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編集長のジャストフィーリング 〜労働基準法エグゼンプション〜

東京IPO編集長 西堀敬

 

週刊東洋経済の年末・年始号の特版「2007年全解明」の中にあるデータを見ていて、年初から日本の将来に憂いを感じてしまった。

そのデータとは世界各国の年間労働時間の比較である。スイスの大学院IMDが調査した結果、世界一番の働き者は香港人で年間2,398時間、続いてインド2,347時間、台湾2,327時間、フィリピン、メキシコ、韓国、チリ、タイ、ヨルダン、・・・15位シンガポール・・19位中国・・26位ブラジル・・30位米国1,895時間・・34位日本1,864時間となっている。

なんとトップの香港とは534時間、日数で66日(1日8時間換算)も違いがあるのである。米国とすら31時間で約4日間の差がある。

働きバチ日本人はどこにいってしまったのだろうか?このようなことを書くと、自分はもっと働いている!このデータはおかしい、とおっしゃる方が多いだろう。

戦後ニッポンの高度成長を実現した時代に比べれば労働時間が短くなったことは団塊の世代の人々が一番良く知っているはずである。働く時間云々なんて言っている暇もないほど忙しかった、そんな時代が懐かしい人も居るに違いない。

それがGNP世界第2位の国になり、だんだんと社会が成熟してくるといつの間にか怠け癖がついてしまったのではないだろうか。成長や復活に燃えた時代は去り、今の地位に安住しようと言う精神構造が日本人の仕事に対する意識を低下させているとしか考えられない。

今の日本の置かれた状況を冷静に判断すれば、少子高齢化の中で労働人口は日々減少し、その結果として国内の市場は縮小、企業は外需に頼らなければならなくなってきている。また第二次産業(懐かしい言葉)であるモノ造りは海外に移転し、国内は第三次産業(サービス業)中心の構造になってきている。

このような状況下で、日本人が世界第2位の経済大国を維持するために、どのような仕事の仕方が適しているのかを国は良く考えなければならない。我々は今日までの成長の経験をベースに蓄えた知恵でもって世界と伍していかねばならなくなってきている。今更、労働時間で世界一になったところで意味のないことである。

話題は少し変わって、ホワイトカラーエグゼンプション(white collar exemption)に話が移るが、その中身とは、いわゆるホワイトカラー労働者に対する労働時間規制を適用免除(exempt)すること、またはその制度、のことを言う。

この制度の導入は、2005年6月に日本経済団体連合会が提言を行い、2006年6月に厚生労働省(労働政策審議会労働条件分科会)が素案を示した。同省は2007年の通常国会に関連法案を提出する意向であり、早ければ2008年度にも立法し施行される可能性があるが、労働組合や野党民主党の反対もあり、夏に参議院選挙を控えて、自民党は2007年の通常国会への提出を見送る可能性が出てきている。

ホワイトカラーイグゼンプション導入に反対する人たちの意見は、残業代の不払い、長時間労働の強制などが横行するのではないかと案じているようだが、こんな議論こそが国を滅ぼすと考えないのであろうか。

今の日本は子供の頃から学習塾などに通い強制学習は当たり前である。知人の息子などは、高校2年生であるが、塾から帰宅すると毎日おおよそ11時頃になるらしい。他人に勝つには、人一倍勉強しなければならないことなど子供でも理解している。

大人の世界で言えば、個人事業主の人は自分が休めば収入はなくなる。多く稼ぎたければ寝食を忘れるほど仕事をするしかないのである。

サラリーマンの世界でも、組織の中で昇進、昇格を急ぐのであれば、同僚や先輩よりも秀でるしかない。それなのに決められた時間内でしか仕事をしてはいけない!と言われたら、優劣がつかないことになる。もちろん、昇進も昇格も興味のない人もいるので、全員がそうする必要はないであろうことは重々承知している。

このような単純なことは誰にもわかるはずである。子供の頃から競争する意識を植え付けているのに、大人になったら競争することを良しとしないなんていうのは理屈が合わない。

日本の産業の国際的な競争力を維持したいなら、もう一度、戦後の日本のように国民全員が時を忘れて精一杯仕事をすることではないだろうか。

最近IPOする企業の上場審査では労働基準法を遵守しているかどうかが厳しくチェックされるようであるが、ベンチャー企業で働く社員が労働時間などかまっていては企業が成長することはおろか会社の維持すらも厳しいはずである。 そのことが理解できている社員しかそこには居ないと考えるべきではないか。

最後に、筆者の個人的な意見であるが、人によっては、ホワイトカラーエグゼンプションならぬ、労働基準法エグゼンプション宣言をして精一杯仕事をしたい人がいてもいいのではないだろうか。

個人が成長、進化することが自ら属する企業をそして国を発展させることを理解している人は、個人の働く権利が守もられると言う意味でも、当局は労働基準法エグゼンプション宣言なるものを認めるくらいの動きをしないとこの国も行方は怪しくなってくるとは思わないのであろうか。

今日はかなり過激な内容になったかもしれない・・・・


東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com

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