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編集長のジャストフィーリング 〜楽天の1000億円増資〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

楽天が3月1日に公募増資を発表した。

その規模は新興市場としてはかなり大型で1,000億円を越える金額になりそうだ。

なぜこの時期に公募増資なのかを考えてみた。

2月16日に開催された2005年12月期の決算説明会の資料を読んでみると、売上と利益に資料の内容が終始している。詳細→ http://www.rakuten.co.jp/info/ir/meeting/index.html

バランスシートに関しては、100ページの資料の中で申し訳程度に2ページが割かれている。

でも不思議なことに自己資本の額には触れていない。

決算短信を見ると、前期末の総資産額1兆6577億円、自己資本765億円で自己資本比率は4.6%とかなり低い水準だ。前々期の自己資本比率14.9%から急速に低下している。皆さんの理解はTBS株式の取得にあると考えられるかもしれないが、実は楽天の事業が大きく証券金融事業に傾いたからに他ならない。

売上に占めるECと証券金融事業の割合は、EC事業:27%、証券金融業:56.7%、

経常利益ベースでは、EC事業:33.8%、証券金融業:53.5%となっている。いまや楽天は金融業であると言っても過言ではない。

証券金融業は資産と負債が両建てになるため事業が拡大すればするほど総資産が膨らむものである。また証券金融事業の成否は資金調達のコストを如何に低くするかにあると言っても過言ではない。

だからこそ金融業には自己資本の規制があるのである。銀行業は国際業務を行うには最低でも8%以上の自己資本が義務付けられている。最近では地銀でも10%内外の自己資本比率を維持するところが増えてきている。

ネット証券を見ても、松井証券6.7%、イートレード証券8.6%、マネックス証券11.3%、カブドットコム証券10.8%(いずれも2005年9月期)となっている。またポータルサイトのYahoo!Japanの自己資本比率は75.8%と比較にならないほど高い。

このような背景の中で楽天が1,000億円の公募増資を行うと、ひとまずは自己資本比率が10%に近い水準まで回復すると見られる。ところが増資で自己資本比率が向上することはROEの低下を招くという両刃の剣であることを忘れてはいけない。

前期末の株主資本当期純利益率は期末をベースにすると25.5%とグローバルな水準でも超優良企業である。もし仮に今期の利益に変化がないとするならば11%程度まで低下することになる。

今回の公募増資は銀行借入を行う上での財務体質の改善には役立つが、株主にとってみれば増資に見合うだけの利益を確保は出来るのか?という疑問が浮上してくるのは当然であろう。

幸いなことに公募増資を発表した翌日こそ株価は下げたが、その後は順調に回復し今日は発表日の終値を上回る株価で引けている。とは言え、今回の公募増資の成否を見るまでにはしばらく時間がかかると見たほうがいいだろう。

最後に余計な話だが、今回の大型増資のドサクサに紛れて三木谷夫妻は保有する200,000株(200億円相当)の売出しを行うらしい。その目的は、「株式の分布状況の改善と流動性の拡大」とあるが、1,150,000株の公募増資で十分その目的は果たせると考えられる。できることなら今回の売出し資金を楽天球団の選手確保に使っていただいたら楽天球団のファンも増えて楽天市場との相乗効果も出るのではないだろうか。

 

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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