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2007. 8 30 No.528



『プロでさえ難しい新興市場株投資で勝つには 』 

 

投資のプロだと考えていた人たちの投資行動を垣間見てみると驚きの事実を発見してしまった。

東京IPOのサイトで提供している開示速報サービスに新しいサービスを追加すべく社内で打ち合わせ中に大量保有報告書と株価の相関関係を調べることになった。

スタッフの1人が米系の投資信託運用会社がファイルした大量保有報告書を追った。

まず大量保有報告書について説明しておこう。

大量保有報告書(たいりょうほゆうほうこくしょ)とは、上場企業の発行済株式数に対する株式の保有割合が5%を超えている場合に(5%ちょうどは含まない)、大量保有開示制度に基づいて財務局に提出する書類のことである。

また発行済株式数に占める保有割合が1%変動した場合、またはその株を担保に差し入れるなどの事由が発生した場合は、その都度変更報告書を提出しなければならない。 

この大量保有報告書の提出を時系列で追いかけることの意味するところは、投資信託やファンドなどが特定の株式を発行済株式数の5%を越して買い増していく過程や保有を減らしていく過程が如実にわかるということだ。

某米系投資信託運用会社が提出した大量保有報告書を2005年からファイルされた順に追っていくと中小型株において非常に興味深い事実を発見してしまった。

5%超を保有した後に最初の大量保有報告書が提出されるが、ほとんどのケースにおいて、その後半年間程度で10〜15パーセントになるまで保有比率が上がっていることが報告書から読みとれる。

仕込みが終わると次はイグジットのタイミングを探ることになるのだが、結果を見ると愕然とする事実がそこにはあった。

株価チャート上で大量保有報告書が提出された日付の上に保有比率をプロットすると、保有比率が一番高くなった日付以降の株価は右肩下がりのトレンドラインとなっている。

このことの意味するところは、某投資信託運用会社は自らの買いで株価を押し上げ、自らの売りで株価を下げているということになる。

たぶんロスカットルールがあると思われるが、平均取得株価をある程度下回ると、いきなり保有比率が下がる大量保有報告書が提出されている。

大量保有報告書で確認される保有比率の増減と株価の動きを見てわかったことは、

@最初に大量保有報告書が提出されてしばらくはそのファンドの買いで上昇する
A保有比率が10%を超えたあたりでいったん株価は上昇が止まる
Bその後の買いは押し目を拾う形で保有比率を上げていく
C12〜14%近くまで保有比率が上がると株価の動きは下降トレンドに変わる
D大量保有報告書が最初に提出された時点の株価を2〜3割下回ってくるとロスカットの売りで株価は急速に下げ足を早める
E保有比率が5%を下回り最後の大量保有報告書が提出される

こんな感じで株価は動いていくのである。

当社のスタッフが追いかけた中小型株の保有増減を見る限りにおいては、取得価格を上回る株価水準でイグジットしているケースはほとんどなかった。

今回はあえて、銘柄と運用会社名は伏せておくが、プロ中のプロでも新興市場株での運用は非常に難しいということが良くわかった。

我々個人投資家は自らの資金で特定の銘柄の株価を動かすほどの資金は持ち合わせていないが、大量保有報告書により機関投資家が株価を動かしている銘柄を知ることは可能である。

特定の機関投資家の売買の習性を掴めば、トレンドフォロー、逆張りなどでパフォーマンスを高めることが出来そうである。

しかしながら、これには根気がそうとう必要であることは間違いない・・・

 

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com