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編集長のジャストフィーリング 〜過度の期待は逆効果〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

第20回目の冬季オリンピックの開会式典が2月10日の深夜(日本時間)にイタリア北部のトリノ市で開催された。筆者がスイスに滞在していた5年間にもフランスのアルベルトビル、ノルウェーのリレハンメルで開催され、毎日テレビに釘付けになっていたことを思い出す。

どういうわけか冬季オリンピックの開会式は夜に行われている。色とりどりの衣装を身に着けた選手団やセレモニーを華やかにするイベントは、これから始まろうとする厳しい寒さの中での戦いの前哨戦としては必須のものかもしれない。

さて競技のほうであるが、日本の土曜日の夜にノーマルヒルジャンプ、モーグル女子が開催された。 

結果はご存知のとおりである。ジャンプの原田選手はなんと失格。身長と体重できまるスキーの板の長さが違反していたそうである。モーグル女子は4人出場し、3人が予選通過。決勝では上村選手がいったん2位になったが、その後に滑走した選手が高ポイントを得て、結果は5位入賞にとどまった。

選手は一人一人が自分との戦いをしているのである。個人競技は自分なりに精一杯頑張ってみても、いろんなルールと制約があって、評価は第三者が決める。また、周囲の期待が大きく、自分なりに納得した内容でした、と言いづらい雰囲気がある。

モーグルに出場した選手の応援に出身地の地元からはるばるやってきた人が「○○の星」と書かれたボードを掲げていた。多少のミスがあっても、自分なりに納得した滑りをした外国人選手はゴールした後に大きく拳を上げてガッツポーズを取る。それに引き換え日本人はミスを自覚するとゴール後にうつむいてしまう。「○○の星」が責任感の強い日本人には重荷になっているのではないだろうか。

株式市場においても同じことが起こっていると見る。昨今のIPOは初値騰落率が高く、上場日のIPO企業の社長インタビューでは、誰しもが同じようなコメントを残している。「高い評価をいただいた。期待に応える様に経営にあたりたい」と紋切り型であるが、そう言わざるを得ないような株価になってしまっているのである。

いったん高株価をつけるとその株価を維持するにはどうしたらいいだろうか?と考えるのが人というものである。あっさりと「当社の株価はオーバーバリュー」と言おうものなら、かつてソニーの出井社長の発言で株価が暴落したこともあり、そう思っていても素直に口には出せない言葉である。

ライブドアの今回の事件にしても、周囲の期待が経営陣を誤った道に走らせた可能性は高い。もちろん、実態を反映しない貨幣価値を持つ株価のパワーに気づいたが故の過ちであったかもしれない。普通は高株価というお化けにつぶされるのであるが、それを利用しようとした堀江氏は日本人離れしていたと言えよう。

高株価状態が続いている中で突然業績予想を下方に修正する企業がある。期待を裏切った経営者はいままでやっていたIR活動を途端に止めてしまうケースが散見される。でも精一杯頑張った結果が期待を満たせなかったからといってうつむく必要はなかろう。外国人選手にみるように結果が出なくてもベストを尽くしたのであれば正々堂々と自らを語り、表現すべきである。

4年に一度のオリンピックの場で世界で一番の栄誉となる金メダルをものにするには、期待という名の重圧を乗り越えなければならない。しかしながら、経営とは常に金メダルを狙うものではないはずだ。株価は市場がオープンする限り毎日その企業の評価を行っている。たとえ市場の期待を満たせなくて株価が下落しても、将来復活するチャンスは十分にある。

選手にとってメダルだけが評価ではないはずだ。企業においても創造する価値の評価は株価だけではない。経営者も選手も自らとの戦いは永遠に終わらないはずである。

頑張れ、ニッポン選手団!!

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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