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2007. 9.18 No.533



『 外国人投資家の動向と今後の見方 』 

 

年末にかけての日本株式市場の動向について、9月13日(木)に丸ビルにてジャパン・インベストのIR会社説明会を開催した後のパネルディスカッションでジャパン・インベストの島崎亮平氏とマイクロ・キャピタリスト、ラジオ日経「株式チャンネル」パーソナリティの松島弘典氏にお話をお伺いしたので要約してご紹介しておきたい。 

[島崎]

安倍総理の辞任については、APEC以前の8月上旬から安倍内閣な長くもたないと外国人投資家はみていた。今年の11月から来年1月には退陣と考えていたので驚きは無かった。

小泉政権以降は首相が誰であろうと人柄とか統率力は株式市場には影響してこないというのが外国人投資家の見方。

内閣府のHPに載っている「経済財政改革の基本方針2007年、美しい国へのシナリオ」に書かれている経済財政改革がどうなるのか?これが外国人投資家にとって一番気になるところである。

外国人投資家の動向を見ると売買金額は昨年の10%増で推移している。 しかしながら今年の春先には日本株を売却してアジア株にスイッチする動きが起こり日本株ファンドの解約があったがその動きは夏前に終わっていると認識している。

では、8月に入って急速に外国人の売りが出たのは何か?ということであるが、それは次のような背景が考えられる。

1.日本の経済は良いのか?という疑問を持ちはじめている。
  金利もいつ上がるかからいつ下がるのか?になってきた。
  GDPも下方修正になるかもしれない。そこを見極める。

2.誰が首相になっても変わらないが、スピード感が問題。
  経済財政改革でターボエンジンが当面は外れてスローダウンする。

第3四半期のGDPが開示されて、改革のターボエンジンが入れば外国人投資家が戻ってくる可能性は高いと考える。

その意味では、サブプライム問題だけではなくて、国内事情で足踏みしているのではないか?

先週の米国の雇用統計がマイナスとなったが、誰も予想していなかった。米国は18日のFOMC待ちになっているので二番底は18日まで待ったほうがいいだろう。

9月末から年末にかけての動向であるが、外国人投資家のヘッジファンド・投信の売りは例年以上は見込んでいない。

日本の株式市場に影響するとしたら、為替、原油、米国金利で市場のセンチメントが動くと考えている。

外国人が買ってきた不動産を年内のどこかで売りにでると日本経済に影響が出て、実需の日本株の売りがでるかもしれないと考える。

[松島]

先週の水曜日に安倍首相辞任で株価は一瞬上がったがその後に下げた。これは先が見えないことが不安になったのではないか。

外国人の動向を見ると、5、6、7月と8月の売り金額以上に買っていた。その意味では日本株を完全に投げにいったわけではない。

市場を取り巻く環境というよりも、前提がサブプライム問題の前後で変わってきたことを認識しておく必要がある。

サブプライ問題顕在前の前提
・石油価格
・インフレ懸念
・BRICs拡大
・企業業績好調
・M&A、自社株買い
・利上げ
・円安、ユーロ高

サブプライム問題顕在化後の前提
・石油価格
・インフレ懸念
・米民主党 保護主義
・景気減速
・質への逃避
・利下げ
・円高

インフレ懸念があるのに利下げをしなければいけない米国にはジレンマがある。
もしインフレになるとすれば、インフレの初期に強いセクターもみておくべき。 


・電気・ガス ← 原発関連
・空運 ← 防災関連
・精密 ← 業績良い
・不動産 ← 日本人とっては面白い

[島崎]

年末に向けての戦略であるが、東証2部上場銘柄の配当利回りが1.7%と国債の利回りよりも高い。
企業業績は安定しており割安だと考えている。 このセクターはいずれ買われるはず。

この配当をとっていくのは個人投資家と国内の機関投資家しかいないと考える。そのように見ていくと
日本の機関投資家は小型株の運用が始まりそうだ。

とは言え、不動産(リート)の市況が腰折れにならないことが日本の経済にとって重要だとも考えている。 

中小型株と不動産の投資のどちらが有効かと聞かれたら、中小型株と不動産は両方とも上がると考えている。

[西堀編集長の後日コメント]

パネルディスカッションの後に一人の個人投資家から島崎氏に質問があった。 
「日本株のバリュエーションはPER17倍程度であるが将来は欧米の15倍程度まで下がるのか?」
島崎氏は「日本はアジアの一部でアジアの成長を享受できると外国人は考えているので、欧米のPERよりもプレミアムがついていても説明できると考える」と答えていた。

成長か安定か? 

大型株に成長という言葉は当てはまらないかもしれないが、新興国とりわけアジア諸国の成長が続く限りにおいては、その成長を享受できる銘柄は引き続き押し目買いだろう。

逆に安定という言葉は、小型株に似つかわしくないが、安定配当というインセンティブはいずれ魅力になるはずである。少し時間はかかるかもしれないが、来年の3月に向けてどこかで動き出しそうだ。

新興市場株については、個人投資家の参加で成り立っているような市場であることを考えると、更なる資金投入は厳しいと考えられる。ここに買手が現れるとしたら、外国人投資家のヘッジファンド系しかありえない。 5月〜6月にかけて逃避した資金がそろそろ戻ってきているという噂も聞こえてきている。このセクターはやはり内需をベースにした成長が期待できる企業が買われるのではないだろうか。経常利益が30%成長でもPER10倍そこそこの企業がごろごろしている。 そろそろ見極めの時期かもしれない。

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com