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コーヒーブレイク 〜MSCB雑感〜
  株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史(CFA協会認定証券アナリスト)
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以前にこのコラムでMSCBの発行が減り、代わりに新株予約権の発行が増えているようだと書きました。しかし資金調達の方法が限られている企業においてはまだ利用されているようです。2月4日土曜日の日経新聞の財務面にはMSCBの転換価格修正のリリースが8社分記載されています。最近発行されているMSCBは毎週金曜日の株式市場取引終了後に転換価格を見直しするものが多いようで、これらの企業は毎週このように価格修正を発表しています。この中で耐震強度偽装問題やライブドア事件に巻き込まれた企業も含まれており、事件の影響もあってか転換価格の下方修正の連続で、当初の転換価格から大きく下がっています。この結果、転換により発行される株数が増加し希薄化の程度が拡大、売りが売りを呼ぶような状況でMSCBという商品の怖い面が出ていると感じます。1回の転換価格の修正で発行される株数が著しく増えるというわけでもないのですが、毎週毎週リリースされる「転換価額の修正のお知らせ」が、株価が下がっていることをわざわざ世間にアナウンスするようで、ネガティブなイメージを与えている面もありそうです。

MSCB最盛期に生まれた商品に松井証券が行っている夜間現物買取引「夜市」があります。取引は平日夕方から夜にかけての時間帯に行われ、当日の終値よりもディスカウントの価格で株式が購入できるというものです。夜市の対象となる株式は、UBSグループが投資目的で保有する株式、またはUBSグループが保有する転換社債型新株予約権付社債(CB)等を権利行使して得られた株式となっています。実際UBS証券はMSCB最盛期にかなり積極的にこの引き受けをしていた印象があります。松井は夜市で取扱う株式について顧客の委託を受けて、UBS証券との間で約定を成立させます。その際、顧客の買付価格は、買付日の終値から数%ディスカウントされた価格になるという仕組です。通常MSCBにより転換された株式は市場で少しずつ売却するか、機関投資家に相対でまとめて売却することが多いようですが、発行会社からすると市場での売却で株価が下がることや、いきなり得体の知れない機関投資家が大株主となることを不安に思う声もあったようです。そこで多数の個人投資家に小口で株式を提供し、安定的に保有してもらおうというこのスキームが出てきたようです。昨年の春に松井とUBSの提携が記事になり、この商品も面白い仕組みと話題になりました。しかしその後MSCBの発行自体の縮小で「夜市」への株式の供給が細っているようです。昨年は5月の制度スタート後8ヶ月での実績が21銘柄、実施は66回ありました。今年はこれまでのところ実施は3銘柄で合計5回に留まっています。

夜市はMSCBの転換により得られた株式を売買の主要な玉としていることから、残念ながら今後の拡大は難しいように思われます。しかし今や株式投資は日常的エンターテイメントの1つとして定着しつつあります。この流れをさらに拡大し株式市場を活性化するには、夜間・土日の市場・売買機会の創出が必要だと思います。夜市に代わる取引機会の提供に期待したいと思います。

コーヒーブレークのブログ書いています。http://ameblo.jp/mplstwins/

株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
(CFA協会認定証券アナリスト)

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