式会社一休(いっきゅう)の森社長にお話をお伺いした。

まず、森社長が現在のビジネスを始めるに至った経緯からお話を伺った。

大学卒業後に入社した日本生命に勤務している30歳の時に、C型肝炎を患い、1ヶ月の入院を経て、その後4年間の通院生活が続いたそうだ。その間、少し体も弱り気力も落ち込んでいるときに、「人間の時間は有限で、気力も体力も充実して仕事ができるのは30才中頃から50才までくらい」と考え、自己実現をするべく独立の道を選んだ。

98年5月に日本生命を退社し、直後の98年7月には株式会社プライムリンクを1,500万円の資本金で設立した。ところが、売るものもなく、訪ねる先もなく、また訪ねて来てくる人もいなくて、日々現金が減って行く中で、あと何日で資金が尽きるかを計算する日が続いた。

会社設立後半年が過ぎた頃、某財閥系企業の元会長のお別れ会に招かれて、財界の蒼々たる面々を見ているうちに、この人たちが今この時点に会社にいなくても組織として会社は売上を計上して利益を出しているのだと感じた。そして会社は信用や信頼感というブランドがないとダメだと痛感し、ブランド構築することが成功の秘訣であると改めて感じたそうだ。

99年の初冬、米国のインターネットビジネスの成功例を研究し、オークションのE-Bayを見て99年の秋にオークションサイトを立ち上げた。しかしながら、Yahoo!やオークション専業サイトも徐々に立ち上がってきており苦戦を強いられた。

そんな時ふと思いついたのが、日本生命時代にニューヨークの金融機関に出向していた頃、社員の出張用のホテルを予約していたときに日によって部屋代が違ったことだった。

すぐさまその足でセンチュリーハイアット東京に向かい、交渉してスイートルームをオークションに出してもらったことが今日の一休.comの原形となった。

その後、高級ホテルや旅館を開拓し、現在の契約施設数はホテルが509件、旅館が201件まで増えてきた。一休.com利用者の状況を簡単にまとめると、2005年3月で、予約単価は平均で2万1千円〜2万2千円、登録会員数は79万人、2年に一度利用する会員をアクティブユーザーと定義するとアクティブユーザー数は約40万人、ホテル・旅館からいただく手数料は7〜8%となっている。 

ビジネスモデルは上述のとおり非常にシンプルであり、前提条件どおりに四則演算すれば売上予測をすることができる。一休.comが今後成長するためには、契約施設数を増やすことと、利用者数を増やすことに尽きる。潜在的な契約施設数は、現状プラスでホテルで50件、旅館で100〜200件と森社長は見ている。利用者の増加は、今回のIPOで認知度が高まりアクティブユーザーの伸びが期待できる。また、会員の伸び数に関しては、昨年1年間で約30万人増えており、来年の3月末には110万人を目標としている。

都内の高級ホテルの予約をルート別に見ると、一休.com経由のシェアがここ数年で大きく伸びているが、当社のシェアはまだ5%程度である。森社長の目標としては予約シェアを20%程度まで伸ばし、取扱件数を現在の5倍にすることは十分可能であると見ている。

筆者も大阪、名古屋への出張では一休.comにてホテルを予約させていただいている。読者の皆様も是非ご利用いただきたい。株価は公募価格から大きく乖離しない水準となっているが、ここでもユーザーを株主に迎えたいという森社長の意図が表れている。株主優待のお話は伺えなかったが、ここまで一休.comを育ててきたユーザーの皆さんが株主になられた暁にはきっとなんらかのお返しがあるのではないだろうか。

P.S.

今回森社長とは初対面であったが、同じネット事業を営んでいるものとして、短い時間の中で親近感を覚えるに至った。インターネットの持つパワーがまたここでも全開していると感じたインタビューであった。

株式会社一休ホームページ: http://www.ikyu.co.jp/

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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