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編集長のジャストフィーリング 〜ベンチャーキャピタル〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

先週の金曜日の夜に某ベンチャーキャピタル(以下VC)の方々と食事をする機会に恵まれた。

開口一番、私から質問を差し上げた。

「ロックアップがないと、どうしてVCは上場日からすぐ売ってくるのでしょうか?」

答えは「上場日以降の時間のリスクを負わないのがVCの投資手法」であるそうだ。

上場日に初値が高くなる銘柄には共通の要因があって、公募、売出し株以外に売り圧力がないことが重要なポイントとなる。

2005年の初値騰落率トップ5を見てみると、以下の5銘柄となっている。

上場日    銘柄       コード・市場       初値騰落率

9月13日 オールアバウト     (2454 JQ)         676%
        インターネットメディア「All About」の運営

5月20日 セレブリックス     (2444 大証H)       639%
        コンサルティング事業及びアウトソーシング事業等

12月20日 ゲームポット      (3792札幌A)        600%
        オンラインゲームサービス・モバイルゲームサービスの運営

4月6日  アライヴ コミュニティ (1400 大証H)       566%
        マンション室内のコーティング加工事業、リフォーム事業、
        インテリア商品の販売等のトータルハウスケアサービス

4月26日 エムビーエス      (1401 福証Q)       500%
        外装リフォーム工事やコンクリートの落下防止等の補修・
        改修工事及び同社加盟店等に対しノウハウの提供及び材料等
        の販売

共通しているのは、大株主が親会社もしくは経営者であるオーナーであることだ。またVCが株主に名を連ねていても持分が非常に少ないことである。

このように初値騰落率の分析をしてみると、VCの存在は上場企業の株価形成には非常にネガティブな存在に映ってしまう。需給に影響を与えることがわかっていながらVCはどうして市場で売却を急ぐのか。

一般の投資家からすれば、「ここで売らなければ、もっと株価は高くなるのに。馬鹿だな〜」と思われるかもしれない。

ここで重要なことは、一般の投資家とVCでは時間軸が異なることを認識しなければいけない。

個人投資家が株式を保有できるのは、上場による公募・売出しの時点からである。保有期間は初値がつくまでにせいぜい1週間程度で、それ以降はいつでも自由に売却可能となる。

一方のVCは短くても1年以上は保有しており、長くなると3年から5年はざらである。

そしていったん投資したら上場するまでの期間は現金化できないのである。その上場たるや、投資先企業が計画しているような最短距離で実現するのは稀なことだ。

もし読者の皆さんが、上場するまで売却不可である株式投資を行わなければいけないとしたら、投資する時点で何を考えるでしょうか。

まず「いつ」そして「株価いくらで」上場できるのか、ということではないでしょうか。

そして想定される投資利回りを計算するでしょう。たとえば、3年間で複利で25%と考えれば、100万円投資すれば3年後に195万円になる。

このような前提があって、上場時の公開価格が仮に300万円なら皆さんはどうするでしょうか? たぶん、300万円近辺の初値が付けばどんどん売却するのではないではないでしょうか。

そうなのです。たとえ初値は公開価格と変わらなくてもVCは十分納得できる利益を得ているのです。

我々個人投資家は公開価格もしくは初値がスタートですから、公開価格で買った人は初値が高く付くことを期待しますし、初値を買った人は、初値以上の株価が付くことを期待します。

また保有する期間はVCと違って個人の場合は長くて1ヶ月、短い場合は数分〜数時間とではないでしょうか。

リターンを実現するまでに要する時間軸の違いをご理解いただけただろうか。

VCは上場までの時間軸で勝負する投資家、我々は上場がスタートである投資家である。

この違いを認識しておけば、初値を買ってVCが売り切るまでは株価が上昇しないことで後悔するようなIPO銘柄投資で失敗することはないだろう。

東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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