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株式会社UBIC
(東証マザーズ・2158)
守本社長インタビュー
『究極のビジネスインテリジェンスを追求する』

証券市場では今日の新興市場不振を招く原因となったと言われているライブドア事件であるが、この事件の捜査では100台以上のパソコンが押収され10万通にもおよぶ電子メールが調査されたそうだ。

パソコンの急速な普及により、以前は実物(紙)として保管されていたものが、パソコンのハードディスクに保管されるようになった。

私の自宅にはノートパソコンが3台あるが、そのうちの2台はいまやほとんど使うことがなくなった。だが、その2台のパソコンを捨てるわけにはいかない事情がある。過去のメール、デジカメで撮った写真、年賀状の宛先など、紙に印刷したら途方もない日常生活の記録がすべて蓄積されているからである。

日々の生活や仕事ではほとんど使わないデータでも後生大事にパソコンに保管している人が多いのではないだろうか。

そんなデジタルデータが企業の不正があったときの捜査の大きな手がかりになる時代がやってきた。冒頭のライブドアのケースは国内で初めて社会的に認知されたデジタルデータ捜査であったが、このような事件を未然に防いだり、起こった後に会社を守ったりするための手段としてもデジタルデータを解析して開示することが重要な企業の課題となってきているのである。

本日はデジタルデータ解析のプロとして6月26日東証マザーズ市場にIPOしたUBICの守本社長にお話をお伺いした。

事業内容

UBICはコンピュータフォレンジックと呼ばれる分野の事業を行う会社。

「コンピュータフォレンジック」とは聞き慣れない言葉だが、フォレンジック(forensic)の直訳は「犯罪科学の・法廷における」という意味で、わかりやすく説明すると“ハイテク技術を用いた訴訟支援・ディスクロジャー支援”をビジネスとしている会社である。

主に、企業が訴訟を行ったり、不正や情報漏えい等の問題が発覚した際に、争点となる電子データの証拠保全から始まり、調査・分析・情報収集等を行う。そして最終的に、単なる電子データであったものを「証拠」として耐えうるデータに仕上げるという技術・ノウハウを持っている。

最近では、ライブドアの証券取引法違反事件や、国会に電子メールのコピーを持ち込んだ某議員の騒動など記憶に新しいが、IT社会の発展に伴い必要にならざるを得ない時流に乗った事業といえる。

当社のフォレンジックサービスの種類は2つに分けられる。

1つは「ディスカバリ(証拠開示)支援」で、日本企業が国際訴訟において、電子データで行う証拠開示を支援するサービスである。米国の民事訴訟法のIT化に伴う法改正のもと、特に海外に進出している企業は対応に迫られ、ニーズは急激に高まる傾向にあるという。主なクライアントは知的財産訴訟やPL訴訟に関わるような大企業及びそれらの企業の訴訟支援をしている外国法事務弁護士事務所などである。

もう1つのサービスが「コンピュータフォレンジック調査」で、不正や情報漏えいの調査において、クライアント企業から提供されたパソコン等の内部のデータを調査し、分析結果を報告するサービスである。人材の流動化もあって、組織内部の人間による情報持ち出しや横領行為の調査といった案件も多い。 クライアントは、社会的な責任が高く、情報漏えいや粉飾決算等の不祥事に対し速やかな説明責任を求められる上場企業がほとんど。直接依頼されるケースと、法律事務所などを通してのケースがあるという。

いずれのサービスも、グローバルな事業展開をしているトラディショナルな企業が顧客の中心である。

ビジネスモデルは、以上のフォレンジックサービスに加え、フォレンジックツール販売、フォレンジックトレーニングと主に3つの形態から成り立つ。2006年3月期は米国の製造会社との独占販売契約を背景としたツール販売が主力であった。その後もツール販売実績をゆるやかに伸ばしつつ、本来のフォレンジックサービスが軌道に乗り始め、主力サービスへと移行した。2007年3月期の販売実績では、フォレンジックサービスが66%を占めている。ツールの販売、それに伴うトレーニングの顧客は主に、警察や役所で民間はわずか。またフォレンジックサービスの料金体系は、保全し調査するデータの容量で価格が決まるが、1件当たりの単価はコンピュータフォレンジック調査で平均500万円、ディスカバリ支援で平均1,500万円程度となっている。顧客数は事業開始から延べで150社程度となっている。

コンピュータフォレンジックの市場は、訴訟の国・米国では、すでに2,000億円以上で、年率30%ベースで拡大している。日本でも顕在化していない部分も含め、その10分の1の200億〜300億の市場規模は存在すると考えられる。

