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2007. 8 15 No.524



『絶対水準のない為替レート』 

 

本日の株式市場は日経平均株価が▲369円と底なし沼状態が続いている。

今回の大幅調整の原点は米国のサブプライムローンであることは間違いない。

本日のブログにも書いたが、日米欧の金融当局が今回のサブプライム問題の火消しに躍起になっている状況である。

ここ4週間くらいの株価の下落は負の連鎖がどんどん広がり、その連鎖の果てが見えないがために市場参加者が物事をすべてネガティブに見るという疑心暗鬼状態であると考えられる。

この泥沼から抜け出すには、もう少し強烈な金融当局のメッセージが必要かもしれない。

来週予定されている日銀金融政策決定会合で「利上げ」見送り、そして欧米の金融当局が流動性の供給のみに留まらずに、「利下げ」に動けば、そこで完全底入れとなるのではないだろうか。

さて、今日はいつもの株式市場のお話から話題を変えて為替に触れてみたい。

泥沼からの脱却には、
「日本の利上げ見送り」
「欧米の利下げ実施」
と書いたが、もし現実のものとなれば為替はどのように動くのだろうか?

日本の円と欧米の通貨には金利差があるが、その金利差が縮小するということは円を売ってドルやユーロを買う動きにブレーキがかかると考えるのはごく当たり前の考え方である。

すでに金融当局の今後の動きを織り込むように為替はドル・ユーロに対して7月中旬から円が強含みで推移している。 

そして円ドルレートは東京市場で116円台に突入してしまった。 

また円ユーロレートは200日移動平均線の159.35円の水準をあっさりと割り込み157円台となってしまった。

為替証拠金取引をされている方々のロングポジションのストップロスオーダーがバシバシ入って円高が加速したのではないだろうか。

さてこの為替であるが、どの水準まで行けば円高は止まるのだろうか?

これは非常に難題である。 

株価の場合は、益利回りや配当利回りと金利水準との比較で裁定が働き株価が下げ止まる水準をある程度読むことができる。

日本株で説明すれば、日経平均株価の益利回りは、本日の終値から計算した予想利益ベースPER17.5倍の逆数の5.7%となる。

一方、日本の10年物国債の利回りは1.635%。

その差は、おおよそ4%である。

この4%のスプレッドであるが、昨年の6月に日経平均株価が底値を付けたときと同じ水準まで広がっている。

日銀の利上げ見送りとなれば長期金利の大きな反転上昇は見込みにくく、株価は底打ち反転すると考えてもいいだろう。

では、為替のほうはどうだろうか。 株価のように絶対的なレート水準を計測することは困難だ。

裏を返せば、需給だけで動いているといえる。 その需給の源泉となるのが、金利差であることは言うまでもない。 

ある程度の金利差があれば低い金利の通貨から高い金利の通貨に投資するインセンティブはなくならないはずだ。

なぜなら為替レートがどの水準であろうとも、金利差分は受取りとなるからである。

為替証拠金取引の世界で言えば、円ドルレートが125円から115円まで10円の円高になったからと言って、スワップポイントがなくなることはない。

つまりたとえ日本が利上げ先延ばし、欧米が金利下げ、を決定したとしても金利差はそのまま存続し続けるため円で欧米通過を買うメリットはなくならないということである。

また相場を張っている投資家の需給に加えて、実需の部分を考えると事業会社などは年間の想定為替レートを持っておりある水準を越えてまで円買いを推し進めるような愚かなことはしないはずである。

従って、為替は絶対水準を決める要因はないものの、投資家の反対売買目的の需給が収束すれば、更なる円高になるような理由は見つからないということである。

とは言え、円安が日本国にとって良いことであるかどうかは別問題であることも良く考えてみる必要がある。

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com