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株式会社トレジャー・ファクトリー
(東証マザーズ・3093)
野坂社長インタビュー
『環境問題にも役立つリサイクルビジネス』

毎年年末になると我が家では大掃除とともに自宅にある不要なものの処分が行われる。私の所持品で毎年その対象になるものに書籍がある。いかほどの金額にもならないがそのほとんどはブックオフ行きである。その他にも衣類や時には家具・家電用品もある。いつのまにか捨てるだけでもお金がかかるようになり、物によって市の定めた金額のシールを買って貼っておかないと回収業者が持っていってくれない時代になってしまった。

あるとき長年使ったライティングデスクを買い換えることにした。家具屋さんが持って帰ってくれると期待していたのだが、期待に反して古い机はそのままになり、回収業者に頼むとお金も時間もかかる状態となった。そのときふと思いついてリサイクルショップに電話をしたのが、私とリサイクルとの出会いであり、なんとその古いデスクは回収費がかかるどころか、現金に換わったのには驚いた。

2007年の年末に総合リサイクルショップを運営するトレジャー・ファクトリーがIPOすることになり、このリサイクルショップのビジネスモデルはどうなっているのだろう?と興味を持った。今回は足立区にある本社を訪問して野坂社長にお話をお伺いした。

事業内容

当社は、首都圏を中心にリサイクルショップを運営する会社。

現在24店舗の総合リサイクルショップと、2店舗の服飾専門リサイクルショップを首都圏の1都3県で展開する。他の地域としては福島県にFCが2店ある。

一般的にチェーン店化されているリサイクルショップというと、本・宝石・パソコンなど、取扱商品が限られた専門店がほとんどだが、当社の運営するショップは家電や生活雑貨、家具、衣料品、スポーツ用品など実に幅広い分野の品物を売買している。店舗は郊外のロードサイドが多く、平均200坪程度でほとんどに駐車場が完備している。

リサイクル品のため基本的には“1点もの”である商品を、大型店では約3万アイテム取り扱う。このような多くの商品データを管理徹底するため、独自のPOSシステム(販売時点管理システム)を構築し、在庫情報を全てコンピュータ化した。このシステムの導入により、当社WEBサイト( http://www.treasure-f.com/ )を通じてインターネットでのリサイクル品の販売も可能となっている。

商品単価は100円〜10万円の価格帯で1店舗の年商は1億〜2億円程度となっている。また利益構造は現在粗利率が64%となっている。リサイクルショップでの売価は製造原価にマージンを乗せるのではなくて、買い取り値段に粗利を加えた額となる。その値段はPOSデータに蓄積された過去の売買データが買取り査定の場で利用されている。

これまでリサイクルショップの買取り価格というと、店主による俗人的な査定というイメージがあったが、当社では、過去売買データや現在の新品価格を軸とした、信頼性の高い適正価格での売買が行われている。リサイクルショップの運営はプライシングが全て、といっても過言ではない。いくらで買い取って、いくらで店頭に並べるか、1点ものの商品を査定していくのが難しく、商売の要となっている。

在庫の回転率も年に8回転と予想以上に高い。いつまでも店頭に置かれたままの品物が無いように、年に2回は売れ残りの商品をプライスダウンしている。また、一般顧客からの買取りだけでなく、4割は法人から中古品や新古品を仕入れ、店頭の品揃えや鮮度を保っている。

こうして陳列商品の質を高める工夫は、次に持ち込まれる品物の質の向上につながるという。置かれている品物が上質なものであれば、一般顧客が売りにくる品物のレベルも高くなる。つまり店頭に持ち込まれる商品は、店頭の陳列商品に左右されるのである。ただ売りに来るのを待っている、というだけでなく実は店に“仕掛け”が施されており、売れる物を買取る、という好循環が回るようになるのだ。

有限会社として当社を立ち上げてから13年目だが、最近では「こんなに新しいものが不用品なのか」と驚くほど、1〜2年で持ち物をリサイクルに出す人が増えた。リサイクルという概念が市民権を得て自分の持ち物をリサイクルの対象として見られるようになった事も理由のひとつだが、消費者にとって旬なものは次々と新商品が発売されるため、回転が加速しているという。TVの買い替えなど最たる例で、時代をよく反映している。

専門リサイクル店は他社も多いが、当社のような総合店にとっては町場のリサイクル店が競合。物がどんどん増えてリサイクル品も変化していく時代に、俗人的なプライシングから離れ、大きなスペースに多種多様な品揃えを展開していくことで顧客を掴んでいる。

