株主優待も色々ありますが最近Quoカードの利用が増えているそうです。また優待以外でも株主総会や個人投資家説明会のお土産としても利用されるケースが増えているようです。
世間ではICカード、そして電子マネーが普及する中で磁気プリペイドカードは消えつつありますが、上場会社の個人株主対策という需要があったようです。
株主向けには依然として招集通知や決議通知を郵便で送る必要がありますので、そこに同封することでカード代以外のコストはかかりません。また総会や個人投資家説明会を重視する企業が増えている中で、不特定多数の人に気軽に提供できるお土産という性格があります。また配当重視の傾向の中で、配当ではないけれど極めて現金配当に近い性格も受けているのでしょう。さらにカード券面に企業メッセージを加えた印刷も可能ですし、最近ではCSRを意識して利用に応じた寄付などの仕組を組み合わせた例もあるそうです。
先日、Quoカードを利用している会社の数を拾ったデータを入手しました。それによると株主優待として利用しているのは68社。総会のお土産としているのは34社。そして・・・・議決権行使をした株主にお礼として提供している会社が8社ありました(これらは優待ハンドブックや各社のHPから拾ったデータを元にしており、100%正確ではないことをご了承ください)。
今年はモリテックスの委任状争奪戦で、会社側が議決権行使した株主にQuoカードを送付したことが話題になりました。これが初のケースと思いきや、他にも7社実施している先があったのです。実施企業はJFEホールディングス、大東紡績、トライアイズ(旧ドリームテクノロジーズ)、大盛工業、イチヤ、トランスジェニック、アストマックス。JFEを除くと小型・新興企業が多く、資本政策で世間を賑わせた企業が幾つか含まれています。モリテックスの件では、争奪戦で敗れたIDECから議決権行使へのお礼の提供はおかしいのでは、という批判もありました。
Quoカードの発行元の(株)Quoカードさんに問い合わせしてみましたが、株主優待用としては積極的に営業しているものの、「議決権行使のお礼として」という用途の提案はしていないそうです。ふむふむ。委任状争奪戦の最中での提供はさすがに異常ですが、それ以外の企業は総会の成立のために必死で考える中で、こうした対応をしたものと思います。
こうした取組に対しては、株主平等の観点に立てば、優待制度自体が個人株主を優遇する不公平なものと機関投資家等からの批判もあります。個人でもお米券を貰っても「俺は米を食わねえ!」という人もいるし、それに1kg分のお米券って使いづらい・・・
しかし一方で、長期保有の株主を優遇する配当政策を導入したDOWAホールディングスのようにより積極的に株主を差別する政策を導入する会社も出てきています。
*DOWAホールディングスのリリースより:平成18年9月30日現在の株主に対して保有株の0.05%分の株式を1株1円で購入できる新株予約権を付与。行使条件は平成21年9月30日までの3年間保有すること。*DOWAホールディングスのリリースより:平成18年9月30日現在の株主に対して保有株の0.05%分の株式を1株1円で購入できる新株予約権を付与。行使条件は平成21年9月30日までの3年間保有すること。
新株予約権の発行まで行くと大変なので、もう少し簡単に、ということで優待のQuoカードを利用して長期保有者を優遇する制度を採用しているリコーリースのような例もあります。
*リコーリースのリリースより:優待でQuoカードなどのプリペイドカードを提供。100株につき、保有期間1年未満の場合3千円、1年以上は4千円、3年以上は5千円を提供。
またリコーリースではこれに、CSRの観点を加えて「株主参加型社会貢献活動」なるものを実施しています。株主優待として提供するカードの利用に応じて、会社負担で国土緑化推進機構の運営する「緑の募金」への寄付する仕組としています。
このように様々な株主を差別する取組があるわけですが、導入している会社がちょっとやそっと批判されても揺るがない、強い意思を持ってやっているならば、あとは投資家側が自己判断で企業を選別していけば良いことかもしれません。
DOWAホールディングスHP
http://www.dowa.co.jp/
長期株主優待制度についてのリリース
http://www.dowa.co.jp/jp/ir/pdf/news2006/release060830_jyoken.pdf
リコーリースHP http://www.r-lease.co.jp/ir/yutai.html
QuoカードHP http://www.quocard.com/
コーヒーブレークのブログ書いています。 http://ameblo.jp/mplstwins/
株式会社フィナンテック IRコンサルタント 深井浩史
(CFA協会認定証券アナリスト)
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