TOPページへ
開示速報へ
2008. 1. 9 No.565



『行過ぎた悲観の中で生まれるもの』 

 

昨日の米国株式市場は再びサブプライムローン問題を嫌気して大きく下げることになった。

世界中の株式市場を俯瞰すると昨年8月中旬のサブプライムショック時点の株価を割り込んで大きく調整しているのは米国と日本だけである。

米国は内なる原因を抱えておりやむを得ないであろう。

金融機関がサブプライム関連の資産の損失を確定し、それにともなう自己資本の毀損をカバーする増資が終わったとしても、住宅ローンを抱える個人のバランスシート調整はそう簡単に終わることは期待できない。

そうするとGDPの三分の二を占める個人消費は減速することはすでに見えており、資源高による物価上昇が追い討ちを掛けるとなれば経済用語でいうところのスタグフレーションが起こることになる。

特に個人消費に直結する個人のバランスシート調整には5年以上の時間が必要だとの調査機関のデータもあり、株価の動きだけを見ていると、投資家は米国の株式市場は長期にわたる調整の始まりだと見ているようである。

世の中には米国は景気後退に陥らないとする意見もあるが、ここ数年の経済成長率が大幅に減速することは間違いなく大変厳しい状況になることだろう。

さて、予てより「米国がくしゃみをすると日本は風邪を引く」とまで言われてきた。

その米国が景気後退となれば、日本は大きな痛手を受ける一番手ということになる。しかしながら、日本の輸出の相手国としての米国の位置付けはかなり大きく変化してきており、米国のくしゃみが微熱くらいは引き起こしても風邪まで至ることはないはずである。

ところが日本の輸出の大きな相手国である中国と始めとする米国以外の国々まで米国の影響が伝播することになり皆が微熱を出し始めたら大変なことになるとの懸念もある。

だが一方では新興国経済は米国経済とは切り離して考えるべきであるというデカップリング論もある。とりあえず新興国経済は悪化の兆しが見えないので、株価はまだ影響を受けていないというのが正直なところだろう。

なにの今、日本の株式市場が過敏に反応しすぎているのはなぜだろうか。

株価そのものを見れば、国債利回りと東証上場株の配当利回りの逆転やPBR1倍割れ銘柄の増加など日本株の下値をサポートする材料は日々増えている。

昨年の日本株の下げはアジアという地域内での資金移動、つまり中国も含めたアジアの中でのポジション配分の見直しが行われた結果であったと考えられる。

とすれば、現在はドル資産に配分された資金の見直しが行われており、ドル売りが為替変動を起こして円高を招き日本企業への負の連鎖を引き起こしていると考えられる。

過去を振り返れば1980年台の後半もそうであった。プラザ合意で急速な円高だが進み、日本の輸出関連企業は大赤字を計上することになるが、株価のほうは企業収益の悪化にもかかわらず高値を更新したのである。

今回のドル安は政府主導ではないが、円高を引き起こすには十分な条件がそろっている。

日本株は歴史的な割安水準にあり、外国人投資家にしてみれば、今後の円高は株価の上昇に加えて自国通貨換算では為替益も見込めるという非常に美味しい話である。

我々日本が風邪を引かない限りにおいて、日本株はバリュー株になってしまっているといえるのではないだろうか。

昨年は皆さんの資金が外貨建の債券や新興国株ファンドに流れていったと思われるが、この円高を機に少しポジションの見直しをしてみてはどうだろうか。 

すべてを切り替える必要はないと思うが、資金配分は見直すタイミングであろう。

相場の格言で「強気相場は悲観の中に生まれ懐疑の中で育ち楽観の中で成熟し幸福感の中で消えていく」というものがある。

現状は行過ぎた悲観が市場を覆っていることだけは間違いない事実であろう。

 

 

(c) 1999-2008 Tokyo IPO. All rights Reserved.

東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com