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新規公開株式情報の東京IPO
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コーヒーブレイク 〜買収攻防の中で一般株主は〜
  株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史(CFA協会認定証券アナリスト)
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ライブドア事件の陰に隠れて前半戦は今ひとつ盛り上がりに欠けた(?)感のある、ドン・キホーテによるオリジン東秀に対するTOBとその後の市場内での買い増しも、結局ドンキがイオンのTOBに応じることで幕引きとなるようです。一連の出来事を拾ってみると以下のようになります。

主要登場キャスト(敬称略)

防衛者:オリジン東秀、敵対的買収者:ドン・キホーテ、
ホワイトナイト:イオン、イベント型投資家:タワー投資顧問

1月15日(日)
【ドンキ】オリジンへのTOB開始を表明。
条件:TOB価格2,800円、期間1/16〜2/9、2.48%(既所有分と合わせて33.4%)
以上の取得で成立、最大20.28%(既所有分と合わせて51.2%)まで買付。
(前営業日オリジン株価2,340円、ドンキ10,750円、翌営業日オリジン2,740円、
  ドンキ10,720円)

1月16日(月)
【オリジン】ドンキのTOBは、オリジン取締役会の賛同なしで開始されたこと
を確認。
(当日終値オリジン2,740円、ドンキ10,720円 翌営業日オリジン2,625円、
  ドンキ9,910円)

1月23日(月)
【オリジン】ドンキのTOBへの反対意見を表明。ドンキへの質問
書を公表。TOB期間の2/24までの延長を要請。51%までしか買い付けないこと
も反対理由のひとつとした。
(翌営業日オリジン2,625円、ドンキ9,910円)

1月26日(木)
【タワー】1月20日時点でオリジン株11.23%保有を届け出。
(翌営業日オリジン2,650円、ドンキ9,960円)

1月27日(金)
【ドンキ】オリジンからの質問書への回答およびオリジンへの質問書を公表。
TOB期間延長は必要なしと回答。
(翌営業日オリジン2,670円、ドンキ10,130円)

1月30日(月)
【オリジン】 ドンキからの質問への回答を公表。

【イオン】オリジンへのTOB発表。
条件:TOB価格3,100円、期間1/31〜3/1、50.01%以上の取得で成立、最大100%
まで買付。

【オリジン】イオンのTOBへの賛成表明。理由としてTOB価格が高いこと、ドン
キの買い付け株数が最大保有比率で51.2%に留まり全株を買い付けないことに
対して、100%まで買うことを支持理由の一つとした。事業シナジー面でも賛
成等。

【ドンキ】イオンによるオリジンへのTOBの確認。
(翌営業日オリジン3,070円、ドンキ9,760円)

2月2日(木)
【オリジン】労働組合によるイオンのTOBへの賛成表明
(翌営業日オリジン3,250円、ドンキ10,130円)

2月10日(金)
【ドンキ】TOB不成立を発表。応募100株。

【オリジン】ドンキTOB不成立を確認。
(翌営業日オリジン3,100円、ドンキ9,770円)

2月15日(水)
【ドンキ】オリジン株の市場内での取得を表明。ドンキが30%超を保有する中
でのイオンのTOB条件は実現の可能性が低いものであったと批判。

【オリジン】ドンキの市場内での買い増しを受けて対抗手段検討を表明。昨年
の株式取得と今回の市場内取得が一連の行為であり、TOB以外の買い付けは違
法の疑いあり、と声明。
(翌営業日オリジン2,780円、ドンキ8,850円)

2月21日(火)
【タワー】2月15日時点でオリジン株12.65%保有を届け出。
(翌営業日オリジン2,555円、ドンキ8,980円)

2月24日(金)
【ドンキ・イオン・オリジン】ドンキがイオンのTOBに応じることを発表。イ
オンはこれを受けてTOB期間延長(〜3/13)を発表。またオリジンが上場廃止
の可能性があることを警告。
(この日の終値はオリジン2,620円、ドンキ8,600円)

3月13日(月)
【イオン】 TOBの結果・・・?


一般の投資家にとっては、TOB開始後の関係者のリリースを漏らさず読み、きちんと整理、理解し、合理的な判断を下すことは難しかったと思います。2,800円より3,100円が高い!ということは分かります。しかしオリジンの上場廃止の可能性や、オリジンのイオングループでの成長の可能性とドンキ傘下での成長の可能性はどちらが高いか?TOBの条件で価格以外の条件の差異は何か?ドンキのTOB終了後の市場での買付の何が問題なのか?難しい疑問がどんどん出てくる中、思惑で売買をするか、なす術なく成り行きを見守るか。

TOBの応酬というような局面において、当事者以外の株主は蚊帳の外という感じがします。今回はこれを報道、解説すべきメディアもライブドア事件の報道にスペースを割き、この件についての報道は少なかったと思います。敵対的買収の攻防において買収側は、自社の株主、ターゲットの株主、そして顧客など社会全体に対しての説明をきちんと行わないと、火事場泥棒のような印象を残してしまいます。一方で防衛側のオリジンの対応もややスローな感じであり、さらにホワイトナイトであるイオンからは公式にはTOB開始からドンキとの合意までの間は一度も公式な情報発信がありませんでした。

自社の株主のため、ひいては買収合戦に勝利を収めるためにも、リリースを含めたあらゆる媒体を通じての積極的な情報発信、意見表明、相手への反論、相手の不当性・不誠実性を訴えるような攻撃も必要と思います。制度的な備えも重要ですが、何よりも経営者による迅速・的確な情報発信ができる体制を日頃から整えておくことが重要ではないでしょうか。今回の件について言えば、毎年5千円の優待で美味しい弁当を楽しみつつキャピタルゲインも期待していたオリジン株主は上場維持を願っていると思いますが。

 

コーヒーブレークのブログ書いています。http://ameblo.jp/mplstwins/

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