そもそも電子データは、揮発性が高く意図的な改ざんや消去も容易である。また取り扱い方法を誤ると一瞬にして証拠を失う危険性もはらんでいる。少し前までは、証拠として取り扱われることが困難であったものが、当社のような高度な技術とノウハウによって、その正当性を証明し、「証拠化」することが可能となったわけだ。

ただし技術的な部分もさることながら、あくまでも“リーガル(法的な)ハイテクノロジー”の提供であり、リーガルリスクマネジメントというノウハウの蓄積あってこそ提供できるサービスである。単なるIT専門家というだけでは、当分野のプロにはなれない。

その意味において、コンピュータフォレンジックを請負える日本企業は当社を除いて他になく、外資の参入も、日本語の壁があるため容易ではない。

設立経緯

守本社長は、防衛大を卒業後、6年程海上自衛官であったという、企業家としては珍しい経歴を持つ。95年自衛官退官後は、大学で半導体関係を学んでいた経緯からアプライドマテリアルズジャパン(株)に入社。製品事業部でマネージャーを務めた。全て英語が基本だという護衛艦でのオペレーションを行っていた頃から、アプライド時代はもちろん、現在でも米国訴訟に関する会議など英語でプレゼンテーションを行う機会は多い。

商社の先輩の紹介でこのビジネスに出会った頃、日本人は技術的に欧米人に負けていないのに、当分野に無知であったがゆえに、泣き寝入りしたり、不利になったり、という現状をみたという。日本の長所を海外にアピールしたい、対等にやっていきたい、という思いは、アプライドの頃から明確になっていた。予てから起業したいという思いも手伝って、8年の勤務の後、03年日本での販売代理店を欲しがっていたという米国のフォレンジックツールのメーカーと独占販売権を取得し、起業に至る。

今後について

当分野のパイオニアである当社にとって、日本の民間を啓蒙していく使命を果たしたい。事業としては、将来的に市場規模の9割シェアをとりたいという。5年後には100億円以上のマーケットが顕在化しているだろうと考えると、売上が100億に近づく可能性も高そうだ。営業利益率は最低でも3割を確保し、目標としては4割を考えている。株主還元に関しては配当をできるだけ早い時期に実現したいが、人員の増強に伴うインフラ整備に資金を投下したいのでしばらくは内部留保に努めたい。

業績の推移(百万円)

決算期
売上高
経常利益
当期利益
純資産
2005/3
7
-43
-42
56
2006/3
190
-59
-59
83
2007/3
481
144
132
275
2008/3(予想)
824
232
139
-

(注)2008年3月期の数字は会社発表業績予想


■西堀編集長の視点

パソコンにいったんアーカイブしたデータはデスクトップにある「ごみ箱」に捨てて「空にする」ボタンを押してもハードディスクから完全に消失されたわけではない。またハードディスクをフォーマットしてもデータが復元できる技術があるらしい。これでは素人の私などがいくらデータを削除してもパソコンそのものを破壊しない限りはデータを抹消することはできないということである。このようにハイテク技術が会社のパソコンにあるデータはすべて復元してしまうことを組織の中で働く我々は強く認識しておかねばならない時代になってきた。

このような環境の中で、2006年12月に米国ではFederal Rules of Civil Procedure(連邦民事訴訟規則)のE-discovery条項修正があって、電子情報開示のニーズが急速に立ち上がってきているそうだ。UBICでは米国にて事業を展開する日本企業のニーズの急増により、米国での民事訴訟案件に絡む売上が前期の数ヶ月間で1億円強(売上の22%)まで急成長している。この分野は垂直的に立ち上がっていくのではないかと推測される。

米国にはこの分野で大きなシェアを保有する企業が存在するが、日本においては当社がデファクト的な存在で競合が見当たらなく少なくとも5年間のアドバンテッジがあると守本社長はみている。 特に日本企業のデータが日本語だということで、日本企業から仕事を請けた米国企業ですらUBICに支援を求めてくることがあるらしい。

日本人のメンタリティとして外国企業にこの分野の調査を依頼することは過去においてはかなり抵抗があったと思われるが、今後はUBICが日本企業の海外における訴訟にも立ちはだかってくれると思うとかなりそれだけでも安心できるというものである。

人生の一時を日本の国防に携わった守本社長であるが、これからは日本の民間企業が海外で事業展開するときのリーガル面での守り神として活躍されることも期待したい。


 企業DATA    株式会社UBIC
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