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編集長のジャストフィーリング 〜伝家の宝刀、黄金株に思うこと〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

楽天のTBS株式取得にまつわる騒動も大手銀行が仲介に乗り出し、どうやら動き出しそうな雰囲気は出てきたが、たぶん楽天の三木谷氏が想定したような結末には至らないような気がする。

ライブドアの堀江氏のように面子よりも実利(キャッシュ)を選択できる精神構造の持ち主であれば結論は意外と早く出るかもしれないが、三木谷氏は想いを遂げるまで突き進むタイプだけに意外と時間がかかるのではなかろうか。

とは言え、ライブドアのニッポン放送株式取得のときもそうであったが、最後は新興企業が折れるというのが日本の企業風土のようである。

さて、今日の問題提起は、楽天とTBSの騒動がどのように集結するかではなくて、どのような買収にも立ち向かえる伝家の宝刀「黄金株」である。

まず黄金株であるが、日経新聞では以下のように解説されている。

「特定の株主に株主総会での拒否権を与える株式。友好的な株主に割り当てておけば、敵対的買収者の提案を否決してもらえる」

黄金株なるものが必要になるのは、株式を公開するからであるが、株式公開とはいったいどうのような意味を持つのかを企業の経営者に考えていただきたい。

ほとんどの新規上場企業において上場前は個人もしくは法人の大株主が存在している。その大株主は持分によって会社の経営を左右する意思決定を行う権利を有することは商法で定められているとおりである。

新規上場した企業は、取引所が定める株主数と流動性を維持するために、最低でも発行済株式数の15%程度を市場に放出している。その後、新興市場から東証1部への市場を変更する過程において大株主の持分は低下していくことになる。

つまり大株主は法的に会社を支配する権利を、徐々に市場参加者に委ねることになるのである。ところが戦後の日本は株式の持ち合いの構造が存在しており、事業推進にはおおよそ関係のない法人株主が安定株主として名を連ねてきたのである。

ここで問題となるのは安定株(主)である。黄金株は潜在株であるが、安定株(主)は顕在化した黄金株と呼んでもいいのではないだろうか。

TBSは楽天の買収への対抗措置として安定株主工作を行いつつ、同時に日興プリンシパルに対して第三者割当増資ができる権利を保有している。

もし、TBSが新規上場を前提とした資本政策の中でこのような仕組みを持っていたとしたら上場が許されるであろうか?

市場に株式を放出して資金を得たのであるから、市場参加者(投資家)の声に耳を傾けることに上場企業の経営者は何の異存もないはずであるにもかかわらず、上場してそのメリットは享受しながらも、支配権を失うことを恐れる経営者がたどり着くのが黄金株の発行ではないだろうか。

ここで重要なことは、市場から資金を得ることは法的に支配権を失うこと、であるとの認識を経営者は持つべきである。

先日、東京証券取引所は黄金株発行企業を上場廃止とする試案を出した。

また、海外では、米モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)の世界株価指数など、主要株価指数の多くが浮動株指数に移行しており、日本も東証に続き、日本経済新聞社が浮動株指数の公表を決めている。

株式市場参加者は安定株主持分の時価総額は評価しないと言っている。

上場企業の経営者と資金を提供する市場参加者とはすでにこれだけ意識がずれているのである。すでに上場企業の経営者に対して市場は警鐘を鳴らしていることをもっと深刻に受けていただきたいものである。

逆説的ではあるが、評価されない株式を保有し続ける企業の経営者も、持ち合い頼みの経営者としてその評価を落とすことになりはしないだろうか。

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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