また近年ではネットオークションの普及がリサイクル市場への追い風となった。中古品の売買が益々身近なものとなり、ネットオークションへの出品に手間を割くことができない顧客にとっては、当社のようなリアルな店舗のニーズは高まるばかりである。


設立経緯

野坂社長は2歳から10歳まで、商社勤務の父親のもとシンガポールで過ごした。仕事人間だった父の背中を見ながら多民族国家で様々な文化に触れた幼少時代の経験から、自らの未来を描き始めた頃には、将来は絶対社長になりたいと考えていたという。父を越えたいという気概と、幼いときの珍しい体験を活かしたいという思いが最初のきっかけだ。

大学4年生の夏、リサイクルショップでの起業を決意。日経新聞に「倉庫を活用したビジネス支援」の記事を見つけたところから、すぐに事業計画書を持参した。まだインターネットもなかった時代、あらゆる物の適正価格を足で回って知るところからのスタートだった。

当時、リサイクル店は知る人ぞ知る店というレベル。48件のリサイクル店を回って実地調査したが、一般的な顧客のニーズに応えられている店は皆無だった。持ち前の行動力で、在学中に単身ロサンゼルスまで行き日本より進んだ米国の大型リサイクル店を見学し、規模や陳列方法も学んだ。倉庫を活用したビジネス募集の記事にあった倉庫賃貸事業の会社の空き物件を新築で使用できることとなり、第1号店(足立本店)を1995年にオープンさせた。


今後について

経済産業省の商業統計によれば、現在の推定市場規模は5,000億円、年率10%弱で成長しているそうだ。成長背景は、環境問題とエコ化に伴った政策や法律の変化、そして個人の認識とライフスタイルの変化だ。マーケットに鑑みても、関東だけで約100店、全国でも300店くらいは出展の余地がある。今期は5店の出店なので、来期以降はそれ以上を予定。出店コストは4〜5千万円。既存店舗の採算を保てるよう出店規模を見計らいつつペースを上げていきたい。ゆくゆくは海外も視野にある。国内では活かしきれない古い物や、一部壊れた製品なども、海外では利用されるケースがあるのだ。

株主還元は、来期以降なるべく早いタイミングで配当を出せるようにしていきたい。マザーズを選んだのも、早く次のステージへ進むため。店舗を積み上げていくのはもちろん、リサイクルの周辺ビジネスにも目を向けながら早期に売上げ100億を達成し、上を目指す。

業績の推移(百万円)

決算期
売上高
経常利益
当期利益
純資産
2006/2
2,111
81
45
238
2007/2
2,739
158
88
343
2008/2(予想)
3,330
211
116
-

(注)2008年2月期の数字は会社発表業績予想


■西堀編集長の視点

戦後の日本において我々は大量生産・大量消費という価値観の中で育ってきたが、そろそろその価値観を変えるときがきたようである。資源高や新興国の急速な近代化の影響もあって時代はデフレ社会からインフレ社会へと大きく舵が切られようとしている。そのような中で耐久消費財の最たるものとして住宅などは数十年ではなくて100年は住める造りにしようと努力されている。なかなか100年というと気の遠くなるような話であるが、私がかつて駐在したことのあるスイスにおいては、数百年前の建物が外観を変えずに中だけリフォームして住み続けられている。古き良きものを使い続ける文化がヨーロッパにはあるようだ。そしてその住宅の中にある家具なども古いものほど価値があり、リサイクルショップならぬ骨董品店が数多くチューリッヒの街中に存在したことを記憶している。

また私の生まれた滋賀県では「もったいない」というキャッチフレーズで当選した県知事がいる。ちょっと使われた意味合いが異なるが、無駄なものを作ったり、まだまだ使えるものを捨ててしまったりする文化は限界に来たといえるのではないだろうか。

モノ作りには一日の長がある日本であるが、作ることに加えてその製品をいかに長く使うかについても長けている国民にもなって欲しいのである。日本は京都議定書でCO2の排出についてリードしなければならない国であるはずだが、国民の意識はまだまだ旧態依然としている。ここのところ地球温暖化を食い止めるために地球環境を如何に改善させるのかという大きなテーマがグローバルに取り上げられるようになってきた。

本文にもあるようにリサイクルの市場は今や5,000億円まで成長してきたが、「もったいない=環境維持」という視点で国民意識の改革が進めば進むほど耐久消費財の再利用が促進され当社のビジネスにもフォローウィンドとなりそうだ。

 企業DATA    株式会社トレジャー・ファクトリー
□証券コード 3093・マザ株価情報へ
□ホームページ http://www.treasure-f.com/
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