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本物の企業IRを考えるシリーズ
    〜個人投資家にとっての企業IR〜 その10(全12回)
   株式会社KCR総研 代表取締役 金田一洋次郎
   (証券アナリスト・IRコンサルタント)
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本物の企業IRを普及させるためには、個人投資家側からのアプローチも欠かせない。本物の企業IR活動とは、企業が一方的に伝達する活動を示すのではなく、企業と投資家双方が相互に理解しあうコミュニケーション活動であるからである。それが示す効用は、企業の将来をも大きく変える活動であることは、前回のコラムで述べたとおりである。

しかし、残念なことに企業サイドのIRに対する認識もさることながら、個人投資家サイドの認識もまだまだ希薄であることは否めない事実である。個人投資家にとってのIR活動とは、自らの投資収益率を高めることを最大の目的としつつも、自らの投資行動によって、投資している企業が成長し、社会に貢献する企業となることが基本スタンスとなる。この点が、どちらも投資収益の最大化を目指しながらもその行動が投機であるか、投資であるかの大きな差別要因となる。前者は、株価を見、後者は会社を見て投資をしているのである。

前者の投機的投資家にとって、企業IR活動とは、単なるお化粧ぐらいにしか考えてはいない。その企業が持つ本質よりも、市場での話題づくりや、株価的な需給関係に重きが置かれる。無論、投資活動においても近視眼的で、短期の値幅取りが最大の目的だ。従って、彼らの考えるIRとは、株価を押し上げるための単なる道具にすぎない。

後者の投資家的投資家にとってのIRとは、自らの投資戦略上欠かせない活動である。企業が行うIRは、自らの投資活動を確認する鏡であり、経営者との信頼関係を築く場であり、無論、投資パフォーマンスを最大限追及する場である。その姿勢は、企業の成長からパフォーマンスを上げるという考え方で、長期的かつ数倍のパフォーマンスを目指すところから投機的投資家と対極に位置するところにある。

実は、我が国の個人投資家は、圧倒的に投機的投資家が多い。自分の投資している企業が、実際のところどんな活動をし、どのように収益を上げているのか、その企業の強みや弱みは何なのか、何も知らないままに株式投資を続けているのである。その究極はディトレダーで、瞬時の情報把握と指先の速さがパフォーマンスの明暗を分ける。市場は完全ではない。従って、やり方によってはこうした投資行動にも勝つ要素は、十分あると思われるものの、株式市場が本来持つ意味から考えれば、婀娜花的存在といえるのではないだろうか。

残念なことに、こうした投機的投資家が多いことが、企業IRの本格的普及の足かせになっていることは紛れもない事実である。企業のトップにIR活動の重要性を説き、個人投資家向けのIRを進めるにあたって、「機関投資家向けのIRには注力するが、個人投資家向けはちょっと」と二の足を踏む経営者は非常に多い。

このような理由の多くに、個人投資家は、短期的で、ディトレ的であるというイメージがある。また、個人投資家は投資についての理解が浅いというイメージも定着している。世の中はフェアディスクロージャーの時代であり、もはや一部のアナリストや機関投資家だけに情報を与えるということは許されない時代となっている。情報を得る機会という意味においても同様だ。機関投資家や一部アナリストだけに経営者が説明するという企業IRのあり方も大きく見直されなければならない時代となっているのである。

本物の企業IRの普及には、個人投資家の一層の行動が必要だ。企業サイドが、個人投資家に対する誤った認識を持っているとしたら、それを覆す努力が個人投資家一人一人に求められているといえる。「目に見えないもの忠実であることは難しい」この言葉は、私が尊敬する国際弁護士中津晴弘先生が仰ったことだ。そのために私は、顔の見える個人投資家を作る団体、NPO法人日本ライフプラン協会(www.jlpi.jp)を立ち上げた。同団体では、「投資と育成」を基本テーマに前述の機関投資家と個人投資家の企業IRにおけるギャプを正し、健全な資本市場を育成することを目的としている。

ネット取引の拡大に伴い、委託売買に占める個人投資家のシェアは、40%近くにまで及び、いまや、個人投資家は、市場の一大勢力になりつつある。ネット取引の普及により機関投資家との定量的な情報ギャップは、大きく縮まった。これからの個人投資家に求められるのは、経営者のビジョンや戦略を語る場である企業IRミーティングなど定性的な情報機会が得られる場をより多く作ることである。

定量情報は、インターネットの端末で知ることができるが、定性情報は、自らの足で稼ぐ情報であり、人と人が直接ふれあう場であることから、個人投資家にも一定の品性と自覚が求められる。ネット社会が生み出した副産物としては、匿名での書き込み記事がある。投資の世界において、代表的なのはヤフーの掲示板であるが、私は、こうした書き込み記事を真剣に読んだことはないし、無論、書き込んだこともないが、気にする経営者は、結構多い。仕事柄、特定企業の書き込み記事にも目を配るが、大抵は中身がないものが多く時間の無駄である。こうした匿名による無責任な発言は、投資の掲示としては、ふさわしくないと思うがいかがなものであろうか。少なくとも、匿名性を排除するか、管理者は、今以上に企業の誹謗中傷をすみやかに削除するシステムの開発が求められよう。

先ごろ、代表例ともいえる「2ちゃんねる」中傷訴訟で、最高裁で管理者の敗訴が確定した。個人投資家をここまで大きく育てたのもネットであれば、企業との距離を遠ざけているのもネットといえる。本物の企業IRを普及させるためには、これまで以上に個人、企業双方の信頼関係を築く歩み寄りの努力が必要といえよう。

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株式会社KCR総研 代表取締役 金田一洋次郎
(証券アナリスト・IRコンサルタント)

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