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2008. 3. 10 No.581



『 日本を元気にするには(その1) 』 

 

週末に出かけるといつも書店に立ち寄ることにしている。

いつも吸い寄せられるように投資本のコーナーに足が向いてしまう。

ここのところ○○百万円を○億円にした!という株式投資成功体験談をベースにした本は姿を消してしまった。

年初までは株式に代わって為替証拠金取引に関する書籍が目立ったがそれもここのところ肩身の狭い思いをするかのように数冊置かれているだけだ。

それだけ為替や株式などで短期にお金儲けをすることが難しくなってきたということではないだろうか。

その代わりにウォーレン・バフェットの投資などみる長期投資で巨富を築いた人の本が置かれるようになってきた。

ウォーレン・バフェットと言えば、先般、アメリカ・フォーブス誌(Forbes)が発表した「The World's Billionaires(世界の億万長者)」で一番になった人物である。そのバフェットの職業は「投資家」と書かれている。保有する資産は日本円換算で6兆2000億円である。一代でこれだけ巨額の富を築き上げたとはただただ心服のかぎりである。

さて、書籍に話は戻るが、投資本の近くに日本の富裕層に関する書籍がちらほら目につくようになった。 

土曜日の日経新聞にも富裕層に関する書籍の広告が出ていたのでさっそく買って読んでみることにした。

金融資産(借金や土地を除いた純金融資産)を1億円以上保有する人を富裕層と定義すると、日本には147万人の富裕層がいるそうだ。世帯数にすると86万世帯もあって58世帯に1世帯の割合となる。いったいどこにそんなに富裕層がいるのだろうか?と考え込んでしまう。

ところ変わって米国では資産100万ドル以上の世帯数が950万世帯あるらしい。人口は日本の2倍強なのに富裕層は10倍いることになる。日本よりも富裕層比率が高い。

再びフォーブス誌の世界の億万長者であるが、1番はバフェット氏、2番はスリム氏(メキシコの電話会社経営者)、3番はビル・ゲイツ氏と並んでいる。上位25人の国別内訳を見ると、ロシア7人、アメリカ4人、インド4人、ドイツ、香港、フランスが各2人、メキシコ、サウジアラビア、スウェーデン、スペインが各1人。

日本人は124位にやっと森トラストの森章氏が登場する。その資産は7,500億円と1位のバフェット氏の8分の1しかない。また日本人はフォーブス誌が選んだ1,125人の内でたったの24人しかいない。その24人の資産を合計しても6兆6000億円とバフェット氏1人分の資産とほぼ同額である。

日本と言う国は出る杭が打たれる国であり、私が金持ちです、と名乗ることには抵抗がある国民性である。その為かどうかはわからないが確定申告による高額納税者の発表も数年前に廃止されてしまった。

日本において世の中は格差、格差とうるさいくらいに叫ばれている。そのお陰で株式投資のキャピタルゲイン税の軽減措置ですら金持ち優遇と揶揄されてしまう始末であり、お金持ちを作らせない仕組みがどんどん強化されていくような気がしてならない。

ここで重要なことは、お金持ちを優遇することと、お金持ちになるプロセスを厳しくすることはまったく異なることである。 

世界のお金持ち上位25人、日本のお金持ち24人をじっくりと観察すると、そのほとんどが1代で財を築き上げた人がほとんどである。

たぶん金融資産には自らの創業した企業の株式を時価で評価した金額がかなり含まれていることと推測する。

この保有株の評価、つまり株価は企業の稼ぎ出す利益によって決まる。もう少し噛み砕いて言えば、稼いだ利益から税金を引いた額によって株価は決まると言えよう。

もし日本の法人税率が他の国々よりも高いとするならば、同じように利益を稼いでも株価はその分だけ低く評価されることになる。

また税引き後の利益を再投資して同じだけ利益を上げるとするならば、法人税率が低い国の企業のほうが10年、20年後に日本企業よりも多く利益を出すことは必定であり、株価の市場での評価は乗数的な差が出てしまうことなるだろう。

その結果、日本のお金持ちと世界のお金持ちには大きな較差が生まれてしまうのである。

今の日本には全国民レベルでの格差解消も必要かもしれないが、実業の世界において日本の経営者が成功の果実をグローバルなスタンダードで受け取れる仕組み作りの構築も必要ではないだろうか。

それは国民の誰しもがお金持ちになれると信じて努力をしたくなる社会を作ることにも繋がるはずである。

(続く・・・)

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com