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編集長のジャストフィーリング 〜またもや資金が拘束される季節がやって来た〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

今年も10月に入ってIPOの大型銘柄が登場するシーズンを迎えた。

今世紀に入ってから政府保有株を放出する新規上場(NTT、JT、JR等)がなくなってきたために、さほど市場に与える影響は大きくないとはいえ、10月〜11月は多額の資金が市場から吸収される季節である。

ではどうしてこの季節に大型のIPOが集中するのであろうか。

その背景は、日本企業の決算は3月に集中しており、それらの企業が株主総会を経て上場申請する時期は7月以降となる。 上場申請した後に取引所の審査を経て承認となるまでに1ヶ月〜2ヶ月を要する。結果として9月〜10月の時期に上場承認され、上場は10月〜11月になるというわけだ。

思い出してみれば、NTT、JR、JTの売出しなども、決算を開示した後に、有価証券届出書を出して募集を行うため9月〜10月頃に集中していたことでご理解いただけるであろう。

さて、今日の本題に入っていこう。

東京IPOの説明会にお越しいただいている方々にはいつもお話していることであるが、初値騰落率が10月〜12月にかけて低くなるトレンドがある。

このトレンドの背景には、大型のIPOが例年10月、11月に集中し、株式市場に流通する多額の資金を吸収することは前述のとおりであるが、それよりももっと重要なことは、実際に吸収される資金の何倍もの資金が拘束されることである。

証券会社によってルールは異なるようだが、ブックビルディング開始日から申込期間の終了日まで拘束されるとするならば、おおよそ2週間もの期間にわたり資金が証券会社に滞留することになる。

11月25日に上場予定の東京スター銀行を例にとると、ブックビルディング開始日が10月4日にスタートし、申込期間は10月20日に終了となる。 最大でこの17日間は資金が拘束されるわけだ。

東京スター銀行の場合、850億円の資金調達となり、仮に売出し株数の5倍の申込があるとすれば、4,250億円、10倍とすれば8,500億円の資金が証券会社に集まることになる。

前年の10月、11月のIPOによる資金調達額は、それぞれ3,400億円、3,600億円であった。資金がおおよそ2週間拘束されるとして、倍率5倍で計算する、それぞれの月に8,000億円〜9,000億円の資金が投資家の手元から証券会社に移動したことになる。

もちろん、そんな多額の資金が投資家の手元にあるわけはなく、当然のことながら、それに見合う株式あるいは他の証券を売却してキャッシュを捻出する動きとなる。 

特にIPO銘柄に投資されているマネーは限定的であるため、IPO銘柄を売却して、次のIPO銘柄を購入するという投資行動になりがちである。

従って、この時期のIPO銘柄は初値を追いかけるだけの余裕のある投資家の資金を集めきれずに騰落率は低くなるということである。

初値騰落率が高くなる春から夏にかけてのIPO銘柄の初値を買うことは大きなリスクがある。ところが、IPOディスカウント理論を前提とするならば、限りなくフェアバリューでIPO銘柄に投資できる絶好のチャンスが到来すると言えよう。

IPOによる資金吸収は今月が1,200億円、来月もSUMCOもIPOが発表されたので、少なくとも1,300億円以上の金額となる見込みである。

株を売却してブックビルディングに参加されるのもいいが、初値に注目して、初値直後にIPO銘柄に投資することも検討してみてはどうだろうか?

ちょっと古いデータであるが、2003年10月〜12月のIPOで初値騰落率が20%未満の銘柄すべてに投資を行い、3ヵ月後に売却した場合のキャピタルゲインは60%であったことを申し添えておきたい

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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