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2007.6.11 No.506



『〜ドイツ証券武者氏が語る「好都合な真実」とは〜』 

 

先週の土曜日は東京、九段下にて500人規模のIR+資産運用フェアを開催した。

株式講演会に加えて、IRプレゼンテーション、東京金融先物取引所からの案内などもあり、盛り沢山の内容で非常に多くの方々のご参加を頂くことができた。

参加頂いた企業の経営者、ご講演頂いた講師の皆様、そして足を運んでいただいた個人投資家の皆様にこの場を借りて御礼を述べておきたい。

さて、今回のセミナーの講師の一人としてお話いただいたドイツ証券の武者氏の講演内容が非常に興味深く感じた。

読者の皆様にもエッセンスだけお伝えしておきたい。

お話の内容は大きく三つのポイントに分かれていたが、その中でも興味深かったのは、「好都合な真実=生産性改革がもたらす謎」という部分である。

好都合な真実とは何か?

昨年の今頃に日本株が急落し、その背景として中央銀行の金融引き締め起こり、流動性が市場から消えるのではないかと心配した人が多かった。

ところが、その後世界的な金融引き締めにもかかわらず過剰流動性はなくならなかった。

世界中のどのエコノミストもこれを解説していない。

それは企業部門の貯蓄超過がそこを補っていると考えるしかない。

日本も米国も設備投資は2000年以降増えているが、フリーキャッシュフローの範囲内で行っており、企業に大幅な資金余剰になっている。

つまり過剰流動性の源泉は企業の潤沢なキャッシュフローにあるといえる。

この状況はそうそう変わらないと考えるべき。

それは世界規模で経済革命が起こったからである。

1.世界経済が完全に統合された。

2.先進国が安い労働力を使うことができるようになった。

3.そのお陰で先進国の企業は超過利潤を得ている。

4.それを可能にしたのがインターネット。

世界中が中国やインドに質の高い労働力を使っており、世界経済の成長と言う意味では青信号、青天井で死角が見えない・・・

先進国企業のリターン(利潤率)は高く、金利は低い状態で、日米の株価は割安であるといえる。

過去、米国では益利回りと長期金利はパラレルに動いていた。
それが今は妥当株価から2割〜3割低い水準になっている。

ことさら日本においてその割合が大きい。

空前のリターンギャップが起こっている。

日本企業のROEは過去最高水準9%、長期金利は2%弱。

なぜこんなことになっているのか?

大不況が起こってROEが下がるのではないか?
インフレで金利があがるのではないか?
という疑問を持てばリスクはある。

ところが安定して世界経済が成長するならば、市場価格で見たROE(益利回り)が高まる以外は説明がつかない。

日本の個人の金融資産は1,500兆円、そのうち自由になるのは1200兆円だが、75%が金利ゼロの預金になっている。

金融危機のトラウマに取り付かれた日本人は元本さえ確保できればリターンはいらないと考えているが、金融危機も大不況もないと考え始めたら、より大きなリターンを求めて動き出すはず。

今の日本は、物価、為替、金利、株がすべて安い大バーゲン状態。

日本経済が衰退しているのであればやむを得ないが、そうでないとすればミスプライスが起こっていると考えるべき。

そのことに気づいた世界中の投資家は年末にかけて日本株を買いに走るはず・・・・

このように非常にロジカルな解説で日本株の上昇シナリオを描いてくれた。

詳しく知りたい人は、武者氏の著書「新帝国主義論―この繁栄はいつまで続くか」(東洋経済新報社)をお読みいただきたい。

武者氏の講演をお聞きになった個人投資家の方々は日本株式投資に非常に強気になられてお帰りにかったことと思う。

今年後半の日本の株式市場の復活を期待したい。

外債や外国株ばかりでなく、日本株にももっと興味を持っていただきたい。

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com