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2007. 7. 9 No.514



『会計不信との決別』 

 

5月中旬に新興市場も底入れの兆しが見えてきた。

東証マザーズ指数、日経ジャスダック平均株価ともに日足が25日移動平均線を下から上に突き抜けて上昇基調に転じている。

日経平均株価は年初来高値を伺う展開となっているが、新興市場と明暗を分けたのはおおよそ1年前まで遡る。

その背景は、中央青山監査法人(現在のみすず監査法人)が行政処分を受けたことに大きく関連していると考えられる。

大手監査法人の監査態度が一転して厳しくなったのである。直前期までは指摘がなかった会計処理までもが問題となり、業績予想を下方に修正しなければならない新興市場上場企業が続出したのである。

そして監査法人の指摘した一連の会計処理もこの3月期ですべて織り込まれたはずである。

ここ1年間は「会計不信」なる言葉がメディアを賑わしたが、そろそろこの言葉とも別れを告げる時期が来たのではないだろうか。

この新興市場不信を受けて低迷していたIPO株のセカンダリー市場がそろそろ動き始めたようであるが、2006年1月〜2007年4月までに新規上場した企業の業績を追ってみた。

 

この期間にIPOした224社の会社発表の業績予想に対して直近決算で経常利益が未達成となった企業数は以下のとおりである。

銘柄数
未達成社数
未達成率
JASDAQ
81社
30社
37%
東証マザーズ
50社
22社
44%
大証ヘラクレス
49社
16社
32%
東証1部・2部
35社
15社
43%
名証セント
15社
6社
40%

 

このように40%前後の企業が業績予想を達成できないとなると、投資家はIPO株に投資したくないのが当然である。

 

しかしながら開示のルールに沿ってファイルされた業績修正の件数を見ると少し景色が異なる。

銘柄数
上方修正
下方修正
JASDAQ
81社
19社
23社
東証マザーズ
50社
11社
15社
大証ヘラクレス
49社
15社
10社
東証1部・2部
35社
7社
5社
名証セント
15社
2社
8社

 

メディアは業績の悪化のほうを中心に記事として取り上げているが、実は業績予想を大きく上回るIPO企業も数の上では多く存在しているのである。

 

また2006年1月〜2007年4月に新規上場した銘柄の予想利益ベースのPER(7/4終値)を見ると、市場平均のPERを大幅に下回っていることがわかる。

銘柄数
PER
増益率
JASDAQ
81社
15.3倍
16%
東証マザーズ
50社
39.6倍
37%
大証ヘラクレス
49社
23.9倍
26%
東証1部・2部
35社
15.5倍
4%

 

JASDAQ上場企業の予想利益ベースのPERは平均で20倍前後推移していることからしても、最近のIPO銘柄がいかに低いバリュエーションに放置されているかが一目瞭然である。

新興市場に上場する企業のバランスシート調整はすでに3月決算にすべて織り込まれており、今後の業績が銘柄選定のポイントになるであろう。

業績予想どおりに着地できるとするならば現在の株価水準は完全に割安ということになろうが、現実問題すべての企業が予想通りに着地することは難しいと言える。

とするならば、銘柄選定のポイントはビジネスモデルの良し悪しを吟味するのではなく、まずは業績予想に安心感のある企業か否かということを確かめることから始めるべきである。

その意味では、業績予想以上の決算数値で着地した企業群の中にこそ本当の割安株があると考えてもいいのではないだろうか。

少し手間はかかるがその作業を自らが行うことが株式投資に勝つことに繋がるはずである。

 

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com