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運用会社の合併に思う(2)

某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん)
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皆様、お元気でしょうか?今更感もありますが、雪が積もらずスキー場は厳しいようですね。3連休は4年ぶりの雪山の予定だったのですが、体調の都合もあり行かず仕舞い。スキーよりもゴルフに行きたくなるあたり親父だなあ、と思わずにいられないこの頃です。

さて、「運用会社の合併」をテーマに先週の続きです。

先週のメルマガでは「働いている本人にすれば溜まったもんじゃない」「実質的な合併メリットはないんじゃないかな」と不穏な表現が多く、テスト真っ最中の精神状態そのままでしたが、もう少し掘り下げたいと思います。

まず、合併しても1+1=2以下にしかならない点について。

運用会社のほとんどは内債、内株、外債、外株ファンドを揃えており、担当部署があります。近年では、REITやスワップ等を使ったオルタナティブ運用も活発ですが、それでも大きく分けると上記4資産にオルタナを加え、クォンツや各種アナリストの専門部署があるかないかの違いくらいでしょう。

一資産に特化するブティック型運用会社は例外として、投信でも年金でも多くの場合は各アセット間の迅速な資金移動や、アセットアロケーションからリターンを取りに行くことを求められるので、「弊社は外株チームがありません」では厳しいものがあります。よって各社とも4資産は運用できる体制になっていると思われます。海外ITやアジア、インド等のエマージングについては委託
してるところが多いイメージですが。

ここで運用会社の特徴である「少数精鋭でも大規模な資金運用が可能」というメリットが問題点となります。そう、合併して運用資金が2倍になったとしても、人員を2倍にする必要はどこにもないのです。せいぜい1.5倍、下手すれば人数の増員がなくても問題がないかもしれません。

少なくとも、合併する会社としては人員削減せざるをえない状況になります(もちろん日系運用会社にとってはリストラを行う良い機会ではありますが…)。

そして、まず第一弾の合併における闘争が始まります。どちらの運用会社がどの部署を引き継ぐか、複雑なプロダクトを扱っているならともかくとして、国内株式のアクティブやパッシブといったシンプルなファンドは甲乙つけるのが難しい上、運用会社の「顔」ですから簡単には譲れません。

私は実際に現場を確認したわけではありませんが、妥協するにしろ、どちらかが引き継ぐしろ混乱は避けられないようです。

妥協して両者が既存のプロダクトをそのまま引き継いだとしても、必ず新規のプロダクトを立ち上げる日が来るわけで、その時にどちらが担当することになるのか。外見上は一つのチームでも、上司・部下の関係は割り切れるものではなく、結局「前回は旧○○が担当したから次は旧××の方で…」といったおかしな基準でファンドが設定されかねません。

また、どちらかの会社が引き継ぐ場合(比較的小さい外債や外株にありそうです)、旧ファンドの運用形態やレポートをどうするのか。これはバックやミドルオフィスも関わる大きな問題です。この場合、片方の会社のメンバーはいない(転職か他部署へ異動)わけで運用上の混乱があった場合、対処が極めて困難です。

「転職が珍しく業界だから問題ないんじゃない?」とお思いの方もおられるでしょうけど、あれはあくまで数名が転職するケースなので、混乱が起きても何とか収まっているだけです。資金設定からポートフォリオ構築、リバランスといった運用関連業務は完全にマニュアル化するのは難しく、またシステムも運用会社によってバラバラなので、新しいファンドマネージャーが入ってきた場合に事務が混乱することは珍しくありません。(ここら辺はとトレーダーとしての観点になってますが)

合併した場合は全社的に新しいシステムに慣れる必要があるため、「日々のマーケットに柔軟に対応する」ことが業務の立場としては、ここで生じる混乱は想像を絶するものがあります。

更に悪いことに、システムの統合というものが非常に厄介です。(合併とは関係なく)新しいシステムを導入するだけでも、旧システムからの引き継ぎや整合性をチェックするのに莫大な時間がかかります。なまじ新しいシステムを入れたがために実は旧システムが持っていたデータが移行できなくなり、代替のデータを作るために、別のシステムが必要になったり。

経営上の観点から合併が行われた場合、このシステム統合が非常に難航しかねません。通常なら「互換性ねーよ。絶対無理。」と草案段階で破棄されそうな統合が必要になるわけですから。いっそのこと全部エクセルとアクセスで作っちゃえ、と思わないことのもないのですが、現実から逃げるわけにはいかないし。

新会社としてどのファンドを伸ばして、どのファンドを閉じるかというのはこれらの混乱が収まったあとの話です。もし、内部の混乱が収まっていなければ、本格攻勢のタイミングは後ずれになり、軋轢だけが溜まっていく…。

良いパフォーマンスを出している方の部署だけを残せばまだすっきりするのでしょうけど、部署相互間の情報連携もあったもんじゃなくなってしまうし、これが理想という形はあるのでしょうか。

以上の諸所の問題から、なかなか合併しても運用パフォーマンスは1+1=2以上は期待しにくいという話です。

書いているだけでうんざりしてきましたが、「じゃあこのまま合併せずに残すのか」と聞かれると答えに窮します。利益が出ないならしょうがないかな…。
としか言えないのが辛いところです。

要は合併することになったら、間違いなく私は合併要員になる立場(年齢的にも、知識でも)なので速攻逃げ出したいなあ、ということです…。せっかく仕事が面白い時期なのに。その時はよりリアルに、合併の苦労話を報告いたします。


某運用会社日本株トレーダー 鰊(にしん)
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