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コーヒーブレイク 〜リートに投資してみよう〜
  株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史(CFA協会認定証券アナリスト)
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東京証券取引所は6月28日に不動産投資信託(以下、リート)である不動産リートの日本アコモデーションファンド投資法人の上場を承認しました(8月4日上場予定)。

これで上場リートは37本目となります。リートの時価総額も3兆円を超えてきました。上場株式の時価総額合計は500兆円超、投資信託の残高が約45兆円であるのに比較すると、金融商品としてはまだ小さな規模です。

一方でリートを不動産投資・保有を行う会社と見て、これを上場不動産会社と比較した場合、東証1部上場不動産会社の時価総額合計12.8兆円(6月末)に対して、1/4の規模に達しています。

時価総額3兆円超に対して、PBRはほぼ1倍前後なので合計の純資産も3兆円以上。自己資本比率が50%としてリートの保有する総資産は6〜7兆円規模となります。配当利回りは上場リートの単純平均で5%弱です。純利益の90%以上を配当するので、PERは20倍程度になります。ちなみに全上場不動産会社の平均PERも20倍程度となっています。

初期のリートは首都圏のオフィスビルが主要な投資対象でしたが、最近は投資対象について特長を持って差別化を行うリートも出てきています。またこれまでは大手不動産会社・金融機関がスポンサーとなっているリートがほとんどでしたが、昨年後半からは中堅〜新興不動産企業が中心となって設立されたリートの上場が増えています。

こうしたリートは、個人投資家にとって銘柄選択の大きな材料であるスポンサー企業のブランドが劣ることから、上場後の価格が公募価格との比較でやや低めに推移し、その結果利回りとしてはかなり魅力的な水準で推移している銘柄があります。

リートは基本的にこの利回に注目して投資する商品であり、株式とは異なる投資方針(投資期間、期待リターン、許容リスク等)が必要です。自分のポートフォリオの構成を改めて考えた上で、リート投資をご検討されてはいかがでしょうか。

留意すべき点として、一部のリート運用会社の不適切なガバナンスが発覚し、監督官庁の処分を受けています。スポンサーである新興企業自体がガバナンス体制の構築プロセスにある中で、そうした会社が母体であるリートの投資法人および運用会社についても改善の余地があるかもしれません。こうしたリスクも認識した上で、魅力的な銘柄を探して行きたいものです。

 今回は5月23日に上場されたエルシーピー投資法人の久保取締役財務部長にもお話を伺ってきました。同社の名前にもなっている「エルシーピー」の由来ですが、これは米国NY証券取引所でに上場しているLXPリートの運営などを行っている母体となったThe LCP Group L.P.が最大の出資者、母体企業となっていることによります。

当リートの特長は、運用物件のテナントとの契約の方法、組入れ物件の種類、物件を供給するパイプラインサポート会社の地域分散、以上の三点です。

まず第1の特長は投資対象物件のテナントとの賃貸借契約において、低コスト・長期安定的な契約を結んでいることです。賃貸借契約の内容・形態を「ネットリース」、「長期契約」、「賃料固定型マスターリース」、「一括貸し」のいずれかを採用しています。

詳しくは同投資法人事のHP(http://www.lcp-reit.co.jp/)などをご覧頂くとして、貸し手にとって安定的な収益が期待できる契約を承諾する相手とだけと取引している、と言えるようです。

第2の特長は組入れ物件の種類です。同リートは住居用資産がポートフォリオの中心ですが、全体の35%を上限に有料老人ホームと高齢者向けの賃貸住宅であるシニア住宅を投資対象としています組入れています。シニアハウジング事業に注力している東証二部上場の潟[クスが、パイプラインサポート企業として物件の取得に協力していることによります。

上場時点では介護付有料老人ホームを3物件組入れており、実際にシニア物件シニア住宅を運用資産に組入れたリートはこれが初めてのようです。シニア住宅物件の構成比はまだ5%程度(取得価格ベース)ですが、徐々にこの比率を高めていくそうです。

リートが長期安定的に不動産を保有する形態は、20年以上の長期賃貸借契約を締結する有料老人ホームの運営・入居者保護のためにも望ましい方法として広がっていく可能性があるようです。

第3の特長は、パイプラインサポート会社が北海道から九州までの全国各地にそれぞれ地盤を持つ不動産9社からなることです。各社が各地の優良物件を提供することで、地域的な分散が図られています。これら9社は投資法人及び運用を委託されているエルシーピー・リート・アドバイザーズ株式会社にも出資しています。上場会社では、前述のゼクスのほか5社が参加しています。

シニア住宅の組入れが安定した収益をもたらすのか、いずれもマイノリティ出資のパイプラインサポート会社がリートに良い物件を供給するのか、などまだ見えない部分はあります。しかし各リートの投資対象が首都圏オフィスに集中し、次第に優良物件の確保が難しくなる中、エルシーピーは他のリートとは明確な差別化要因があるのは間違いないところです。

成長が期待できるシニア住宅市場において、有力な購入者として認知されれば資産拡大が期待できそうです。

 

コーヒーブレークのブログ書いています。http://ameblo.jp/mplstwins/

株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
(CFA協会認定証券アナリスト)

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